明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

恋心 後編

「失礼致します」
挨拶をして、部屋に入る。目の前には、やけににこやかな医院長。

「おぉー牧野先生。これはこれはお疲れさまです。さぁさぁどうぞ」
なんて言われながら、ロゼッタのチョコレートケーキが目の前に置かれる。

「さぁさぁ、どうぞどうぞ」

ロゼッタのチョコレートケーキなら‥チョコ棒にとって変わっても遜色がない。 
ぐふふっなんて思いながら、挨拶もそこそこにフォークに手を伸ばす。

《ではでは、頂きまーす》 
パクッ。うぅぅっ旨い。
旨いっすぅーー 口の中をチョコが広がる。

「なんなら、他にもありますので」

「あっ、はい」
世の中、いい話には裏がある。これ常だ。

当たり障りのない会話がされる。離島での事、今の仕事場で不満はないかなど‥‥
世間話の為にあたし呼ばれたのかしら?うーん医院長暇>なんて思ったら‥‥

「して、牧野先生には決まった人がいるんですかね?」
うぐっ‥‥口にしていたケーキが喉につまりそうになって、「はぁぁ?」なんとも情けない声が出た。

あははっ‥‥決まったどころか、デートする相手さえままなりませんよ。あははっ

「い、い、いませんが‥」

「ほぉーそうですか。そうですか」
なんて、嬉し気に笑ったあとに

「今晩の会食のお供‥‥牧野君宜しく頼みますよ」
会食のお供? っん?あたし今日、ジーパンなんですが?

「あっ寺沢君、そこの袋を牧野先生にお渡しして」

手渡されたのは、見るからに高級そうな洋服が入った紙袋。まるで誂えたかのように
有無を言わせられずに、着替えさせられて車に乗っている。

カコーン‥‥‥ししおどしの音が部屋に谺する。
襖が開く‥‥

カコーン 

あたしがあたしでいるために、閉じ込めた恋心が立っている。

医院長が、隣で挨拶を交わした後
「では、では」
そう言って部屋を出て行く。

《あり得ない》そんな気持ちと共に、一人部屋に残される。

上座に座って、おしぼりで手を拭きながら
「久しぶり」
美しく微笑む。

思考が付いて行かなくて‥‥
「な、なんで類がここにいるの?」
「っん?約束したじゃない」
「約束?」
「うん」
してない‥してないよ

「ホラッ、国家試験合格した時‥嫁の貰い手が10年無かったら俺と結婚するって」
「えっ?」
「10年経ったでしょ?だから迎えに来たよ」

だから迎えに来た?
な、なに言ってるの?あたし‥‥あなたへの恋心には、もう蓋をしたんだよ。

「あっ、誓約書もあるからね。約束守らないんだったら契約不履行で訴えるね。そうそう牧野の勤める病院、来月から花沢グループの傘下だから。勿論そこもクビってことになっちゃうよ」

ニッコリとニッコリと笑う。

「‥なっちゃうよって?‥類、結婚したよね‥?」

「っん?離婚したよ。あんたが離島に行って1年目だったかな?もう2年以上経つよ」

美しい指でグラスを持ち口に持っていく

「だから、ねっ?」

ねっじゃないと思うのに、思うのに。閉じ込めていた恋心が溢れ出す。
ううん。だめ。やっとあたしは、あたしを生きてるんだ。

「で、で、も‥あたし達‥付き合ってもないよ」

「出会って18年。良く知ってるし、結婚してから付き合えばいいんじゃない?」

いいんじゃない。なんてなんでもない事のように言う。だけど‥‥こんな風な口調で言うときの類は、一歩も後には退かない。

「何か問題でもある?」

「‥‥あるよね?‥」

「っん?ないよね?」

「類は、花沢物産の跡取り息子だよね?」

「あぁ、それ? 俺さぁ、あの時凄く悔しい思いしたんだよね。だから‥‥ちょっと本気出したんだ」

ちょっと本気出したんだ。そう言ってニッコリ笑う。

「でも、でも、でも‥‥‥あっ、そう、あたし仕事辞めたくないし」

「っん?だからさぁ、牧野の勤めてる病院。花沢の傘下グループ」

「あっ‥‥‥」

「俺、もう嫌なんだ。自分の一部を失うのは‥‥」

薄茶色のビー玉色の瞳があたしを見つめる。
真っ直ぐに、真っ直ぐに。 

この瞳には、逆らえない。

「牧野が、OKしてくれないなら‥‥俺さぁーぜんーぶ全部捨てちゃおうかな? 
牧野が得られないなら、全部いらない。勿論この命だってね」

戯けてるけど‥‥多分、本当に言ってる。

「あたし‥あたし‥」

「っん?まだ司を諦められない?」

慌てて首をふる。

「だよね。だって牧野の好きな相手って、随分前から俺だよね?」

涙の雫が零れて、頬を伝う。
波が繰り返し打ち寄せる様に、閉じ込めた恋心があたしの胸にやってくる。
お帰り恋心。そう小ちゃく呟いて、類の胸に飛び込む。



あの日、諦めた恋心。二度と戻ってくると思わなかったのに‥‥

「つくしー」

愛するあなたが、あたしの名を呼ぶ。返事を返せる幸せを噛み締めて振り返り

「るーい」

あなたの名を呼ぶ。


Fin


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上を向いて歩こう 【あなたの好きな歌でお話を書いてみよう企画】

に献上させて頂いたお話になります。
皆さんも是非如何ですか? 詳細に関しましては青空心愛さまのお部屋にて

あっ、そうそう__このお話は、サウダージの歌__その後をイメージしています。
サウダージが当初のお題だったんです。でもでもあの唄って完結してるんですよねー
でもって、ハピエン大好きasuとしてはハピエンにもっていっちゃえーで書かせて頂きました。

決して、決してチョコ棒のお話でもチョコケーキのお話でもはありません(笑)
チョコは好きですけどね〜♡
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4 Comments

asuhana  

たろささま

サウダージ 辛い哀しいんですよねぇーー
あんなにポップなのにw

チョコ棒のお話を最後までお付き合いありがとう←だから違うってw

2017/01/11 (Wed) 18:36 | EDIT | REPLY |   

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2017/01/11 (Wed) 11:49 | EDIT | REPLY |   

asu  

ノエさん

ポルノグラフィティのサウダージ
いいんですよね~
でも切なくて類なんですよね。

2017/01/10 (Tue) 18:31 | EDIT | REPLY |   

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2017/01/10 (Tue) 12:51 | EDIT | REPLY |   

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