ケサランパサラン 01 司つく
雑踏の中‥あたしの目の前にケサランパサランが飛んで来る。
幸せを運ぶ、ケサランパサラン‥‥そっと掌を出せば、ふわりと掌にのる。
誰かのもとに、幸せを運んであげてと‥‥ふっと吹く。
ケサランパサランは、風に乗って空に飛んでいく。
行き先を目で追いながら、どうかどうかあいつが幸せでありますようにと願っていた。
「つくし、おはよう」
「菜々、おはよう」
挨拶を交わし世間話を交わしながら、雑踏の中を歩き社に向う。
いつものように、いつもの朝が始まり、いつものように一日が過ぎ去る筈だった。
いつもと同じ日常が変わり出したのは‥‥
あたしの机の電話がなる。電話のディスプレイが11時11分をさしていた。
「ありが‥‥」
途中で言葉を遮られ
「俺だ、俺。元気か?」
俺だ?俺?って、オレオレ詐欺?
「大変失礼ですが、どちら様でいらっしゃいますか?」
「ッタッ、お前に俺だって言えるのは、俺様ぐらいだろうよ」
ッタッ、じゃない!大きな声で叫びそうになった。
「あとちょっとでお前の会社に着くから」
へぇっ?と思った次の瞬間には、もう電話は切れていた
プゥー プゥーー プゥー
声のしない受話器を抱えたまま呆然とする。
〝あたしの会社に来る?誰が何しに?何の目的で?〟
そんな事を考える。
誰がって‥‥あの声は、道明寺だよね?
何しにくるの? もしかして買収されたとか?
いやいや、あたしは慌てて首を振る。
天下の剣崎グループ。流石の道明寺HDでも買収は出来ないだろう。
うん。その筈だ。
じゃぁ。何しに? って何しによりも、なんで今更?
「牧野、どうした?」
呆然とするあたしに、隣の席の白河が声をかけてくる。菜々との縁を取り持ってあげたので滅法親切なのだ。
「うーーーん 嫌がらせ電話ってとこ?あのさぁ、今日って急ぎの仕事なかったよね?」
「あっ、うん」
「あたし、腹痛で早退。いいかな?」
「いいって?な、な、なにが?」
「白河と外回り中、牧野腹痛になりました。以上」
「‥‥‥外回りって何だ?外回りって」
「いや、これから行くのよ」
「俺、企画書溜まってんだ。それに今日は、外回りない」
「いやいや、あるある。ねっ」
「係長、白河、牧野、AIDAに営業に出ます」
そう声をかけ、白河と自分の鞄を持ち部屋を出ようとした瞬間‥
係長の電話のベルが鳴り、慌てた様子で電話を切った係長は
「牧野、ちょっと待て、白河、AIDAの営業は一人で行ってこい。牧野は、これから社長室だ」
「‥えっ、なんで俺‥外回り‥企画書溜まってんのに」
白河の小さくぼやく声が聞こえる。
ぼやきたいのは、あたしだ。あたし。ココはいっちょ
「‥っう‥係長、す、す、すみません‥お腹のぐ、具合が‥」
「大丈夫だ。さっきでっかい肉まんを給湯室で食べてだろうが」
ば、ば、バレてる。
首根っこ掴まえられて、専務室に連れられる。
まるで‥‥‥ドナドナ状態で。
売られて行く儚い美女‥って心境だ。
「牧野、ダダ漏れだ‥‥美女かどうかは置いといてやるが、お前儚くはないぞ」
「えっ 充分儚いですって」
首を傾げながら
「なぁ、お前‥何やった?社長室呼び出しなんて‥俺の係長人生で初だぞ初」
いやいや、それ‥あたしも聞きたい所ですから。
ケサランパサラン幸せを運ぶんじゃなかったのか?
それなのに、何故に災い?
フッて吹いちゃったから?
あたしの頭の中をぐるぐるとそんな事ばかりが浮かんでた。
ケサランパサラン02は、21時 に更新予定。


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
幸せを運ぶ、ケサランパサラン‥‥そっと掌を出せば、ふわりと掌にのる。
誰かのもとに、幸せを運んであげてと‥‥ふっと吹く。
ケサランパサランは、風に乗って空に飛んでいく。
行き先を目で追いながら、どうかどうかあいつが幸せでありますようにと願っていた。
「つくし、おはよう」
「菜々、おはよう」
挨拶を交わし世間話を交わしながら、雑踏の中を歩き社に向う。
いつものように、いつもの朝が始まり、いつものように一日が過ぎ去る筈だった。
いつもと同じ日常が変わり出したのは‥‥
あたしの机の電話がなる。電話のディスプレイが11時11分をさしていた。
「ありが‥‥」
途中で言葉を遮られ
「俺だ、俺。元気か?」
俺だ?俺?って、オレオレ詐欺?
「大変失礼ですが、どちら様でいらっしゃいますか?」
「ッタッ、お前に俺だって言えるのは、俺様ぐらいだろうよ」
ッタッ、じゃない!大きな声で叫びそうになった。
「あとちょっとでお前の会社に着くから」
へぇっ?と思った次の瞬間には、もう電話は切れていた
プゥー プゥーー プゥー
声のしない受話器を抱えたまま呆然とする。
〝あたしの会社に来る?誰が何しに?何の目的で?〟
そんな事を考える。
誰がって‥‥あの声は、道明寺だよね?
何しにくるの? もしかして買収されたとか?
いやいや、あたしは慌てて首を振る。
天下の剣崎グループ。流石の道明寺HDでも買収は出来ないだろう。
うん。その筈だ。
じゃぁ。何しに? って何しによりも、なんで今更?
「牧野、どうした?」
呆然とするあたしに、隣の席の白河が声をかけてくる。菜々との縁を取り持ってあげたので滅法親切なのだ。
「うーーーん 嫌がらせ電話ってとこ?あのさぁ、今日って急ぎの仕事なかったよね?」
「あっ、うん」
「あたし、腹痛で早退。いいかな?」
「いいって?な、な、なにが?」
「白河と外回り中、牧野腹痛になりました。以上」
「‥‥‥外回りって何だ?外回りって」
「いや、これから行くのよ」
「俺、企画書溜まってんだ。それに今日は、外回りない」
「いやいや、あるある。ねっ」
「係長、白河、牧野、AIDAに営業に出ます」
そう声をかけ、白河と自分の鞄を持ち部屋を出ようとした瞬間‥
係長の電話のベルが鳴り、慌てた様子で電話を切った係長は
「牧野、ちょっと待て、白河、AIDAの営業は一人で行ってこい。牧野は、これから社長室だ」
「‥えっ、なんで俺‥外回り‥企画書溜まってんのに」
白河の小さくぼやく声が聞こえる。
ぼやきたいのは、あたしだ。あたし。ココはいっちょ
「‥っう‥係長、す、す、すみません‥お腹のぐ、具合が‥」
「大丈夫だ。さっきでっかい肉まんを給湯室で食べてだろうが」
ば、ば、バレてる。
首根っこ掴まえられて、専務室に連れられる。
まるで‥‥‥ドナドナ状態で。
売られて行く儚い美女‥って心境だ。
「牧野、ダダ漏れだ‥‥美女かどうかは置いといてやるが、お前儚くはないぞ」
「えっ 充分儚いですって」
首を傾げながら
「なぁ、お前‥何やった?社長室呼び出しなんて‥俺の係長人生で初だぞ初」
いやいや、それ‥あたしも聞きたい所ですから。
ケサランパサラン幸せを運ぶんじゃなかったのか?
それなのに、何故に災い?
フッて吹いちゃったから?
あたしの頭の中をぐるぐるとそんな事ばかりが浮かんでた。
ケサランパサラン02は、21時 に更新予定。


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
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