バカ言ってるんじゃない 21 司つく
百瀬社長がつくしに向って、ニッコリと笑う。
「はい。了解致しました」
つくしは、頷きながら道明寺を見てる。まるであんたも一緒に行くんだからね!というように
そんなつくしの表情を目敏く見つけた百瀬社長は
「牧野だけよ。道明寺は百瀬室長と一緒に此処に残って頂戴」
ほへっと何ともまぁ、間の抜けた顔の2人。
まさか、離れ離れになるなんて思いもよらなかったのだろう。
つくしの口から出た言葉は
「道明寺、朝大丈夫?」
だった。
この言葉に、百瀬夫婦が目を見合わせて、ほくそ笑んだのを2人は知らない。
終業の鐘がなる。
「じゃぁ、明日。今日は早めに帰って頂戴」
百瀬社長と百瀬室長が颯爽と社を後にする。
2人の姿を見送りながら、何となく何となく‥‥“えっ?別々?” なんて思いがつくしの心に芽生える。
でもでも、まだ気が付かない。自分の思いに。
車の中の二人は、何となく何となく無口になる。
それとは、対照的なのが‥百瀬夫婦
「こちら、コードNO.008‥‥‥」
「工さん、それはもういいから」
二人で顔を見合わせて
「「いい感じ♪」」
二人で同じ台詞を口にする。
ホクホクにこにこ顔で
「今日のお夕飯は、北京ダックとしゃれ込みますか?」
なーんて、会話を交わしてる。
「そうね、工さんと暫く会えないしね」
二人の指と指が絡み合い、見つめ合う。
夜の帳が降りて来る。
***
チュンチュンチュンチュン‥‥
「坊ちゃん、坊ちゃん、司坊ちゃん」
ガバッと飛び起きる。飛び起きた先には‥‥タマの顔。
「牧野は?」
「つくしなら、もう出掛けなさいましたよ」
美しい男に陰がさす。誰が見てもわかる程に落胆の陰が‥‥
小ちゃな子供が拗ねるように
「出掛ける前は、いってらっしゃいだろうが‥」
ポツリと呟く。
司の服は、きちんと用意されている。ハンカチと時計の横に、淡いピンクのメッセージカードが添えられている。
おはよう。 行ってきます。
道明寺も頑張ってね。
牧野
たった、三つの挨拶の言葉。
おはよう、行ってきます。頑張ってね。その三つの言葉がこんなに嬉しいなんて知らなかった。
そっと、カードを撫で、内ポケットに仕舞う。
カードを扱う指先は、どこまでもどこまでも柔らかい。
百瀬社長と、つくしが向ったのは南の島のリゾート開発地。
飛行機を降り立った瞬間‥‥熱気と共に、ふわりと南国の花の匂いが香り立つ。
ここが日本?なんていう程に、異国情緒溢れる空間だ。
「写真で見たより綺麗ですね」
「でしょ?うふふっ、来年の春には、全てが完成するわ」
ニッコリと百瀬社長が微笑んで、まるで今思いついたかのように、次の言葉を繋げる。
「あ、そうだ牧野、プレオープンの時のモニターになって頂戴よ」
「モニターですか?モニターって何するんですか?」
「エステして、綺麗な服を着て、おいしい食事して、幻想的な一夜を過ごす感じかしらね?まぁ女子の憧れみたいな感じかしら?」
「うわっ、それってお得ばっかりじゃないですか?百瀬社長、牧野つくし喜んでモニターにならさせて頂きます」
「あらっ、嬉しい」
そう言いながら、何やら紙を出して手渡して来る。
「はい、これにサインして頂戴」
「これは?」
「モニターの予約票みたいなものかしら」
そう言いながら、二枚ある一枚の紙にサラサラッと、百瀬結花とサインする。
百瀬社長に促されて、よく確かめもせずに、つくしも “牧野つくし” とサインしている。
お嬢さん、お嬢さん、本当に宜しいのですかね?そんなに簡単にサインして?
南国の花達が色とりどりに咲き乱れている。
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