スカートの中 01 類つく
見知らぬ町には、見知らぬ人々がいて‥‥‥
世の中って、広いんだなぁーって感じたんだ。
「つくしちゃーん、おはよぉー」
「おはようございまーす」
「今日もいい天気そうだねー」
「そうですねー」
すっかり顔見知りになった朝市のお婆ちゃん達と会話する。この町に来て2週間が経とうとしている。
牧野つくし‥‥ただ今、逃避行中。うんっ?逃避行?ちょっと人聞きが悪いかな。
まぁ、なんだ取材旅行とかって事にしとこうかな?
なんで取材旅行かだって?
以前勤めていた雑誌社の伝手で、各地の写真を撮りながら、コラムを書いている。
なんで転々としてるかって? あははっ、そこ聞く?ってか、聞いちゃう?
まぁ、聞きたくなっちゃうよね? そりゃそうだ。あたしだって、同じ様な人がいたら、興味津々だもん。
転々としてるのは、積極的に関わりになりたくない人がいるから。だから、逃避行中。
でも、場所は隠してない。何でってかって? そりゃぁ、仕事してるからね。すぐバレちゃうよね。
会いたくない人って? あははっ‥‥‥
ピロリーン♪
ほらっ、今日もラインが来てる。
ご飯ちゃんと食べてる?
いつコッチに戻って来るの?
無視、無視。
ピロリーン
具合でも悪い?
無視、無視。
大丈夫?
無視、無視。
ねぇ、どうした?そっち行こうか?
嫌っ、それは困る。慌ててあたしは、返信する。
まだ。これから
じゃぁ一緒にご飯食べよう
はぁっ?じゃぁ一緒にご飯を食べる? 東京にいる筈の類と?此処にいるあたしが? 頭の中をハテナが駆け巡る。
ピーンポーン
恐る恐るドアスコープを覗く。
「ヒャッ」
な、な、な、んで‥ここにいる?
「中々帰って来ないから、来ちゃった」
ニッコリとニッコリとビー玉色の瞳が微笑んでいる。
この笑顔の時は、非常に怖い。‘
「早く開けて」
トントンとドアを叩く音がしてくる。
これを放っておくと、ドンドンドンドン大きくなる。前回の時で確認済みだ。
ガチャッ
ドアを開けた瞬間、類の身体がドアの隙間に押し入って来る。って‥あんた押し売りかい!と突っ込みを入れたくなるのを我慢して、大きくドアを開けて招き入れる。
相手の出端を挫く。きっとコレが今のあたしには、最善策だ。
なのに‥‥
「つくし、ダメじゃないか。ドアを直ぐにフル全開にしちゃ。全く危ないなぁー それに何ここ?セキュリティーもなにもないよね?」
なんて事をグチグチとグチグチと言っている。
あんた何様よ?と突っ込みをいれたくなるけど‥‥そんな突っ込みを入れたら最後‥‥延々と何を言われるか解ったもんじゃない。
お口にチャック、チャック。うーーーーーん チャック。
あたしがチャックをしている間に、辺りのものを一纏めにし始め、鞄に詰め込んでいる。
「さっ、行くよ」
「へっ?行くって?」
「花沢のマンション」
「な、な、な、なんで?」
そう返せば、眉間に皺を寄せながら‥さも当たり前だとばかりに
「っん?危ないからに決まってるでしょ?あんた何考えてるの?」
「で、で、でも‥もうあと半月分先払いしてるから」
「いいよ」
よ、良くないでしょ?とは何だか言えずの雰囲気だ。
ははっ‥‥類が帰った後にまた戻ればいい‥か‥な?
うん。そうしよう。
トボトボとあたしは、類の後ろを付いて行く。
類があたしの手を握る。
逃げないって‥いうの‥
表に出た瞬間‥突風が吹き、スカートがふわりと舞う。
あの日のように。
ご協力お願い致します♪


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