紅蓮 68 つかつく
「また明日」
「明日は、あまり話す機会がないと思うから今日会えて嬉しかった。今度は、屋敷の方にも来てね」
「えぇ‥」
迎えの車に乗り込んだ瞬間、電話をかける。
まるで待ち構えていたようにワンコールで相手が出る。
「もしもし」
「どうだった?」
「それが‥‥以前お会いした時よりも、随分と顔色も良くなっていらっしゃったのですが‥‥どこがどうとは、言えないのですが‥宗谷様とご結婚を決められた時の先輩を彷彿させるんです。心ここにあらずと申しましょうか‥‥それに、何かとても傾倒なさっていらっしゃるようで」
「そうか‥‥ なぁ、そいつは、設楽っていう医師にじゃないか?」
「ええ、そうですわ。随分と心酔されてるようでしたわ」
「そうか‥‥」
「えぇ、明日は美作さんもお出でになられるんですよね?」
「あぁ、司も行く筈だ」
「そうですか。でしたら、明日ご自分達の目でご確認されて見て下さい」
「あぁ解った。忙しい所サンキューな」
「いいえ、そう言えば、西門さんが美作さんがこの頃付き合いが悪いとぼやかれてましたけど?うふふっ」
「‥まぁ、俺も一応美作の専務だしな」
「あらっ、それだけですかね。うふふっ」
軽口を叩き合って会話を終える。
パタンッと電話を閉じた後‥‥溜め息を吐き
「先輩‥どうかどうか‥」
桜子は、何かに向かって祈っていた。
司との別れが決まった時、宗谷との結婚が決まった時、何ものかに邪魔されるように、桜子が興した事業に問題が起きたり、三条家を揺るがす様な事件が起きたりと忙しなかったのだ。
「力になって差し上げたかったのに‥」
何度もあの時力になっていられたらと言う‥‥臍を噛む思いを味わってきたのだ。
桜子の願う事は、ただ一つ。
つくしらしく幸せになって欲しい。
言い換えれば、誰とどうなろうと構わないのだ。
前を向いて明るく笑っていて欲しい。それだけなのだ。
今のつくしは、数ヶ月前にあった時よりも格段に落ち着いて幸せそうに見える。
でも‥‥何かが、どこかが違うのだ。
「その思いは、花沢さんもご一緒ですよね?」
目の前に類が居るように、暗闇に向かって語りかけていた。
全ての用意が整い明日を待つだけになった西門の屋敷の中は、しばしの静寂に包まれている。
「牧野、あっ、つくしさんか」
「あはっ、誰もいないから牧野でいいよ西門さん」
「だな」
「うん」
「一服飲むか?」
つくしは、大きく頷く。
凛とした空気の中、総二郎が茶を点てる音だけがする。
つくしの目の前に茶が置かれ
「若宗匠最後の茶だ」
「ははぁっーーーだね」
「妹よ、心して飲めよ」
「うふふっ うん」
「美味しい‥」
心の中に染みわたっていく。
総二郎が口を開く
「牧野、司が動き出したぞ」
つくしが首を振る。何かに怯えるように小刻みに震えながら。
「西門さん、司に駄目って伝えて。お願い‥」
「なぁ、西門の事は気にするな。それにお前の両親の事もだ。それに俺等全員が司の援護射撃に回る」
「お願い止めて。あなた達は、知らないの。宗谷グループは、あなた達が知っているものだけじゃないって事を」
「それは、どういう事だ?」
「到底太刀打ち出来ないって言う事よ」
「それは、どういう事だ?」
つくしは、首を振り続ける
「‥お前は、お前は、司を諦められるのか?勇気を出せば愛しい男との未来が手にはいるんだぞ」
「‥‥‥受け入れてしまえば、楽になるから。お利口にしていれば、自由も与えて貰えるの‥‥ もう‥辛いのは嫌なの‥‥それに、もうあたしは、汚れてしまってる‥‥司には相応しくない‥ヒック‥ふっふっ‥ぅっぅっ‥‥だから、お願い止めてって伝えて」
悲痛な声が谺する。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
「明日は、あまり話す機会がないと思うから今日会えて嬉しかった。今度は、屋敷の方にも来てね」
「えぇ‥」
迎えの車に乗り込んだ瞬間、電話をかける。
まるで待ち構えていたようにワンコールで相手が出る。
「もしもし」
「どうだった?」
「それが‥‥以前お会いした時よりも、随分と顔色も良くなっていらっしゃったのですが‥‥どこがどうとは、言えないのですが‥宗谷様とご結婚を決められた時の先輩を彷彿させるんです。心ここにあらずと申しましょうか‥‥それに、何かとても傾倒なさっていらっしゃるようで」
「そうか‥‥ なぁ、そいつは、設楽っていう医師にじゃないか?」
「ええ、そうですわ。随分と心酔されてるようでしたわ」
「そうか‥‥」
「えぇ、明日は美作さんもお出でになられるんですよね?」
「あぁ、司も行く筈だ」
「そうですか。でしたら、明日ご自分達の目でご確認されて見て下さい」
「あぁ解った。忙しい所サンキューな」
「いいえ、そう言えば、西門さんが美作さんがこの頃付き合いが悪いとぼやかれてましたけど?うふふっ」
「‥まぁ、俺も一応美作の専務だしな」
「あらっ、それだけですかね。うふふっ」
軽口を叩き合って会話を終える。
パタンッと電話を閉じた後‥‥溜め息を吐き
「先輩‥どうかどうか‥」
桜子は、何かに向かって祈っていた。
司との別れが決まった時、宗谷との結婚が決まった時、何ものかに邪魔されるように、桜子が興した事業に問題が起きたり、三条家を揺るがす様な事件が起きたりと忙しなかったのだ。
「力になって差し上げたかったのに‥」
何度もあの時力になっていられたらと言う‥‥臍を噛む思いを味わってきたのだ。
桜子の願う事は、ただ一つ。
つくしらしく幸せになって欲しい。
言い換えれば、誰とどうなろうと構わないのだ。
前を向いて明るく笑っていて欲しい。それだけなのだ。
今のつくしは、数ヶ月前にあった時よりも格段に落ち着いて幸せそうに見える。
でも‥‥何かが、どこかが違うのだ。
「その思いは、花沢さんもご一緒ですよね?」
目の前に類が居るように、暗闇に向かって語りかけていた。
全ての用意が整い明日を待つだけになった西門の屋敷の中は、しばしの静寂に包まれている。
「牧野、あっ、つくしさんか」
「あはっ、誰もいないから牧野でいいよ西門さん」
「だな」
「うん」
「一服飲むか?」
つくしは、大きく頷く。
凛とした空気の中、総二郎が茶を点てる音だけがする。
つくしの目の前に茶が置かれ
「若宗匠最後の茶だ」
「ははぁっーーーだね」
「妹よ、心して飲めよ」
「うふふっ うん」
「美味しい‥」
心の中に染みわたっていく。
総二郎が口を開く
「牧野、司が動き出したぞ」
つくしが首を振る。何かに怯えるように小刻みに震えながら。
「西門さん、司に駄目って伝えて。お願い‥」
「なぁ、西門の事は気にするな。それにお前の両親の事もだ。それに俺等全員が司の援護射撃に回る」
「お願い止めて。あなた達は、知らないの。宗谷グループは、あなた達が知っているものだけじゃないって事を」
「それは、どういう事だ?」
「到底太刀打ち出来ないって言う事よ」
「それは、どういう事だ?」
つくしは、首を振り続ける
「‥お前は、お前は、司を諦められるのか?勇気を出せば愛しい男との未来が手にはいるんだぞ」
「‥‥‥受け入れてしまえば、楽になるから。お利口にしていれば、自由も与えて貰えるの‥‥ もう‥辛いのは嫌なの‥‥それに、もうあたしは、汚れてしまってる‥‥司には相応しくない‥ヒック‥ふっふっ‥ぅっぅっ‥‥だから、お願い止めてって伝えて」
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