大奥~明日花の乱~ by haruwo
______安政3年
時の将軍・総二郎の3人目の正室として輿入れしたつくし。
自らが望んだ輿入れではなかった。
つくしには、薩摩藩士である類という許婚がいた。
2人の仲はとても睦まじく、周囲の祝福も受け、つくしはとても幸せだった。
しかし、運命の歯車は狂い始める。
総二郎の正室が相次いで早死し、子宝にも恵まれなかったことにより、子沢山の家系で健康体のつくしに白羽の矢が立ってしまったのだ。
家のことを考えると断ることなどできない。
断腸の思いで輿入れを承諾したつくし。
類にはこの決定を覆す術はなかった。
別れの日、類はつくしにある決意を伝える。
「何十年掛かっても、必ずつくしを迎えに行くから。待っていて欲しい。」
「類………………」
しかし、まだつくしの苦難は終わらない。
今度は同志であるはずの一橋派の重鎮から
「御台所としては身分が低すぎる」と手の平を返すように蔑まれる。
全ては家のため……望まぬ輿入れにも関わらず、つくしは右大臣・近衛忠煕の養女になってまで輿入れすることとなった。
身も心もボロボロの状態で輿入れしたつくしを待っていたのは、昏い瞳をした時の将軍・総二郎と、その総二郎を溺愛する大奥総取締の楓だった。
「つくし様、この大奥においては総取締の決定は絶対でございます。
それは御台様におかれましても例外ではございません。
以後、肝に銘じてお過ごしくださいませ。
自由があるなどとは、ゆめゆめお思いになりませぬよう……よろしゅうございますね?」
初対面の際に立て板に水の如く、釘を刺されたつくし。
「来たくて来たわけじゃない…………」
悔し涙が込み上げ、零れ落ちないようにキッと楓を睨むと、楓は眉を顰めたが、昏い瞳をした総二郎には驚きの色が浮かんだ。
「楓の物言いに怯まない女は初めてだ。
ふっ……これは面白い。気に入った。」
「上様…………」
この一件により、つくしと楓の確執が始まった。
楓のつくしへの仕打ちは酷かった。
夕餉の椀には鼠の死体が入れられ、食事を満足に摂れることはなかった。
総二郎の寵愛がつくしに注がれぬよう、総二郎には幾人もの側室が充てがわれた。
つくしの行動は中臈たちによって全て楓に報告され、大奥内のどこにいても針の筵だった。
そんなつくしの味方は、つくし付小姓の桜子ただ一人。
「つくし様。私はいつでもつくし様の味方です。
上様はつくし様を愛してらっしゃいます。
だから自信をお持ちになってください。
楓様の嫌がらせなんかに負けてはなりませぬ。」
「ありがとう、桜子。わかっています。
楓の嫌がらせなんかに屈しはしない。」
「それでこそつくし様でございまする。」
一方、黒船の来航や後嗣争いなどにより、誰に対しても心を閉ざしていた総二郎であったが、つくしと接するうちに少しずつ心を開き、いつしかつくしを愛するようになっていた。
「こんな心穏やかな日々が送れるなんて夢のようだ………つくし、そなたを愛している。ずっと俺の傍にいてくれるな?」
つくしの心にはずっと故郷に残してきた類がいた。
類は必ず迎えに来ると言ってくれた。
しかし、総二郎と接するうちに、総二郎の抱える闇を目の当たりにし、庇護欲とも言える愛情を持ち始めていた。
「もちろんでございます。ずっとつくしは上様のお傍におります。」
「つくし………もうそなたしか欲しくない。」
総二郎は楓から側室を何人充てがわれようとも、つくし以外を抱くことはなかった。
つくしは総二郎のその誠実さが嬉しかった。
不器用で心に傷を負った2人は、いつでも寄り添い、仲睦まじい夫婦になっていった。
しかし、そんな2人を楓が許せる筈もなく、楓は次の手を打ってきた。
ある日、総二郎がつくしの膝枕で微睡んでいると、楓が1人の女を連れて部屋に入って来た。
「上様、御台様。お寛ぎのところ失礼いたします。
本日より上様の側室として仕えることとなりました明日花でございます。
明日花、挨拶を。」
「上様、御台様。
お初にお目に掛かります。明日花と申します。
以後、お見知りおきを。」
明日花は艶やかに微笑み、美しい所作で深々と頭を下げた。
総二郎は全く興味を示していないようだった。
しかし、つくしの中で何故か警笛が鳴る。
『この女、只者ではない。
今まで上様に充てがわれた側室とは明らかに違う。
瞳に妖しい光が宿っておる。
何か他の使命があるのか………?
しかし、美しい女じゃ………上様のお心が動かなければよいが………』
つくしは明日花から瞳を逸らさず、心の中でそっと呟く。
桜子も同意見のようで、
「つくし様、お気をつけくださいませ。
あの女の纏う雰囲気は、今までの側室とは明らかに異なります。」
と、つくしにだけ聞こえるように耳打ちした。
「わかっています。でも、嫌な予感がするのです。」
つくしの予感は的中する。
明日花は大奥で狂い咲きを見せ、総二郎はその花に魅せられていく。
______それはまた別のお話
~完~
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♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
♪♪♪
うひょっ うひょっ
ちょっと寵愛受けてますw
そして、狂い咲きしてます。
くぅぅーーー
妄想書きして良かったぁーーー
haruwoさま ありがとうございます♪
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時の将軍・総二郎の3人目の正室として輿入れしたつくし。
自らが望んだ輿入れではなかった。
つくしには、薩摩藩士である類という許婚がいた。
2人の仲はとても睦まじく、周囲の祝福も受け、つくしはとても幸せだった。
しかし、運命の歯車は狂い始める。
総二郎の正室が相次いで早死し、子宝にも恵まれなかったことにより、子沢山の家系で健康体のつくしに白羽の矢が立ってしまったのだ。
家のことを考えると断ることなどできない。
断腸の思いで輿入れを承諾したつくし。
類にはこの決定を覆す術はなかった。
別れの日、類はつくしにある決意を伝える。
「何十年掛かっても、必ずつくしを迎えに行くから。待っていて欲しい。」
「類………………」
しかし、まだつくしの苦難は終わらない。
今度は同志であるはずの一橋派の重鎮から
「御台所としては身分が低すぎる」と手の平を返すように蔑まれる。
全ては家のため……望まぬ輿入れにも関わらず、つくしは右大臣・近衛忠煕の養女になってまで輿入れすることとなった。
身も心もボロボロの状態で輿入れしたつくしを待っていたのは、昏い瞳をした時の将軍・総二郎と、その総二郎を溺愛する大奥総取締の楓だった。
「つくし様、この大奥においては総取締の決定は絶対でございます。
それは御台様におかれましても例外ではございません。
以後、肝に銘じてお過ごしくださいませ。
自由があるなどとは、ゆめゆめお思いになりませぬよう……よろしゅうございますね?」
初対面の際に立て板に水の如く、釘を刺されたつくし。
「来たくて来たわけじゃない…………」
悔し涙が込み上げ、零れ落ちないようにキッと楓を睨むと、楓は眉を顰めたが、昏い瞳をした総二郎には驚きの色が浮かんだ。
「楓の物言いに怯まない女は初めてだ。
ふっ……これは面白い。気に入った。」
「上様…………」
この一件により、つくしと楓の確執が始まった。
楓のつくしへの仕打ちは酷かった。
夕餉の椀には鼠の死体が入れられ、食事を満足に摂れることはなかった。
総二郎の寵愛がつくしに注がれぬよう、総二郎には幾人もの側室が充てがわれた。
つくしの行動は中臈たちによって全て楓に報告され、大奥内のどこにいても針の筵だった。
そんなつくしの味方は、つくし付小姓の桜子ただ一人。
「つくし様。私はいつでもつくし様の味方です。
上様はつくし様を愛してらっしゃいます。
だから自信をお持ちになってください。
楓様の嫌がらせなんかに負けてはなりませぬ。」
「ありがとう、桜子。わかっています。
楓の嫌がらせなんかに屈しはしない。」
「それでこそつくし様でございまする。」
一方、黒船の来航や後嗣争いなどにより、誰に対しても心を閉ざしていた総二郎であったが、つくしと接するうちに少しずつ心を開き、いつしかつくしを愛するようになっていた。
「こんな心穏やかな日々が送れるなんて夢のようだ………つくし、そなたを愛している。ずっと俺の傍にいてくれるな?」
つくしの心にはずっと故郷に残してきた類がいた。
類は必ず迎えに来ると言ってくれた。
しかし、総二郎と接するうちに、総二郎の抱える闇を目の当たりにし、庇護欲とも言える愛情を持ち始めていた。
「もちろんでございます。ずっとつくしは上様のお傍におります。」
「つくし………もうそなたしか欲しくない。」
総二郎は楓から側室を何人充てがわれようとも、つくし以外を抱くことはなかった。
つくしは総二郎のその誠実さが嬉しかった。
不器用で心に傷を負った2人は、いつでも寄り添い、仲睦まじい夫婦になっていった。
しかし、そんな2人を楓が許せる筈もなく、楓は次の手を打ってきた。
ある日、総二郎がつくしの膝枕で微睡んでいると、楓が1人の女を連れて部屋に入って来た。
「上様、御台様。お寛ぎのところ失礼いたします。
本日より上様の側室として仕えることとなりました明日花でございます。
明日花、挨拶を。」
「上様、御台様。
お初にお目に掛かります。明日花と申します。
以後、お見知りおきを。」
明日花は艶やかに微笑み、美しい所作で深々と頭を下げた。
総二郎は全く興味を示していないようだった。
しかし、つくしの中で何故か警笛が鳴る。
『この女、只者ではない。
今まで上様に充てがわれた側室とは明らかに違う。
瞳に妖しい光が宿っておる。
何か他の使命があるのか………?
しかし、美しい女じゃ………上様のお心が動かなければよいが………』
つくしは明日花から瞳を逸らさず、心の中でそっと呟く。
桜子も同意見のようで、
「つくし様、お気をつけくださいませ。
あの女の纏う雰囲気は、今までの側室とは明らかに異なります。」
と、つくしにだけ聞こえるように耳打ちした。
「わかっています。でも、嫌な予感がするのです。」
つくしの予感は的中する。
明日花は大奥で狂い咲きを見せ、総二郎はその花に魅せられていく。
______それはまた別のお話
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ちょっと寵愛受けてますw
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