ciel 類つく 04
時に神様は、素敵な悪戯をするもんだと笑ってしまった。
いや、この場合はソラのお陰かな?
ソラがニャーニャー鳴いて俺を呼んだ。
どこだと探し歩けば、地下室の書庫だった。
ソラが、ピョーンと跳ねた。
跳ねた瞬間‥‥‥シェルがそこにいたんだ。
ソラと、ソラが落としたシェルを抱えて部屋に戻った。
あの頃のシェルが、少しだけ澄まし顔で写ってた。
「父さん、もう一度この方とのお話を進めてくれませんか?」
父は、驚いた顔をして‥‥母を振り返っていた。
それもその筈だ。花沢の息子は女に興味がないと揶揄されるほどに女っけがないのだから。
「話を進めると言う事は、先には結婚が待っていると言う事だが‥いいのか?」
「類さん、その方‥‥‥‥」
母が不安げに話す。願ったり叶ったリだとばかりに笑って
「是非、お願い致します。と言うよりも彼女じゃなければ俺は、一生結婚しません」
「わ、わ、解った」
花沢の一大事とばかりに急ピッチで話が進められた。
見合いの話そのものを断られたら?そんな心配は、杞憂だった。
記憶を取り戻したの?そう聞きたい程に話はトントン拍子に進む。
「類さん、先方の方が類さんは、ネコ好きかどうか聞いてきたわよ」
母に言われ、思わず笑ってしまった。
母が俺とソラを見ながら
「ソラちゃん、ソラちゃんも可愛がって貰えそうね」
そう言い残して部屋を出て行った。
ソラが、『当たり前だ』とばかりに「ニャー」と鳴き、俺の膝にピョンと飛び乗って来る。
抱き上げて、
「ソラも連れてってやるよ」
そう囁けば
ゴロゴロと喉をならして喜んでいる。
* **
もうすぐ、シェルが現れるという所で‥バスケットに入っていたソラが飛び出した。
俺は、ソラを追い掛ける。
「ソラ、迷子になっちゃうよ」
ローズマリーが緑に輝く庭園に、追いかけっこするようにソラが、時折顔を覗かせながら逃げていく。
「ニャァー」
ソラの歓喜に満ちた声が鳴り響く。
**
ローズマリーの薫りが芳しくて、あたしは庭園に足を踏み入れる。どこか懐かしい香りに包まれながら‥‥何かもどかしいような思いが溢れ出す‥
その瞬間
「ニャァー」
と鳴きながら‥‥空からネコが降って来た。
「ソラ」
空から降って来たネコを抱き抱えながら、声の方に視線を向けた‥
その瞬間‥‥あたしは、恋に落ちた。
柔らかな陽の光に照らし出された、薄茶の髪と瞳を持つ青年に。
ゴクッ
ビックリして、喉がなる。ネコちゃんと同じように。
この人が欲しいと思った瞬間‥‥
『あっ、お見合い』と後悔が押し寄せた。
なのに、あたしの目の前の男の人は、あたしの手を掴む。
えっ? て、て、手を掴み‥‥美しい瞳でニコッと微笑んだ。
後ろからあたしを追い掛けて来たパパとママが
「花沢さん」
そう声をかけている。
一目で恋に落ちた相手があたしのお見合い相手だった。
パパが
「コホンッ」
と空咳をしても‥あたしを掴んだ手は離れない。
花沢さんのお母様がやってきて、あたしに笑いかけた後、ママに何やら耳打ちをした。
ママの顔が歓喜に満ち溢れ、パパのスーツを引っ張って
「お後は、お若い方達で」なんて謎の言葉を残して去っていく。
手は、繋がれたまま離れない。
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