月夜の人魚姫 28 総つく
お茶会当日‥‥
蒼の手前なんでもない風を装いながらも、
あたしの心臓は、口から出そうな程にバクバクと音を立てている。
小さなお茶会とは言えない程の設えの数々。
流石、家元夫人の選択だと感心しきりだ。
家元夫人‥‥京子さんの事が好きだった。
雪さんに最初から親近感を持ったのも‥‥凛としているのに可愛らしい心根が、京子さんとどことなく似ていからだと今更ながら気が付いた。
〜〜〜〜〜
「つくしちゃん、つくしちゃん、見て見て、これこれ凄い花火が付くんですって」
童女のように頬を赤らながら嬉しそうに、あたしの名を呼ぶ。
「ですね。あとで頼んじゃいます?」
返事をしながら、目の前の可愛らしい女性を温かな気持ちで見つめる。
「頼んじゃいましょ。頼んじゃいましょ」
京子さんが嬉しそうにはしゃいでいる。
西門さんと良く似た瞳と目が合って‥‥
何故か、ドキリッとしてしまった。
「あらっ、つくしちゃん顔が赤いけど、もう酔ってしまった?」
「あっ、いえいえ‥大丈夫です。京子さんは大丈夫ですか?」
「えぇ、勿論大丈夫。わたしこう見えてもお酒には強いのよ」
「「えっ?」」
境さんと2人で目を見合せて声を出せば
「はい。嘘です」
京子さんがチロリと舌を出す。
その仕草がなんとも可愛らしくて、境さんと2人で目を見合わせて笑い合う。
〜〜〜〜〜
あの当時、西門の邸の中で京子さんの本当の姿を知っていたのは、境さんとあたしだけだったのかも知れないと、ぼんやりと思った。今はどうなのだろう?そんな事が頭を過り、少しでも京子さんの杞憂が晴れていますようにと心から願っていた。
「ママ、ママ、これマルバノキって言ってね、利休さん七選花なんだって」
「蒼よく知ってるねー。そうそう、丸いハートみたいな葉っぱをつけるからマルバノキ」
「あっ、そっかー、丸い葉っぱだから、マルバで、それの木だからマルバノキなんだ」
目をキラキラと輝かせたあと
「あのね、京子おばちゃまに教えてもらったんだよ」
京子さんの名前が、蒼から出て来てドキリとする。
「あっ、京子おばちゃまだ」
蒼が京子さんのもとに走り出す。
あたしは、狼狽える。寄席に京子さんがいることに。
だって‥‥亭主ならこの時間、寄席に居るわけがないのだから。
京子さんが蒼と手を繋ぎながら、あたしの前に現れて
「倉科様、今日は態々お呼びだてしてしまって申し訳ございませんでした。ですけど、一度ゆっくりとお話してみたいと思っておりましたので、お越し頂いて大変嬉しゅうございますわ」
ニッコリと美しく笑う。
「こちらこそ。蒼が実家の方で大変お世話になっているようで‥‥大変ありがとうございます」
「京子おばちゃま、今日はどなたがお茶を点てるの?」
蒼が聞けば、
「うふっ、今日はね、おばちゃまの息子がねお茶を点てるのよ」
「京子おばちゃまの子供?」
「えぇ、蒼君が気に入ってくれるといいのだけど」
「気に入る?」
「そう、総二郎さんの点てたお茶を蒼君が気に入ってくれると嬉しいなって」
ドキドキするような会話が‥あたしの真横で繰り広げられている。
心の中で、溜め息を付いた瞬間‥
京子さんの瞳があたしを、ジィッと見つめていた。
京子さん、境さん、雪さん、蒼とあたしが揃って、案内を受け外腰掛けに腰掛ける。
亭主が門を開き、留石を取り除き蹲って黙礼をする。
あたしは、黙礼を返すのも忘れて、西門さんの動き全てに惹き付けられていた。
「未悠ちゃん」
雪さんに声をかけられ、我に返る。
火、水、金、土、日 0時更新


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
蒼の手前なんでもない風を装いながらも、
あたしの心臓は、口から出そうな程にバクバクと音を立てている。
小さなお茶会とは言えない程の設えの数々。
流石、家元夫人の選択だと感心しきりだ。
家元夫人‥‥京子さんの事が好きだった。
雪さんに最初から親近感を持ったのも‥‥凛としているのに可愛らしい心根が、京子さんとどことなく似ていからだと今更ながら気が付いた。
〜〜〜〜〜
「つくしちゃん、つくしちゃん、見て見て、これこれ凄い花火が付くんですって」
童女のように頬を赤らながら嬉しそうに、あたしの名を呼ぶ。
「ですね。あとで頼んじゃいます?」
返事をしながら、目の前の可愛らしい女性を温かな気持ちで見つめる。
「頼んじゃいましょ。頼んじゃいましょ」
京子さんが嬉しそうにはしゃいでいる。
西門さんと良く似た瞳と目が合って‥‥
何故か、ドキリッとしてしまった。
「あらっ、つくしちゃん顔が赤いけど、もう酔ってしまった?」
「あっ、いえいえ‥大丈夫です。京子さんは大丈夫ですか?」
「えぇ、勿論大丈夫。わたしこう見えてもお酒には強いのよ」
「「えっ?」」
境さんと2人で目を見合せて声を出せば
「はい。嘘です」
京子さんがチロリと舌を出す。
その仕草がなんとも可愛らしくて、境さんと2人で目を見合わせて笑い合う。
〜〜〜〜〜
あの当時、西門の邸の中で京子さんの本当の姿を知っていたのは、境さんとあたしだけだったのかも知れないと、ぼんやりと思った。今はどうなのだろう?そんな事が頭を過り、少しでも京子さんの杞憂が晴れていますようにと心から願っていた。
「ママ、ママ、これマルバノキって言ってね、利休さん七選花なんだって」
「蒼よく知ってるねー。そうそう、丸いハートみたいな葉っぱをつけるからマルバノキ」
「あっ、そっかー、丸い葉っぱだから、マルバで、それの木だからマルバノキなんだ」
目をキラキラと輝かせたあと
「あのね、京子おばちゃまに教えてもらったんだよ」
京子さんの名前が、蒼から出て来てドキリとする。
「あっ、京子おばちゃまだ」
蒼が京子さんのもとに走り出す。
あたしは、狼狽える。寄席に京子さんがいることに。
だって‥‥亭主ならこの時間、寄席に居るわけがないのだから。
京子さんが蒼と手を繋ぎながら、あたしの前に現れて
「倉科様、今日は態々お呼びだてしてしまって申し訳ございませんでした。ですけど、一度ゆっくりとお話してみたいと思っておりましたので、お越し頂いて大変嬉しゅうございますわ」
ニッコリと美しく笑う。
「こちらこそ。蒼が実家の方で大変お世話になっているようで‥‥大変ありがとうございます」
「京子おばちゃま、今日はどなたがお茶を点てるの?」
蒼が聞けば、
「うふっ、今日はね、おばちゃまの息子がねお茶を点てるのよ」
「京子おばちゃまの子供?」
「えぇ、蒼君が気に入ってくれるといいのだけど」
「気に入る?」
「そう、総二郎さんの点てたお茶を蒼君が気に入ってくれると嬉しいなって」
ドキドキするような会話が‥あたしの真横で繰り広げられている。
心の中で、溜め息を付いた瞬間‥
京子さんの瞳があたしを、ジィッと見つめていた。
京子さん、境さん、雪さん、蒼とあたしが揃って、案内を受け外腰掛けに腰掛ける。
亭主が門を開き、留石を取り除き蹲って黙礼をする。
あたしは、黙礼を返すのも忘れて、西門さんの動き全てに惹き付けられていた。
「未悠ちゃん」
雪さんに声をかけられ、我に返る。
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