吾亦紅 後編 総つく

総つくコラボ♪
テーマ 『ほっこり、ほんわか』 『幸せになる』 『思わずにやけちゃう』
上を向いて歩こう 秋桜 【前編】 * 秋桜 【後編】
おとなのおとぎばなし いくつもの時を過ぎても【前編】 * いくつもの時を過ぎても【後編】
gypsophila room あなたのいない日【前編】 * あなたのいない日 【後編】
柳緑花紅 木枯らしに抱かれて【前編】 * 木枯らしに抱かれて【後編】
我も恋う___吾亦紅
秋風に揺れている
愛慕を抱えて揺れている
愛って奴は、やっかいだ。全てを狂わせる魔物だ。
恋なんて、
愛なんて‥‥いらねぇ。
魑魅魍魎の世界に生まれた俺__捨てられない茶の世界。
ならば、
敷かれたレールを受け入れて、政略結婚でもなんでも受け入れてやる‥‥‥
つもりだった。
なのに、なのにだ。
「晃ちゃん、そこのお玉取っ~て」
「総二郎さん、鶏団子は1人3個迄ですからね」
「兄貴、水菜洗った?」
「総二郎、グラスはこれでいいかな?」
「つくしちゃん、儂も今日はちぃっと飲んでも構わんかな?」
な、な、な、なんだ? このTHEアットホームな雰囲気は‥‥‥
「っん?どうしたの?」
目の前の女が俺に声をかける。
答える暇も無く、親父が女に声をかけている
「水田さんと墨田さんがいらしゃったよ」
「あっ、はーい。あっ、ビール足りますかね?」
「吟醸のとっておきがあったから、それを持ってくるよ」
「有り難うございます」
水田と墨田の古狸親父がやって来て
「今日は、お招き有り難うございますよ」
なんて言いながら、水田は籠に入った松茸を、墨田はでかい箱を手渡している。
「いいんですか?」
女の瞳が嬉しそうに輝けば
「勿論だよ。花より団子じゃろ?」
古狸2人の顔が嬉しそうに綻んでいる。
「大野さんも一ノ坂さんと一緒に来るらしいよ」
「あっ、嬉しいです」
「志津さーん、あと2名様追加です」
「若奥様、そんなに大きなお声を出さなくても聞こえております。それに、いくら安定期に入ったからと言ってもそんなに動き回ってはいけません。祥一郎坊ちゃん夫妻がいくら産婦人科のお医者様でも志津が許しません」
志津に怒られ、てへへっと舌を出している。
つくしの笑顔に釣られて皆の顔も笑顔になる。
小さな笑顔が積み重なり
大きな笑顔に変えて行く
笑顔は、幾重にも幾重にも連鎖して__
俺の周りを変えていく
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
「おっ、今日もよく働いてんねぇー」
そう揶揄えば
「若宗匠,大変お疲れさまでございます」
優雅に一礼をしてくる。
「おっ、大分さまになってんじゃねぇか」
辺りを見回し誰もいないのを確認してから、得意気に胸を拳で叩き
「あったぼうよぉー」
なんて笑ったあとに小声で
「昨日ね、初めて志津さんにお手前褒められたんだよ」
嬉しそうに報告してくる。
「何年目だっけ?」
「っん?」
指を折りながら
「丸6年」
ニコニコ笑ってやがる。
その様があまりにも無防備なガキのようで‥‥思わず笑えば
「あっ、すぐに笑うんだから、もうっ」
なんて怒り出す。
「ワリィ、ワリィ。じゃぁ褒められ記念に、この後飯でも食いに行くか?」
「おぉっー いいの?」
「あぁ、どこでもいいぞ」
色気もなんもねぇホルモン焼きを食いに行って、2人で安酒を煽った後、夜風を浴びながらブラブラと歩く。
牧野はほろ酔い気味なのか?唄を口ずさみながら千鳥足でブラブラ歩く。
「お前さぁ、どうせならもっといい所を強請れよ」
「えぇー、最強に美味しいじゃん」
プクゥ~ッと膨れて返事する。
膨れ面が可愛くて思わず指を頬に這わせてた。
「ちょっ、ちょっ、なに?なに?あんなんで酔っ払った?」
「かもな‥」
次の瞬間‥笑いながら俺の指を戻そうとする牧野を抱きしめていた
「ちょっ、ちょっと、西‥かど‥さ‥ん‥」
唇から漏れる俺の名前をかき消すように、牧野の唇を貪った。
抗っていた牧野の腕が俺の背に回った瞬間‥俺の理性は、吹っ飛んだ。
色気もへちまも、なんもねぇ女なのに‥俺の心も身体も全てで、牧野に欲情した。
牧野の腕を掴みホテルに連れ込んだ。
鉄パン女は、やっぱり鉄パン履いたままだった。
ガチガチに固まる牧野を俺は抱いた。
愛なんて、
恋なんて
戯言だと思ってた。
それなのに‥‥目の前の女に俺は恋をして、愛を囁いた。
この手を放したら、どこかに飛んでいきそうで朝迄牧野の寝顔を見つめてた。
見つめてる間に俺は、決意した。
愛する女を羅刹のいる世界に引き摺りこむ事を。
「いいよな?」
眠り込む女に話しかければ、まるで俺の問いかけに返事するかのようにニッコリと微笑んだ。
牧野が眠ってる内に俺は一本の電話をかける。受話器の向こうの相手に
「これから少しお時間をいただけませんでしょうか?」
と頼めば、弾んだ声で
「つくしちゃんの事かな?」
「あっ、はい」
「そうか、そうか‥総二郎は今どこにおるのじゃ?」
場所を告げれば
「そうか、そうか‥では、儂等がそちらに向かおう。なに2時間もあれば着くでな。それまでつくしちゃんに逃げられんようにするんじゃぞ」
慌ただしく電話を切られた俺は、呆気にとられながら今の会話を思い出す。
慌てて牧野を叩き起こす。
「牧野、牧野、大宗匠夫妻が来るぞ」
そう告げれば、パチリと牧野の目が覚めて‥
「えっ?な、な、なんで‥って、やっ、‥あたし‥えっ、服‥えっ‥えって、キャァーッ、は、は、裸—」
シーツを巻き付けてバスルームに向かう。
牧野がシャワーを浴びてる間に見計らったように志津からコールが入る。
「20分ほどしましたら、私とヘアーメイクのものが参りますので」
バスルームの牧野に声を掛ける
「20分したら志津が来るってよ」
「#$%&*@#$%& ウグッ %& えっ?えっ?」
ビショビショのままにバスルームから出て来る牧野の身体を拭きながら抱きしめる。
「落ち着け。なっ、落ち着け」
バスローブを羽織った所で、ドアがノックされる。
ドアを開ければ志津と眼が合う。
志津は、嬉しそうに微笑み
「それでは後ほど」
俺は追い出され、バタンっとドアが閉まる。
2時間後‥‥大振り袖を纏ったつくしが俺等の前に現れる。
困った顔で俺を見つめながら小声で
「西門さん‥?コレって何の罰ゲーム?」
「ぷっ、くくくっ」
笑いが漏れる。
「もう、なんで笑うの?」
「いや、ワリィ」
コホンッと大宗匠の咳払いが聞こえる。
牧野が慌てて頭を下げる。
「つくしちゃん、久しぶりじゃな。今日は縁談じゃ」
「‥え、縁談ですか?」
大きな瞳に一瞬哀しさが宿る。
「そうじゃ‥嫌かな?」
牧野は黙ったまま返事をしない。
ってか?この状況だったら何となく察しはつくんじゃねえの?そう思うのに
「‥‥‥」
押し黙ったまんまだ。
「つくしさん、お返事はどうなさったの?」
志津が牧野に声を掛けた瞬間‥‥牧野の瞳からポツリと涙が一粒零れて
「申し訳ありません‥‥黙って消えますので、どうぞお許し下さいませ」
泣きながら部屋を出て行こうとする。
その瞬間、困った顔をした大宗匠が
「つくしちゃん、待て待て早まるな___総二郎との縁談じゃ。一門、首を揃えて待っておったのだから、断るなどさせんよ。それとも何じゃ?総二郎では不服かの?」
牧野の両目から、涙が溢れる。
大宗匠、いいや爺様の言葉は本当であれよあれと言う間に、祝言の用意が整えられて、3ヶ月後には西門つくしとなっていた。
羅刹が住む場所に愛する女を引き摺りこんだ。
愛する女は、羅刹を飼い馴らし守護神に変えて行く。
愛も恋もいらねぇと思ってた筈なのに‥‥
つくしは、
愛も
恋も
幸せも与えてくれる。
気が付けば‥‥
俺の周りには、柔らかな光が満ち溢れている
柔らかな光の中で幸せそうに吾亦紅が揺れている。
完
吾亦紅:ワレモコウの花言葉には
移りゆく日々、憧れ、変化、愛慕、もの思い、明日への期待 などがあります。
吾亦紅が風にゆらゆらと揺らめく様を思い浮かべながながらお読み頂ければ嬉しいです♪
asuhana
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