スカートの中 10 類つく
ズキンッ 心が痛む。
「名誉の勲章」
なんて言って誤摩化してるけど‥
本当は、ズルイって解ってる。
こんな大したこと無い傷跡で、つくしを手に入れちゃったんだから。
つくしは、知らないけれど‥‥本当は、ずっと見てた。
最初、彼女を見かけたのは‥静が旅立つ朝だった。
車の中からボンヤリと外を眺めてた。
『フランスか‥‥結局、俺は弟止まりって奴だったのか』
そんな事が心を過った時だった。
突風が吹いて、お下げ髪の女の子の制服のスカートが捲れ上がった。
スカートの中は、
“ GO ”
と書かれた毛糸のパンツだった。
毛糸のパンツに勇気を貰った俺は、静を追い掛け旅立った。
フランスで静と一緒に暮らした‥。
願いは叶った筈なのに、極上の調べは聞こえなかった。
色のない街で、赤文字のGOという文字だけを思い出しながら過ごした。
静に恋人が出来て俺等の関係は終わった。
傷ついて哀しんで当たり前のはずなのに、気分は晴れ晴れしくて‥‥
帰りの飛行機の中では、無意識に鼻唄まで飛び出してた。
そんな感情に一番驚いたのは、何を隠そう自分だった。
なんで?なんて考えても答えは出なかったけど‥‥
ただ一つだけ
“GO“
という文字だけが、鼻唄と共に頭の中をグルグルと回ってた。
日本に帰って先ずした事は、少女を捜す事だった。出会った場所と制服から、少女を捜し出した。
牧野つくし 17歳 都立高校に通う3年生だった。
「中学生くらいかと思ったら、へぇー高校生なんだ‥‥‥あはっ、良かった」
何で良かったなんて思ったかなんて気が付かなかった。
ただ‥‥その日から、俺の趣味は、“牧野つくし” を見る事になった。
なんとなく、ストーカーじみてたから‥‥
運転手を使うのに抵抗があって、先ず頑張って車の免許を取った。
あっ、でも‥ストーカーじゃない。
これは断言しておくよ。
趣味が “牧野つくし” 観察ってだけだから。
ねっ!
だから‥‥
彼女の名前も、住所も、家族構成も、どこの大学で、なんのサークルに入ってて、バイトは何をしてて、何が好きで、何に興味があるかっていうのまで‥全部知ってた。
毎日の行動も、口癖もだ。
つくしが、無類のお人好しだってことも。
月水木は、7時48分きっかりに、コンビニ近くのあの道を通る。
速度を落としながら、信号待ちをしながら、時たまは、コンビニの駐車場に車を止め、彼女を見てた。
つくしを見る度に幸福感に包まれて、生きてるって実感したんだ。
つくしに再び出会って、人生に音が色がついたんだ。
誰かにつくしの事を教えたかって?
いいや、教えない。
俺、もともと人付き合いが多い方じゃないし、ガキの頃からの友達って言ったら‥‥
俺のものを欲しがる野獣か、ドンファンカサノヴァ気取り屋か、熟女キラーのメルヘン男だ。
こんな危ない奴らに、下手に興味をもたれたくもないしね。
それじゃなくても‥‥モテるんだからね。
折角、幾つもの不穏な動きを止めてきたって言うのに,
態々飢えたライオン達の檻に大事な大事なウサギちゃんを放り込むバカはいないだろう?
ねっ!
あの日
あの時
突風が吹いてスカートが捲れ上がったのは、
偶然じゃない。
しかも‥‥
真っ赤なハートだ。
これは正しく運命だ。
だって、あの瞬間‥
極上の調べが俺の頭上に鳴り響いたからね。
俺は、初めて自分の気持ちに気が付いた。
あぁ、俺‥‥彼女が好きだったんだって。
で、次の瞬間
木に衝突。
だから
ズルいけど、この傷跡には頑張って貰うつもりだよ。
ねっ!
いいよね?
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