紅蓮 70 つかつく
「宗谷様、設楽先生」
声をかけてきた人物と3人で話し出した。
少し離れた所に玲久と共に移動する。
「つくしさんも、あちらのケーキはお好きなんですか?」
玲久がそう話しかけて来る。
「いえ、一度食べてみたくて初めて行ったんです。玲久さんは、良く行かれるんですか?」
「いえ、私も初めてですわ‥‥普段は籠の鳥ですから」
「籠の鳥?設楽先生が玲久さんをですか?」
「えぇ、自由など私には存在しませんのよ。うふふっ、つくしさんもご一緒かしら?」
小首を傾げながら、黒い瞳があたしに問いかける。
その言葉で、ほんの少しの自由を与えられあたかも全てが自由になったかのように錯覚していた自分に気が付く。
__籠の鳥は、籠の鳥のままなのだと。
「私達って、精巧に出来た操り人形のようですわよね」
「操り人形__ですか?」
「えぇ、全てを思うが侭に支配された操り人形。設楽は操り人形を作るのが上手だから」
「設楽先生が?」
玲久が美しく微笑んで
「えぇそうよ。全て受け入れる操り人形。うふふっ‥‥何も考えないで生きるのにはうってつけですけどね」
「__玲久さん‥」
「__つくしさん、私には記憶がないの。設楽の妻らしいのだけど‥あの人を愛した思いが何一つないのよ。何一つよ。それなのに、あたしは設楽の全てを受け入れて生きているの」
「記憶がない?」
「えぇ、とっても大きな事故にあったらしくて‥その時に全てを忘れてしまったようなの。何かを思い出そうとする度、耐えられない程の頭痛が襲うの‥‥‥それに、ココがもの凄く痛むの。思い出すなって。思い出せば辛い事ばかりだって」
胸を押さえて哀し気に笑う。
あたしは首を振り
「玲久さん、それは違うわ。設楽先生は、玲久さんの事を話される時、それはそれは幸せそうにお話されるのよ。色々お話して下さったわ。玲久さんとの出会いや、玲久さんとの思い出を。あんな顔で優しく思い出を話される設楽先生が、玲久さんを操り人形として扱うなんて‥あり得ないわ」
「そうね。設楽は、とっても優しいわ。多分、とっても愛してるんでしょうね。私のこのこの形を」
「形を?」
「えぇ、そうよ」
言葉が途切れた後に‥‥
「__変な話をごめんなさい。何だかあなたがとっても気になってしまって」
黒真珠のような瞳があたしを見つめる。
「先輩」
あたしを呼ぶ桜子の声がする
「あっ、桜子、今日はありがとう」
「いえ。こちらこそお招き頂きまして大変有り難うございます。ご主人様の理事就任も併せておめでとうございます」
桜子の視線が玲久さんに注がれる。
「先輩、そちらの方は?」
「お世話になっている病院の先生の奥様の玲久さんよ」
「初めまして。三条桜子と申します」
「お初にお目にかかります。設楽玲久と申します」
当たり障りのない会話を幾つか交わす間に、設楽先生が戻ってくる。
桜子と挨拶を交わした後
「玲久そろそろ、お暇しよう。つくしさん、三条さんそれではお先に失礼致します」
そう言葉を残し2人は、去っていった。
「先輩、玲久さんって虹彩移植をされてるんですね」
「虹彩移植?」
「えぇ、目の色を変える手術ですわ。それにお顔の方もかなり弄られてるみたいで」
桜子が薄らと笑う。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
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「いえ、一度食べてみたくて初めて行ったんです。玲久さんは、良く行かれるんですか?」
「いえ、私も初めてですわ‥‥普段は籠の鳥ですから」
「籠の鳥?設楽先生が玲久さんをですか?」
「えぇ、自由など私には存在しませんのよ。うふふっ、つくしさんもご一緒かしら?」
小首を傾げながら、黒い瞳があたしに問いかける。
その言葉で、ほんの少しの自由を与えられあたかも全てが自由になったかのように錯覚していた自分に気が付く。
__籠の鳥は、籠の鳥のままなのだと。
「私達って、精巧に出来た操り人形のようですわよね」
「操り人形__ですか?」
「えぇ、全てを思うが侭に支配された操り人形。設楽は操り人形を作るのが上手だから」
「設楽先生が?」
玲久が美しく微笑んで
「えぇそうよ。全て受け入れる操り人形。うふふっ‥‥何も考えないで生きるのにはうってつけですけどね」
「__玲久さん‥」
「__つくしさん、私には記憶がないの。設楽の妻らしいのだけど‥あの人を愛した思いが何一つないのよ。何一つよ。それなのに、あたしは設楽の全てを受け入れて生きているの」
「記憶がない?」
「えぇ、とっても大きな事故にあったらしくて‥その時に全てを忘れてしまったようなの。何かを思い出そうとする度、耐えられない程の頭痛が襲うの‥‥‥それに、ココがもの凄く痛むの。思い出すなって。思い出せば辛い事ばかりだって」
胸を押さえて哀し気に笑う。
あたしは首を振り
「玲久さん、それは違うわ。設楽先生は、玲久さんの事を話される時、それはそれは幸せそうにお話されるのよ。色々お話して下さったわ。玲久さんとの出会いや、玲久さんとの思い出を。あんな顔で優しく思い出を話される設楽先生が、玲久さんを操り人形として扱うなんて‥あり得ないわ」
「そうね。設楽は、とっても優しいわ。多分、とっても愛してるんでしょうね。私のこのこの形を」
「形を?」
「えぇ、そうよ」
言葉が途切れた後に‥‥
「__変な話をごめんなさい。何だかあなたがとっても気になってしまって」
黒真珠のような瞳があたしを見つめる。
「先輩」
あたしを呼ぶ桜子の声がする
「あっ、桜子、今日はありがとう」
「いえ。こちらこそお招き頂きまして大変有り難うございます。ご主人様の理事就任も併せておめでとうございます」
桜子の視線が玲久さんに注がれる。
「先輩、そちらの方は?」
「お世話になっている病院の先生の奥様の玲久さんよ」
「初めまして。三条桜子と申します」
「お初にお目にかかります。設楽玲久と申します」
当たり障りのない会話を幾つか交わす間に、設楽先生が戻ってくる。
桜子と挨拶を交わした後
「玲久そろそろ、お暇しよう。つくしさん、三条さんそれではお先に失礼致します」
そう言葉を残し2人は、去っていった。
「先輩、玲久さんって虹彩移植をされてるんですね」
「虹彩移植?」
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