月夜の人魚姫 40 総つく
「___生きてるのに何故伝えようとしないか‥ですか?」
「えぇ、そうよ。生きてるのに何故伝えないの?」
「伝えたら、何かが変わるのですか?」
西門さんの言葉を受け止めて、雪さんがゆっくりと首を振る。
「そうねー、変わらないかもしれないわね。__でも,変わるかもしれない。伝えずに変わらぬ事を待つよりも、変わると思って伝える事も必要なんじゃないのかしら?‥‥だって伝えない限り変わりようがないのよ?」
伝えない限り変わりようがない__
察して欲しい。気が付いて欲しい。挙げ句の果てには、気が付かないあなたが悪い。
ついついそう思いがちだ。だってそうすれば、責任転嫁が出来るから。誰かのせいにしてしまえば、自分が傷つかなくて済むから。
「京子さん、京子さんもそうじゃなくて?大切なら大切だと大好きなら大好きだと伝えたらどうかしら?」
京子さんがコクンと一つ頷いて、西門さんに向き直る
「総二郎さん、私はあなたが大切で大好きよ。今更遅いと言われても‥‥私はあなたが大好きよ。だから幸せを諦めないで頂戴」
「__母さん‥‥」
西門さんが小さく震える京子さんの肩を抱く。
「‥うぅっうぅっうぅー」
どこからか、啜り泣く声がして___声の方を振り向けば
遊が涙を出しながら泣いている。
デカンタを見れば‥‥あちゃっ_この短時間の間にいつの間に飲んだの?っていうくらい減っている。
「良い話だ、良い話だ。そうだ‥そうだ‥生きてるんだもんな。うん。俺ら生きてるんだもんな。なっミュウ‥そうだよな‥‥俺ももう一度」
こうなった遊は___始末に負えない。
「ゆ、遊君?__ぷっ」
雪さんが笑い出し、西門さんと、京子さんもつられて笑い出す。
あたしも何だか楽しくなって笑い出していた。
「ミュウ__」
遊があたしの名を呼び抱きつこうとした瞬間‥
西門さんの手が伸びて、あたしを抱きしめる。
「えっ?」
「他の男に触れさせたくないんで‥‥倉科さん、欲しいものは欲しいって言っていいんですよね?」
雪さんに向き直り__そう聞いている。
「えぇ、勿論よ」
えっ?えっ?えぇーーーー
「だそうなんで、俺のもんになりませんか?」
頭が付いて行かないあたしを尻目に、雪さんと京子さんが飲み出して‥‥遊は?と見れば、床に倒れて高鼾だ。
「長期戦で構わないんで‥宜しくお願いしますね」
西門さんが艶やかに笑った。
「未悠さん、いいですよね?」
いいですよね?そう聞かれて‥‥コクンと頷いてしまっていた。
パチパチと2人が手を叩く。
「ママ~、おしっこぉー」
寝ぼけ眼の蒼があたしに声をかける。
西門さんの胸の中から慌てて抜出して、
「はい。はい。こっちよ」
蒼をトイレに連れて行く。
トイレから出た蒼は、ニッコリ笑ってから
「蒼、ま、待って」
あたしの制止も聞かずに居間に向かって駆け出した。
カチャッ
「バァバァ、京子さーん」
「蒼、もう遅いんだから」
「えぇっーーーママ達だけずるいじゃん」
「ママ達は、大人だから」
ぷくぅ~っと膨れる蒼に
「うふふっ、じゃぁ、バァバァと京子さんが蒼君のお部屋でお話し聞かせてあげるわ」
蒼を真ん中に手を繋いで入っていった。
残されたのは、西門さんとあたしの2人。
「フンゴッ‥」
あっ、高鼾かいてる遊もだから3人か__
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