月夜の人魚姫 41 総つく
「お茶淹れてもらってもいいですか?」
そう聞いてくる。
「あぁ、はい」
2人でソファーに座ってお茶を飲み、一口啜って優しく笑う。
「未悠さん、未悠さんは本気の恋ってしたことあります?」
深く黒い瞳があたしを見つめる。
この瞳には、嘘がつけなくて‥あたしはコクンと一つ頷く
「__ちょっと長いけど俺の話に付き合って貰ってもいいですか?」
もう一つコクンと頷けば
「俺__すげぇー惚れてた女がいたんですよ‥あっ、違うか__今も昔もすげぇー惚れてる女がいるんですよ‥‥か」
「ずっとですか?」
そう聞けば
「__えぇ、悔しい事にそいつの顔しか思い浮かばない。幾人、女を抱いても満足しないんですよ」
「__そんなに好きなのに……他の方を抱かれるんですか?」
「俺も男ですからね__」
そう言った後に、ククッと一つ笑って
「これまた違いますね。そいつが消えて‥‥寂しくて寂しくて‥‥一人で居ると頭が狂いそうになるんですよ。身体は満たされても、心は満たされないって解ってるのに‥バカですよね」
心が満たされないから、次から次へと身体を満たそうとする。余計に虚しく寂しくなると解っていても‥‥
西門さんを見つめる‥‥次の瞬間、彼の口から
思いがけない言葉が出る。
「__未悠さん‥‥俺と勝負しませんか?」
「勝負?」
「えぇ、勝負です」
「なんの勝負ですか?」
ニヤリと笑って
「未悠さんが俺に落ちるかどうかの」
「それって‥私にメリットあるんですか?」
そう問えば
「うーーん、噂の色男と付き合える?」
「えっ?」
「じゃぁ、噂の色男を玩具に出来る。女に箔がつきますよ」
「ぷっ、それがメリット?」
「えぇ、それがメリットです。勝負の間、アッシーでもメッシーでも何にでも自由に使って下さい」
「それって、うちの会社の広告塔とかにもなってくれたりします?」
哀しいかな……こんな時だと言うのに企業人の顔がちらっと出てしまって……
「えぇ、勿論。なりますよ」
「その話し、乗ったーーーー」
「「えっ“」」
声のした方を振り向けば‥‥
「ふわぁ~」
いつの間にか起きたのか欠伸をしてる遊だった。
「じゃぁ、決定ってことで」
いつの間にか‥‥あたしと西門さんの間に勝負が成立していた。
って‥‥勝負って‥‥お付き合いするって事だよね?
なんだか‥‥色々な事があり過ぎた一日であたしの頭は、少々お疲れのようだ。
「じゃぁ、遊も起きたみたいなので‥あたし寝ます」
カチャリッ
そぉ~っと、蒼の部屋を開ければ
前のめりになった2人が倒れ込んで来る。
「お、お母さん‥京子さんまで何やってるんですか」
えへへっ と言いながら蒼の部屋から出て行く。
一瞬、京子さんの顔が嬉しそうに微笑んだ。
あっ、あたし、京子さんって言っちゃったって‥‥思ったけど‥‥
なんだか、色々あり過ぎて、それ所じゃなくって
「お休みなさい」
そう言って、バタンッとドアを閉めた。
蒼の寝顔を見ながら‥‥色々あり過ぎてショートしそうな頭をプルッと振った。
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