スカートの中 12 類つく
あぁ、もうつくしの大安売りかい?ってぐらい五月蝿い。
どれくらい五月蝿いかって? 暇さえあれば__つくし、つくし言ってる感じって言ったら解って貰えるかな?
「今、仕事中です__」
「あい」
仕事の時は、邪魔せずに子猫のようにあたしの身体のどこかに引っ付いている。
柔らかな髪、ビー玉色の瞳で微笑みながら__
もう『邪魔っ』なんて思う時もあるけれど__大抵の場合、邪魔にならないから不思議な人だ。
ふぅっーーーー 仕事に一段落つけば
「はいっ」
珈琲が、日本茶が、ハーブティーが、その時欲しいなぁーと思ったものがあたしの前に出される。
これ、いつもすっごく不思議。
「ねぇ、類?」
「っん?」
「あたしの欲しいもの何で解るの?」
「__企業秘密」
企業秘密って__意味が解らないけど。
それ以上聞くのも面倒なので、まぁ、いいかっと思ってる。
何か秘策でもあるのかな?
それにしても、色々な事によく気が利く。加代さんの話では、普段寝てばかりで何もしないというのだけど‥‥‥ここにいる類は、気配りの達人だ。
ローズヒップとカモミール、ラベンダーがミックスされたハーブティーを飲みながら、カウチに体育座りをしながら背中をつける。背中がぽかぽかとなって,何だかとっても眠くなる
「はい」
類の膝の上を指差されて頭を乗せれば__類の膝の上は、とっても気持ちがよくて、直ぐさま眠りが訪れる。深—い、深い眠りにつく前の一瞬、頬が綻ぶほどの幸福感を感じる。
「スゥ__スゥ__スゥ__」
つくしの頭を撫でながら
「早く素直になって、好きだって認めちゃいなよ」
願いを込めて、この前読んだ睡眠療法を試してみる。
っん?どんなのかって?
呪文は一つ
『類が好き 類が好き たまらなく大好き』これを繰り返し耳許で囁くんだ。
効果のほど? 絶対ある筈だ。
あるまで続けるつもりだよ。
それにしても__このお嬢さんは、なんでこんなに頑なんだろうね?
だってさぁ、俺から逃げようがないんだよ?それなのに、なんでかなぁー
あっ、なんで逃げようがないんだって?
実は、つくし対外的に俺の婚約者って事になってるんだ。
えっ?って、驚いた?
クククッ、これも額の傷のお陰かな。
どうやってだって? 人聞き悪いなぁーー、それじゃ俺が無理やり騙したみたいじゃん。
断っておくけど、無理矢理じゃないよ。ほんのちょっと、ちょっとだけ、騙しただけだよ。
どうやってって? くくくっ 聞きたい?
じゃぁ、ちょっとだけだよ。
~~~~~
もうじき、もうじき、つくしがやって来る。
バタンッ
ホラッ、来た
「類,またちゃんと食べてないの?加代さん困ってたよ」
「つくしが、居なかったから__」
「居なかったって、一緒に暮らしてるワケじゃないんだし、あたしだってバイトもあるし色々付き合いだってあるんだから無理だよね?」
「じゃぁ、一緒に暮らせばいいじゃん」
「___っん?何を言ってるの?」
「何を言ってるって、パパさん、もうそろそろ転勤だろ?」
「うん‥‥」
「進は、転勤先の大学なんでしょ?」
「__うん」
「つくし、一人暮らしになっちゃうんでしょ?」
「__うん」
「だったらココで暮らしなよ」
「__うーん、それは、なんで?」
「つくしが居れば、俺は食事する。つくしは、家賃代がお得になる。ねっ、加代、そうだよね?」
助っ人加代が大きく頷いてから
「つくし様、これも何かの人助けだと思ってお願い致します。つくし様がご一緒に住んで下されば奥様も旦那様もご安心されますし_それに、まだ時折‥額の傷が痛むようなので」
ちょっと棒読み感が否めないけど、迫真の演技いいよ。
でもさぁ、額の傷が痛むって何? 別に痛まないよ_ねっ
「__類、まだ傷痛いの?」
つくしの黒い瞳が揺れる。
おっ、流石、加代ナイスだ。
「__あっ、うん‥‥でも、ほんのちょっとだから、それは気にしないで__ただ、痛みがある時に一人だとほんのちょっぴりだけ心細くなる___か‥な‥___あっ、でも、気にしないで」
寂し気に、つくしを見つめれば‥‥
「ご飯食べないってそれが原因?」
ご丁寧な事につくしの脳内劇場が始まる。
こうなったら、余計な事は言わずに‥‥‥
ウルウルと__つくしの瞳を見つめればいい。
クククッ
ポチッとお願いします♪

♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
- 関連記事