スカートの中 14 類つく
スゥースゥースゥー 幸せな幸せな眠りに落ちていく。
夢の中であたしは、誰かにむかって愛を叫んでる?
っん?
愛を叫ばれてる?
靄がかかって誰だかは解らない。
でも…….
「○○が好き ○○が好き 大好き」ってくぐもった声が聞こえるの
○ ○って誰だろう?
そうかぁーー
やっぱりあたしは、誰かと恋に落ちるんだ。って、この声を聞く度に思っちゃう。
うふっ うふふふっ
あたしは、幸せに浸りながら深い深い眠りに落ちていく。
一体どれくらいの時間眠ったのだろう?
パチリと目が覚めて「うーーーん」と大きな欠伸と伸びをした。
隣りを見れば類が眠っている。そぉーっと指を伸ばして、類の美しく唇に触れる。
「キスしてもいい?」
そう初めて聞かれた日の事を思い出す。出会って半年記念だと妙にはしゃぐ類に誘われて遊園地に行った帰りだった。
夕焼けに映る類の横顔がとっても綺麗で思わず見惚れた。瞬間、くるりとあたしの方に向き直って
「キスしてもいい?」
そう聞いて来たんだ。
夕陽に照らし出された瞳があんまりにも綺麗で......思わずコクンと頷いていた。
蕩けちゃうほど甘美で 〝甘酸っぱいレモンの味〟のファーストキスだった。
類のキスは、あんまりにも上手で……なんだか悔しくって、あたしのファーストキスだって教えていない。
そうあたしは……
キスも何もかも類しか知らない。
いや
哀しいかな……初めてのデートも類だもの。
手を握ったのだって、抱きしめられたのだって、類が初めてだ。
あっ、中学校の時にフォークダンスで一緒のクラスの男子と手は繋いだことあるけどね。
高3のフォークダンスは、何故か女子同士だったから……それ一回きりだ。
類は、きっと知っている。あたし以外の女性の身体を。
恋だって、愛だって知ってる。勿論デートだって行ってる筈だ。
でも……あたしは、何にも知らない。
知っているのは,類の事だけ。
だからあたしは,普通の恋がしてみたい。普通に手を繋いで、普通に抱きしめられて、普通にキスされてみたい。
なんで 〝 普通 〟に拘るかって?
類のもたらすものは、全てが極上だから……
だから
あたしは、普通の恋がしたい。
だから
あたしは、逃げるんだ。
「うーーーん つくし……」
寝ぼけ眼の類の手が、あたしに伸びてくる。
「ふふっ、俺、すっごく幸せ」
類のフレグランスがふんわりと漂う。あたしのとお揃いなのに類のフレグランスは、類の香りだ。
甘くて爽やかな柑橘系の香りとフローラルが混ぜ合わさった香り。
まるで……あたしのファーストキスのよう。
あぁ、もう……やっぱりなんだか悔しい。
あたしは、類に向き直ってホッペを抓る。
「痛—ひぃ……」
一声叫んだあとに、頬をさすりながら
「どうしたの?いきなり」
なんて聞いて来る。
ふーーーんだ。
ふーーーんだ。
唇を尖らせながら黙り込むあたしに
「コラッ、つくし。何拗ねてんの?」
「す、す、拗ねてなんかいないよ」
「じゃぁ、はい」
類の手が伸びてあたしを抱きしめる。スカートの中に手が伸びる。
だ、だ、駄目と思うのに……
極上の時間が訪れる。
ポチッとお願いします♪

♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
- 関連記事