イノセント 05 司つく
「あっ、ごめんなさい」
「ううん、俺がビックリさせちゃったから……だよね?やっぱり、戸惑わせちゃったよね」
雅哉は、申し訳なさそうな表情を浮かべながら必死に謝っている。
つくしは、雅哉をただただじっと見た後に漸く口を開く。
「雅哉さんには、変わりがないんだよね?」
「_勿論だよ。俺は俺だよ……それとも、少しは、変わった方が良いかな?」
少し戯けながらでも真剣な眼差しで雅哉がつくしに問えば、黒い瞳が雅哉を真っ直ぐに見据えて
「変わらない雅哉さんでいてくれる?」
「勿論だ」
雅哉が嬉し気につくしを抱きしめ二人の唇が重なる。
「__今日は、このまま帰したくない……良いかな?」
つくしの瞳が恥ずかし気に伏せられて、コクンと頷く。
雅哉がつくしの手を掴み店を出る。
タクシーの中でも雅哉の指先は、つくしの指先を掴んだまま放さない。二人を乗せたタクシーは、マンションの前に着いた。
「ここは?」
「俺の住んでる所__むさ苦しいかもしれないけど今日は、つくしちゃんに全部見てもらおうと思って」
ドアマンが会釈をしながらマンションの大きな扉を開ける。エントランスでは、待ち構えたようにコンシェルジュが雅哉に挨拶を交わしてくる。届いた郵便物を受け取りながらエントランスを通り抜けると、生体認証でオートロックドアが解錠される。
広い庭園に面してのシースルーのエレベーターに乗り込めば都会の喧噪を忘れさせてくれる。
立地や設備には目が見張るものがあったが、雅哉の部屋は割合と普通の広さの部屋だった。普通と言っても200平米程はある部屋なので、一人暮らしの雅哉が住むのには充分に広い部屋だ。
過去、つくしの周りに居た人間と比較すればこその話しだ。
「つくしちゃん、ようこそ」
照れ臭そうに雅哉が部屋の中につくしを誘う。
「お邪魔します」
靴を揃えながら、雅哉に向けて声を発する。
雅哉の指先が再びつくしの指先をフワリと掴む。
定期的にハウスキーパーが入っているのだろうか?部屋の中は、美しく清潔に整えられている。
「リノベーションは無理言って立川先生にお願いしたんだよ」
「やっぱり、そうだったんだ。とっても素敵。何よりも雅哉さんらしいお部屋ね」
にっこりとつくしが微笑めば、雅哉は相好を崩しながらプライベートルームを見せてくれる。
壁一面が書棚になっていて洋書から和書まで所狭しと並べられている。 書棚を背にイームズのタイムライフチェアと重厚なアンティークデスクが置かれている。
「他のお部屋も見させて貰っても良い?」
「どうぞ。飲み物用意しとくね」
つくしは、興味深く各スーペースを見て回る。無造作さも計算の上に設えてある。
まるで雅哉の性格を物語っているように。
ベッドルームを覗いた瞬間、雅哉に後ろから抱きしめられる。
耳に、雅哉の吐息がかかる。
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