月夜の人魚姫 50 総つく 完
蒼が起きて来るのを待って、3人で役所に提出した。
で、もって……3ヶ月後に目出たく婚姻の儀が執り行われた。
放浪の旅から__いや、仕事から帰ってきた暖さんも一ノ瀬家族と共に参加してくれた。
つくしは、幾つもの後ろ盾を背負って嫁いだ。
それだけでも凄いのに__
蒼もつくしも完璧だった。
口々に皆が、つくしを、蒼を褒め讃えた。
「若宗匠、こんな素敵な奥さんと息子はんがいらっしゃるなら何故もっと早く言わはりませんでした」
幾人もの重鎮にそう言われた。
蒼は、親の欲目を抜きにしても___慈愛の籠った茶を点てる。
「血には、逆らえないねー」
なんてケラケラとつくしが笑えば、皆も一緒に笑い出す。
いつの間にか邸の中には、つくしを中心に回ってやがる。
元々お袋等と仲が良かったつくしは、婦人会でも若手との間に立って動き回り、皆の信頼を勝ち取っている。
お陰で俺は、どこに言っても
「若宗匠がもっとしっかりしてたら、つくしさんがもっと早く今の西門にして下さっていたのにねー」
なんて陰口を__いいや、正面切って言われてる。
シレーヌを退社したつくしは、西門の経理も担当してる。
算盤弾きながら……
「失敗したよねぇー シレーヌの仕事__ただで一年契約なんてね」
なんて事を言ってやがる。
代わりに莢先生の書いた空気の精の原画を貰ったんだからチャラだろうよ。そう言えば
「へへっ、あれ多分......それ以上の価値があるみたいよ」
なんて笑う。
じゃいいだろう?と言えば
「だって、アレは遊と莢先生からのお礼で、お祝いだしぃー」
なんて口を尖らせてやがる。
じゃ余計チャラだろうよ。と言えば
「あぁー」
なんて一つ頷いて、俺の側にピトッと寄り添う。
「でもさ、シレーヌの宣伝のお陰で総、益々もてちゃってるんだもん」
なんて言いながら俺の脇を抓る。
俺の人魚は、
淫乱女で、ケチでガメつくって、嫉妬深くて、その上凶暴だ
だけど___
どうしようもない程に、俺はそんな女に惚れている。
惚れて、惚れて、惚れぬいている。
無性に泣きたくなるほどに惚れぬいている。
「つくし__好きだ」
そう言えば
ニッコリ笑って
「じゃぁ、来月は九州行脚だ」
なんて言いながらスケージュルをどんどこ埋めてく鬼マネージャだ。
蒼には申し訳ないが、どこに行くにもつくしに、一緒に居てもらってる。
大人な蒼は
「俺は、ババちゃん達から引っ張りだこだから無問題」
なんてケラケラ笑ったあと
「それに、俺には風花ちゃんがいるしね」
すげぇいい顔して言い切る瞳は、齢八つにして真剣そのものだ。
蒼の笑顔は、いいや蒼の全ては、底抜けに俺を幸せにしてくれる。
まぁ、それは___
俺だけじゃないみたいで、蒼ちゃん親衛隊なんてのが結成されてるけどな。
つくしは、算盤弾きながら
「蒼、凄いねー 蒼グッズとか出しちゃう?」
なんて、これまた冗談とも本気ともとれる表情でケラケラ笑って言いやがる。
キラキラと幸せで包み込まれる。
スッタモンダデ___あれから17年。
「父さん、母さん、あっ、いや家元、家元夫人、あっ、いや父さん、母さん」
「「ぷっ 蒼どうした(の)?」」
俺等二人に笑われて頭を掻きながら、西門の仕事の手伝いをしてくれている風花ちゃんを手招きする。
つくしの顔がワクワクと輝く
「俺、やっと風花にOK貰った」
その一言に、俺とつくしは手を取り合って喜んだ。
俺等二人には、蒼しか居なかったが
蒼と風花ちゃんは、俺等二人に沢山の家族をプレゼントしてくれた。
誰に似たのか金勘定の得意な長男波留は、一ノ瀬グループを継ぐことが決まり、遊さんの下頑張ってる。
芸術肌の長女の夏は、画家になり倉科を名乗り__4つ下の恋人を莢さん同様顎で使ってる。
つくしに良く似たケラケラ良く笑う次女の晶は 晩婚で子を成した暖さんの息子と結婚して竜崎の家に入った。暖さんは、殊の外に晶を可愛がって息子にヤキモチをやかれてる
で、もって俺にそっくりの末っ子次男の冬也は、西門を継ぐそうだ。誰に似たのかチャランポランな奴だが、茶だけは良いのを点てやがる。まだまだ腰を落ち着けねぇ恋をしていて、周りのもんに
「若宗匠、素敵な恋をしなはれ、そして若宗匠の本気で好きになった女子はんをみつけなはれ」
なんて言われてる。
そうそう、どうやら西門の嫁の条件には、後ろ盾てはいらねぇらしい。お互いにお互いを愛する事が出来、お互いの幸せを考えられる相手を選ぶに変わったらしい。
クククッ
あぁーー幸せだ。幸せだ。
当代きってのチャランポラン男は、
当代きっての幸せもんで
当代きっての愛妻家になった
あぁ、当代きっての幸せな愛妻家っつーのを極めさせて頂いたよ
完


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
3ヶ月弱、月夜の人魚にお付き合い頂き大変ありがとうございました。
強く美しいつくしになっていたでしょうか?
なっているといいなぁーなんて思いを込めながら
最後までお付き合い頂き大変有り難うございました。
asuhana
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