紅蓮 83 つかつく
全て筋書き通りだと。
司君、君ではつくしにこんな美しい花を咲かせられなかったろ?
蓮は泥の中にあってこそ初めて美しい花を咲かせる。泥がなければ美しい蓮花を咲かせられない。
蓮は、泥の中で根を伸ばし蓮花を咲かせる__美しい美しい蓮花を。
アメリカの友人から設楽を紹介されたのは、もう彼此れ2年程前のことだ。
優雅な身のこなしといい、人懐こい笑顔といい人を惹き付ける力をもつ男だった。
いや、違う。
そんなものに惹かれたワケじゃない。
設楽の持つ闇に惹かれた。
闇を持つものにしか嗅ぎ分けることの出来ない闇に。
男と何度かやり取りを交わす内に
「宗谷さんは、完璧な伴侶が作られたいと思いませんか?」
唐突にそう問われたのだ。完璧な伴侶?と聞き返せば
「気高く美しく男を惑わす妖婦ですよ」
何ともないことのように言葉を返したあとに、奥様を〝躾け〟てはどうかと言うのだ。
躊躇いが生じた瞬間___
「僕の愛する妻は、事故に合い死にましたよ__」
設楽に関する報告書には、妻帯者だと記されていた筈だ。学生時代からのカップルでベストカップルにも選ばれた事のある相手だと記載されていた筈だ。
男の目を見る。何も映さないかのようなただただ黒い空洞が広がっていた。
私の視線に気が付いたのか、いつもの人懐こい笑顔に戻り
「クククッ__冗談ですよ。冗談。ただ、今僕に寄り添っている妻には、事故のショックで記憶が失われていますがね。それに……顔を怪我したので僕好みに顔を少々弄らせて貰ってますけどね」
冗談とも本気ともわからない事を笑いながら話す。
得体の知れない恐怖と共に、この男ならば私の望む〝聖女〟を完成させてくれるのではないかと感じた。
設楽からの課題は、飴と鞭。
正しく__飴と鞭だった。快楽と共に苦痛を与え、苦痛と共に快楽を与える。少しずつ少しずつ身体を精神を馴れさせて、より深く快楽と苦痛を与える。
そして
自由を一つ一つ奪い取っていく。
時間の、行動の自由を奪い。全てを管理する。
奪って、奪って、奪いつくし、歯向かえば罰を与える。
肉体改造もその中の一つだった。
__祖父の手によって美繭の身体にも施されていた〝所有の証〟美繭と同じ様につくしの身体にも〝所有の証〟を施した。
決して消えはしない〝所有の証〟は、私への反抗心を募らせる。共に畏怖の念を植え付けた。
時折、見逃す様に自由を与えた。
ほんの小さな自由を......
子供が口の中であめ玉を転がすかの様に大事に大事に味わう様を愛おしく眺めた。
そして__奪う。
喜びの後の哀しみは、確実につくしの中の反抗心を奪って行く。どうせ何をやっても無駄なのだと。
畏怖の念だけが育っていく___つくしの心で大きく大きく。
柵と畏怖の念でつくしは、逃げるチャンスがあっても逃げれなくなる。
満を持して設楽は、私達の元へ現れた。
つくしの良き理解者の仮面を被って____
優しい笑顔で、心地よい言葉でつくしの心を思いのままに操っていく。リラックス療法と偽り、催淫効果のある香りと共に暗示をかける。
設楽に心を開け放したつくしは、面白い程に暗示にかかっていく。自ら進んで____
最後の仕上げが今回だと設楽から連絡が入った。
不自然に見えない様に道明寺さんの周りには、餌を撒かせて頂きました。宗谷さん、その餌にどうぞ思う存分食いついて下さいと__怪しまれない様に、隙を作って下さいと。
つくしの身体を司君に抱かせるのだと設楽が言った。
その言葉に一瞬、耳を疑った。
何故だと問えば__
「肉を切らせて骨を断って下さい」
説明を求めれば__
「彼女に悟らせるのですよ。全て無駄なのだと。逃げても逃げても心の中の魔物からは逃げれないと。雁字搦めに囚われた心は、身体は、もうどこにも飛び立てないのだと。そして、それが己で選んだ自由なのだと。___それに、上手くいけばあなたが望むものも手に入るかもしれませんよ。まぁ、先ずは道明寺さんのお手並み拝見といきましょうか」
楽し気に言ったあと
「そうそう、戻って来た彼女にはこの上ない恥辱を与えてやって下さい___クククッ そうだなぁ、二階堂氏につくしさんを抱かせましょうか?」
「二階堂に?」
「__えぇ、丁度いいでしょ」
高笑いを残して電話が切られた。
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