イノセント 11 司つく
男は、女を見かけた日にそんな事を思った。
直ぐさまに女の現状と一緒に居た男の素性を調べ上げさせた。瞬時に判断を下し男の稼業に罠を仕掛けた。
同時に、女の住む部屋に忍び込ませパソコンを遠隔操作出来るようにさせた。
流石、天下の道明寺___裏の世界にも精通しているのだろう……僅か2時間ほどで全ての手筈が整えられたのだ。
あの日から……つくしの行動は全て見張られている。
男の頭の中を 牧野つくし が占めていく___
何のバックグランドもたない女があの時と同じ様に、今回も上層階級の男と一緒にいる。大人しそうな顔をしながらどんな手を使って男を籠絡しているのだ?ギリギリとするものが司の胸に流れ込んで来る。
同時に
あの女は、どんなよがり声をあげ啼くのだろう?
どれほど淫らにベッドの中で振る舞うのだろう?
あの女を征服したい__その一点に意識が集中していくのだ。
カチャカチャッ
ベルトを外し、怒張した一物を目の前の女の穴に挿れながら昂った性欲を処理する。
パン パン パン
男が乱暴に腰を打ち付ける音が谺する。
逝く瞬間___
女の顔が過る。
立川の後ろに隠れる様に立っていた牧野つくしの顔が。
男の顔には、倒錯した思いが笑いが広がっていく。
目の前の女は、自分に向けられた微笑みだと勘違いして男にしなだれかかれば……
「とっとと、消え失せろ」
男の冷たい声がする。
続きの間にいた秘書がアフターピルを女に飲ませ札束を渡して帰らせている。
男は、女の痕跡を消すためにシャワーを浴びる。つくしを思い出し鼻唄まじりに……
髪を拭きながらベッドに腰掛け女の部屋に仕掛けられた盗聴器の声と女を映した映像を流し見る。
何と言う事のない日常がただ映っているだけなのに__気が付けば食い入るように見ている。
つくしの持つスマホにもいつの間にかハッキングが行われ乗っ取られていた。位置情報からメール、果ては会話まで。
雅哉とのやり取りを報告書と共に聞く。つくしをこの男と幸せなどにするものか__ギリギリとした思いで苦虫を噛み潰した。
黒い邪な考えを思いつき……笑みが出る。美しくも残忍な笑みが司を包む。
司は、気が付いていない__ギリギリとしたその思いが嫉妬だと言う事に。
愛を忘れてしまった男には、この思いが愛だとは気が付かないのだ。
今も心の奥底でつくしに恋し焦がれている事を__死ぬ程に愛していると言う事を気がつかないのだ。
この男の胸に広がっているのは、面白い玩具を見つけたという思いだけ。
どうやって手に入れるか?
どうやって屈服させるか?
その事を考えるとこの上ない昂揚感が沸き起こる。
愛し方を忘れ去ってしまった男には、気に入った玩具を手に入れ思い通りに弄ぶ。そんな黒く邪な考えしか思い浮かばないのだ。
音声から雅哉がつくしへ愛を囁く声が流れている。その声に答えるつくしの声がした瞬間
ガッシャーン__手にしていたグラスを鏡目掛けて投げつけていた。
男の胸に黒い闇が渦巻いていく。
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