イノセント 17 司つく
絡み合った視線を見た瞬間……青い炎が司の心に点火する。
ギリッ ギリリ
面談の時間が終わりを告げ、雅哉がつくしと部屋を出ようとした瞬間__
「牧野に聞きたい事があるので少し残って貰えるか?」
司から声がかかる。内心、驚きながらも他の者に悟られない様につくしは、返事をした。
雅哉が名残り惜しそうにつくしを見て、束の間交わせられる瞳と瞳。
ギリッ ギリリ
司の胸に醜い炎が燃え上がる。
「あの__社長……どんなご用件で」
「あっ、いや__ここの箇所で少し聞きたい事があるんだ」
デスクの上にパース画が広げられる。
「どこでしょうか?」
2人の指先が触れあった__つくしが慌てて触れた手を引っこめる。
「す、す、すみません……」
手を引き抜いた瞬間に……つくしの腕時計がチラリと見えた。__胸を締め上げる様な苛立たしさが司を襲う。
ギリッ ギリリ
戻って来た大迫が次の予定を司に告げる。2人の会話が途切れるのを待ちつくしが退室の旨を伝えると
「オイッ 待て」
司の尖った声がして、ビクンッとつくしの身体が震えた。
「なんでしょうか?」
「色々まだ聞きたい事がある。今日はここで待機しろ」
微かにつくしの瞳が揺れる。それを見た司の感情は、イライラと苛立つ。
ギリッ ギリリ
苛立ちの炎が燃える。
「__あの…..他にも仕事が」
「大迫の後ろにつけ」
その一言だけが発せられ抗議の言葉は宙に浮く。その日一日大迫の後ろにつくしが控える事になった。
つくしの心には、横柄な司に対して不愉快と不可解な気持ちが生まれる。
大迫の後ろに付いたからと言って、秘書の仕事も勝手も皆目解らないつくしに何が出来るわけでもなく…..無意味で長い一日が過ぎて行く。ただただ過ぎて行く。
「はぁっーー」
小さな小さな溜め息が口を出る。何度も何度も腕時計を見る。終業時間まで__あと2時間、あと1時間、あと30分。あと5分。4、3、2、1......ようやっと帰れると思った瞬間、大迫から声がかかる
「牧野さん、残業になりますがこの後の会議にも同席して下さい」
仕事だと言われれば断れる筈もなく……頷くしかない。
それでも、幾つかの意見を求められれば同席する意味もあるが意見を求められるどころか、都市開発に関係ない話しがされているのだ。
大迫の後ろでにこやかに挨拶を浮かべながら溜め息と欠伸を噛み締める。会議が終わりを告げ、ようやっと帰れるそう思った瞬間__今度は、司から声が掛かる。
「牧野、この後さっきの続きを説明して貰おうか」
チラリと時計を見ながらつくしが頷いた。
___つくしが時計を見た瞬間
ギリッ ギリリ
心の中に音が鳴る。
醜い感情が心の中を支配する。
ギリッ ギリリ
ギリッ ギリリ
ギリッ ギリリ........................


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
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