ヒーロー 前編 いつかあなたと......番外編
昔、むーかし__私のパパは、英雄だった。
顔も知らないパパだったけれど__ママのお話の中のパパは、いつも飛っきりにかっこ良くて優しくて__私にとってヒーローそのものだった。
初めてパパに会った日__パパは、あたしをヒョイと抱き上げて大きな大きなホテルのお部屋に連れていってくれた。
大きなベッドに3人で眠った。朝起きたらパパとママと私の3人でとってもとっても幸せな気分だった。
お口の中でキャンディーが溶けていくようなとってもとっても幸せな気分だった。
あの日から__10年。
翌年、弟の陽が生まれて家族が1人増えた。この頃、ちょっと生意気になちゃったけど__名前の通りお陽様が良く似合う弟は私の宝物だ。毎日、毎日元気いっぱいに屋敷の外を駆け回っている。
私……道明寺マリアは、パパやお婆ちゃま、お爺ちゃまに溺愛されている。
正しく溺愛__この言葉がピッタリなほどに愛されている。
お婆ちゃまは、かの昔 【鉄の女】と呼ばれてたらしい。
今? 今は___【溺愛の女王】だ。お爺ちゃまと競い合うかのように、私と陽とママをこよなく愛してくれる。
笑顔が良く似合う溺愛の女王は、時折、ママに嗜められている。
「お母様、こちらにお出でになる際の手ぶらで来るのお約束お守り下さいね」
プレゼント魔のお婆ちゃまは、しょんぼりしながら頷いている。でも__翌週も手に沢山のプレゼントを抱えてやってくる。誰かに用意させるんじゃなくて、行った先々で少ない時間をやり繰りして買ったプレゼントを両手で抱え切れないほど持ってやってくる。
高価なものだとママに怒られるから__この頃は、色とりどりのお菓子の詰め合わせだったり、素敵な絵の書かれた絵本だったりしてる。
パパ?
ヒーロー形無しなほど__ママと陽と私を溺愛してる。屋敷に居るときは、ママの側を片時も離れないと決めているかのようにママの側を離れない。
半世紀生きてきた俺様だとは思えないほどに。ママの側にいるパパはデレデレだ。
時折、桜子ちゃんを筆頭に、類君、お家元、美作のおじちゃまが遊びにやって来る。
パパは、ママに次いで桜子ちゃんに頭が上がらない。ママ曰く__桜子ちゃんには、一生の借りがあるんだって。
週に一度__私は藤堂の屋敷を訪れる。ジョアンのマミーとパピーに会う為に。
もうじきジョアンが日本にやって来る……嬉しくて嬉しくてたまらない。
昨日の夜、パパに
「マリアは、このところ随分とご機嫌だな?何か良い事あったか?」
なんて聞かれたばかりだ。
頭の良い私は、ジョアンが来るからご機嫌なんだなんて教えない。
なんでかって? もとヒーローさんがダークヒーローに変わらないと限らないでしょ?って__よく解らないけど__桜子ちゃんが教えてくれた。パパの前では、男の子のお話しを特にジョアンのお話を嬉しそうにしちゃいけないんだって。
だから、ジョアンのお話は、ママと桜子ちゃんに沢山沢山聞いて貰う。
だって__
ジョアンのお話をしていると、心の中がほんのりと温かくなるの。幸せで幸せで温かくなるの。
この気持ちは、何なんだろう? そう聞く私にママと桜子ちゃんは決まってこう言うの
「マリア、素敵なレディになりなさい」
って。そして__二人でクスクスと笑うの。
ジョアンが来たらこの気持ちの正体がわかるのかしら?
***
ジョアンが好き。そう気が付いたのは__17の秋だった。
気が付いた瞬間___彼は私の私だけの英雄になった。
ジョアンの何気ない一言が私の心を上下させる。
天国と地獄
幸せと絶望感
波のように交互に訪れる
ジョアンのパパや静ちゃんは、私を大好き。
うんプラス1ポイント。
マミーもパミーもジョアンと同じくらい私を大好き。
プラス1ポイント。
藤堂のお屋敷の中の事は、すごく詳しい。庭師の茂吉さんから、新しいメイドのヒロちゃんの事まで全部知ってる。
プラス1ポイント。
っん? これは__ポイント加算されない?
あっ、フランス語なら任せて!ジョアンの母国語で、あ、あ、愛は語り合える
あっ!でも......ジョアンは、日本語は勿論英語もイタリア語も中国語も流暢に使いこなすんだった。
はぁっーー
あっ私、ヒーローの娘。
うんうん。プラス1ポイント。
「司さんって怖いよなー。マリアの所に遊びに行くと毎回ジロッと睨むんだよな_」
パパの大バカ……
プラスどころか、マイナス5ポイント
はぁっーーー
プラスマイナス0どころか、マイナスだ。
鏡の中の私を見る。
ジョアンが好きだって言ってた女優さんの顔を浮かべながら__
くぅっーー完全に色っぽさが負けてる。
はぁっーーー溜め息を吐く。
降り積もる、降り積もる__私の心にジョアンへの思いが降り積もる。
ジョアンは、男の人にも女の人にもモテモテで……いつでも沢山の人に囲まれている。
私を見つけると
「マリア!」
そう呼びながら駆け寄ってきてくれるけど、私のお願いならどんな事も聞いてくれるけど……
「マリアは、可愛い俺の妹だからな」
そう言って笑うんだ。
私のヒーローは、残酷だ。
この言葉を聞く度にちょっぴり涙が出そうになる。上を向いて
「じゃぁ、明日の日曜日お買い物に付き合ってね。ジョアンお兄ちゃん」
私は、私の特権を目一杯使ってジョアンの腕に抱きつきながらお願いする。
ズルイなって__思いながら。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥

♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
顔も知らないパパだったけれど__ママのお話の中のパパは、いつも飛っきりにかっこ良くて優しくて__私にとってヒーローそのものだった。
初めてパパに会った日__パパは、あたしをヒョイと抱き上げて大きな大きなホテルのお部屋に連れていってくれた。
大きなベッドに3人で眠った。朝起きたらパパとママと私の3人でとってもとっても幸せな気分だった。
お口の中でキャンディーが溶けていくようなとってもとっても幸せな気分だった。
あの日から__10年。
翌年、弟の陽が生まれて家族が1人増えた。この頃、ちょっと生意気になちゃったけど__名前の通りお陽様が良く似合う弟は私の宝物だ。毎日、毎日元気いっぱいに屋敷の外を駆け回っている。
私……道明寺マリアは、パパやお婆ちゃま、お爺ちゃまに溺愛されている。
正しく溺愛__この言葉がピッタリなほどに愛されている。
お婆ちゃまは、かの昔 【鉄の女】と呼ばれてたらしい。
今? 今は___【溺愛の女王】だ。お爺ちゃまと競い合うかのように、私と陽とママをこよなく愛してくれる。
笑顔が良く似合う溺愛の女王は、時折、ママに嗜められている。
「お母様、こちらにお出でになる際の手ぶらで来るのお約束お守り下さいね」
プレゼント魔のお婆ちゃまは、しょんぼりしながら頷いている。でも__翌週も手に沢山のプレゼントを抱えてやってくる。誰かに用意させるんじゃなくて、行った先々で少ない時間をやり繰りして買ったプレゼントを両手で抱え切れないほど持ってやってくる。
高価なものだとママに怒られるから__この頃は、色とりどりのお菓子の詰め合わせだったり、素敵な絵の書かれた絵本だったりしてる。
パパ?
ヒーロー形無しなほど__ママと陽と私を溺愛してる。屋敷に居るときは、ママの側を片時も離れないと決めているかのようにママの側を離れない。
半世紀生きてきた俺様だとは思えないほどに。ママの側にいるパパはデレデレだ。
時折、桜子ちゃんを筆頭に、類君、お家元、美作のおじちゃまが遊びにやって来る。
パパは、ママに次いで桜子ちゃんに頭が上がらない。ママ曰く__桜子ちゃんには、一生の借りがあるんだって。
週に一度__私は藤堂の屋敷を訪れる。ジョアンのマミーとパピーに会う為に。
もうじきジョアンが日本にやって来る……嬉しくて嬉しくてたまらない。
昨日の夜、パパに
「マリアは、このところ随分とご機嫌だな?何か良い事あったか?」
なんて聞かれたばかりだ。
頭の良い私は、ジョアンが来るからご機嫌なんだなんて教えない。
なんでかって? もとヒーローさんがダークヒーローに変わらないと限らないでしょ?って__よく解らないけど__桜子ちゃんが教えてくれた。パパの前では、男の子のお話しを特にジョアンのお話を嬉しそうにしちゃいけないんだって。
だから、ジョアンのお話は、ママと桜子ちゃんに沢山沢山聞いて貰う。
だって__
ジョアンのお話をしていると、心の中がほんのりと温かくなるの。幸せで幸せで温かくなるの。
この気持ちは、何なんだろう? そう聞く私にママと桜子ちゃんは決まってこう言うの
「マリア、素敵なレディになりなさい」
って。そして__二人でクスクスと笑うの。
ジョアンが来たらこの気持ちの正体がわかるのかしら?
***
ジョアンが好き。そう気が付いたのは__17の秋だった。
気が付いた瞬間___彼は私の私だけの英雄になった。
ジョアンの何気ない一言が私の心を上下させる。
天国と地獄
幸せと絶望感
波のように交互に訪れる
ジョアンのパパや静ちゃんは、私を大好き。
うんプラス1ポイント。
マミーもパミーもジョアンと同じくらい私を大好き。
プラス1ポイント。
藤堂のお屋敷の中の事は、すごく詳しい。庭師の茂吉さんから、新しいメイドのヒロちゃんの事まで全部知ってる。
プラス1ポイント。
っん? これは__ポイント加算されない?
あっ、フランス語なら任せて!ジョアンの母国語で、あ、あ、愛は語り合える
あっ!でも......ジョアンは、日本語は勿論英語もイタリア語も中国語も流暢に使いこなすんだった。
はぁっーー
あっ私、ヒーローの娘。
うんうん。プラス1ポイント。
「司さんって怖いよなー。マリアの所に遊びに行くと毎回ジロッと睨むんだよな_」
パパの大バカ……
プラスどころか、マイナス5ポイント
はぁっーーー
プラスマイナス0どころか、マイナスだ。
鏡の中の私を見る。
ジョアンが好きだって言ってた女優さんの顔を浮かべながら__
くぅっーー完全に色っぽさが負けてる。
はぁっーーー溜め息を吐く。
降り積もる、降り積もる__私の心にジョアンへの思いが降り積もる。
ジョアンは、男の人にも女の人にもモテモテで……いつでも沢山の人に囲まれている。
私を見つけると
「マリア!」
そう呼びながら駆け寄ってきてくれるけど、私のお願いならどんな事も聞いてくれるけど……
「マリアは、可愛い俺の妹だからな」
そう言って笑うんだ。
私のヒーローは、残酷だ。
この言葉を聞く度にちょっぴり涙が出そうになる。上を向いて
「じゃぁ、明日の日曜日お買い物に付き合ってね。ジョアンお兄ちゃん」
私は、私の特権を目一杯使ってジョアンの腕に抱きつきながらお願いする。
ズルイなって__思いながら。
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