ヒーロー 後編 いつかあなたと......番外編
「司さん、マリアをマリアを宜しくお願いします」
そう頼まれた。
9つのガキにだ。ってか、俺親父だ。
宜しくもなにも無い__そう思ったけど、奴の瞳があんまりにも真剣で
「おぉ 分かった」
不覚にもそう頷いちまってた。
ジョアンは、サマーバーケーションの時期になると静の実家にやって来る様になった。
いやっ、それは仕方ない。なんせ奴は藤堂家にとって大切な孫息子だ。
面白くないのは、奴が静に似て非の打ち所がないって所だ。容姿も品性も勿論だが、何よりもこうと決めたらやりぬく強さを持っていた。
12の年、奴は株の売買を始めた。未成年の投資家は売り買い出来る範囲が限られている。バイヤールの爺さんを使っていっぱしの投資家になっていった。
奴の動向を探ってる俺にも、かなりの収益が出たくらいだ。
15の年、奴は会社設立を果たした。その名もM&Jだ。マリアとジョアン___と来たもんだ。
これまた……憎らしい事に株式上場を果たしやがった。でもって、俺はそこの大株主だったりもする。
次に奴は、静が捨てた柵を、俺が捨て去りたかった柵を__自ら進んで手に入れた。
奴が参入した事で藤堂グループは、飛躍的な躍進を続けている。全くもって気にくわねぇ。
付け入る隙がない。全てが完璧だ。
そんな奴のたった一つの弱点が___マリアだ。
マリアは、まだ気が付いちゃいないが……奴のたった一つの目標でたった一つ手に入れたいもの__それがマリアだ。
マリアの全てに一喜一憂しながら愛おしそうにマリアを見てやがる。
俺の睨みなんて奴にとっては、何てことないのも気にくわねぇ。まったくもって出来過ぎだ……
で、で、で、なんだなんだ?マリアはまだ20才だぞ?
なんだなんだ
「司さん、マリア、あっ、マリアさんと結婚を前提にお付き合いさせて下さい」
ちょっとつっかえながら__好青年丸出しで俺の睨みなんて気にもせずに、キッパリと言い切った。
いつか、いつか来るとは覚悟していた。でもなぁ、マリアはまだ20歳だ。ようやっと20歳だ。
「お願いします」
「却下」
「困ります」
「しらなねぇ、却下は却下だ」
「困ります」
幾度も幾度も同じやり取りが続いた後に___
「司さん、お願いです。じゃないと俺__マリアと駆け落ちしなきゃなんなくなります」
「はぁっ?駆け落ち?」
困り果てた顔でジョアンが大きく頷いて……
今日着てたドレスをつまらねぇ嫉妬心で似合わないと言った話しから___責任を取る取らないになって、どこをどうなったのか、駆け落ちをしろと迫られたらしい。
まぁ、なんだ、俺が周りが許さなかったら、2人で駆け落ちしろと。さもなければ嫌いになると脅かされたらしい。
「ぷっ、じゃ、なんだ?お前マリアにもう既に頭が上がんねえのか?」
そう聞けば
「司さんも、つくしちゃんに頭上がんないですよね?」
シレッと言って来る。どうやら、コイツが恐れているのは、マリアの愛情を失う事だけらしい。
奴は、マリアの為なら全てを捨てる覚悟があるらしい。それこそ命さえもだ。羨ましいくらいに真っ直ぐに。ただただ真っ直ぐに、
「いやっ、どうしてダメもなら、やっぱり駆け落ちしかないですかね__はぁっーー。類さんと達が司さんからばっちり消息は消すから心配するなって…..だから、やっぱり認めてもらえないと」
ブツブツブツブツ言い出してる。
どうやら俺以外の人間には、マリアが全部話しを付けたらしい。
で、で、で、俺が許さなければ俺だけ仲間はずれにするらしい。
「なんで、なんでどうかお願いします」
目の前の好青年って奴に懇願されて___
いいや、マリアの策略に乗せられて許しちまった。
2年後__真っ赤な目を腫らして
「ジョアン、マリアをマリアを宜しくな」
そう言う羽目になっていた。
アイツの真剣な瞳を見た瞬間、覚悟はしてた筈なのにな。
マリア、お前のお前だけのヒーローと幸せに幸せになれな。
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