明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

ずっとずっと 56

少女のすすり泣く声がする。
あなたは誰?
どうしたの?
何を悲しんでるの?
声をかけようとした瞬間
いつもそこで目が覚める‥…

あたしはいつの間にか泣いていたようだ。
そっと隣を見る。
薫がスヤスヤと寝息をたて寝ている姿に安堵し、
そっとベッドから這い出る。

カチャっ
部屋を出ようとした瞬間‥…
「っん?つくし‥…どこに行くの?」
「ゴメンなさい。起こしちゃった?ちょっと子供達を見てくるわ。」
「うん」

部屋を出て,子供部屋へ向う。
可愛い子供達の寝顔をみて、お布団を掛け直し、おでこにキスをする。

そっと部屋を出る‥…
一瞬‥…そう一瞬だけど、ここから逃げ出して、このままどこかに行きたくなる。
逃げ出す? なんでそんな事を思うのだろう。

誰もが魅了されるような素敵な夫と、可愛い子供達。
それなのにあたしはどこに逃げたいと言うのだろう‥…

窓辺に佇み‥…あいつを思う。
外に、ポツリポツリと雨が降り出したようだ。

「奥様‥…寒くなって参りましたから、お部屋にお戻り下さいませ。」
執事の鵣川に声をかけられ、寝室に戻るように促される。
いつからあたしを見ていたのだろう?

邸の中でさえ、あたしには自由はないのだろうか?
あいつを想い、涙する自由さえ‥…

寝室に戻ると、切なげな顔の薫が待っていた。
この人は、いつになってもこんな顔をしてあたしを待つ。
この人は、あたしを愛してくれている。
この人の狂気を止められるのはあたしだけ。

あたしは、薫を抱きしめキスをする。



***

突如決まったNY。
課題をこなしたり、大学で慌ただしかったここ数日、
今日が何日なんて事をすっかり忘れて過ごしていたあたし‥…


「つくし、用意はできた?」
「うん。」
「大丈夫だよ。筒井のお爺様達も同行するから。」
「‥…うん。」
あたし達4人を乗せたプライベートジェットは、ニューヘイブンに向けて飛び立つ。



「しぃちゃーん 薫~」
嬉しそうに亜矢さんと棗さんがあたし達を出迎えてくれる。

亜矢さんのいる空間はとても温かく落ち着いて、何だか泣きたくなってくる。
NYを、あいつを感じる場所だから? 
知らない内に‥…あたしの頬に雫が落ちていた。

亜矢さんは、
「しぃちゃん、うふっ、つみれのお鍋シェフと一緒に作ってみたの。あとで皆で食べましょうね」
そう言って、あたしを軽く抱きしめて下さった。

亜矢さんの側にいると、とてもとても心が軽くなっていくのが解る。
ニューヘイブンに来るのを躊躇っていた心がほぐれ、来て良かったと心から思えた瞬間だった。


***

シェフと亜矢さんが作って下さった鰯のつみれはとても美味しくて、皆で笑いながら食べ合った。
あたしが美味しい美味しいを連発するものだから、シェフも亜矢さんもとっても得意げで、その表情が可笑しいと棗さんが笑い、棗と薫がそんなに笑うなんてと、つぅ爺と、雪乃さんが笑う。
「つくしが美味しく食べる姿は皆を幸せにするね」
薫に言われ、
あぁーあたしみんなに沢山心配かけちゃったんだとあらためて思った。

カウチで寛ぎながら 棗さんご自慢のコーヒーを頂く。
亜矢さんが、桜色のアルバムを持ちながら
「あのね、見て頂きたい物があるの。いいかしら?薫もいいかしら?」
「うん。」
薫が頷く。

亜矢さんが見せてくれたのは、幸せそうな夫婦と赤ん坊の写真。
美しい女性が赤ん坊をあやす姿。
幸せの象徴のような3人の姿。


お七夜の写真だろうか? 
今よりもかなり若い4人とともに写っている若夫婦と薫
お宮参り、お食い初め、初正月、初節句‥…
1才の薫がお餅を背負って泣いている。見守る6人の大人達。
水遊びをする薫、お庭で楽しそうに遊ぶ薫、色んな薫

「薫‥…可愛いね」
「うーん、恥ずかしいね」

ページをめくる
2才のお誕生日
3才のお誕生日
4才のお誕生日
その先がない写真

亜矢さんが手を止め
「薫が4つの時に、私達の大切な息子と娘が亡くなったの。」
「薫から聞いたのかしら?」
頷くあたしに
「そう。薫から話せたのね?」
「はい。お婆様」
「薫、良かったわね。話せる相手が見つかって‥…」
薫が頷く


「‥…薫はね、この子達が亡くなった時、まだ4つだったの。偶然の不幸が重なった事故だったのに、幼いルゥちゃんは、ルゥちゃんを庇って亡くなった両親の死を自分のせいだと思ってしまったの。ルゥちゃんのせいなんかじゃないのにね」

「まだ幼いルゥちゃんは、食べ物を受け付けなくなってしまったの。水分とほんの少しのスープと、毎日の点滴でルゥちゃんは生きたの。私達はただ一人残された希望をまた失ってしまうのかと考えて、夜寝るのが怖かった。その頃の私達4人には、絶望しかなかったの‥…」

「伊織と由那ちゃんが大好きだった天橋立の別荘に、薫とあたし達は行ったわ。薫にあの2人が大好きだった景色をみせてあげたかったの。天に登る橋はあるんだよっだからここにいてって。見せてあげたかったの。」
少し涙ぐみながらも、くすりっと楽しそうに笑いながら
「雪乃さんと2人でまた覗きしたのよ? うふっこれも聞いたかしら?」
「それからかしら‥…この子は生きるために食べ物を食べてくれるようになったの。私達4人は神様に感謝したわ。ルゥちゃんを私達から奪わないでくれて有り難うと。」

「でもね、私達の前では楽しい振り、美味しそうに食事をたべるふりをしてくれていたけど、ルゥちゃんは心の底から笑った事なんてなかったわ。」
「悠斗君に出会ってルゥちゃんは変わった。楽しむ事に苦痛を感じなくなったのかしらね?自然な表情で笑えるようになったのもこの頃からね。」

「薫が本当に変わりだしたのは、 雪月堂さんに買い物を頼んだ年だから、薫が日本に帰る一年前の春かしらね?」
「私ね、薫の目に希望の光をみたの。私の心は喜びで震えたわ。」
「でもね、ずーっと不思議だったの。何が薫を変えたのかしらって‥…」

「しぃちゃん あなただったのよ。薫にもう一度生きる喜びを思い出させてくれたのは‥‥」

「亜矢さん‥…」

「薫はあなたに会って本当に楽しそうに笑うようになったのよ。」
「しぃちゃん、ありがとう。本当にありがとう」

亜矢さんの目に涙が光る‥‥


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6 Comments

asuhana  

Re: タイトルなし

匿名さま
こんばんは♡コメント有り難うございます。楽しみにして頂いてありがとうございます。



王道である、司つくCPとは異なったりします。ゴメンナサイかな? ‥… 花男2次にハマったasuhana。つくしが他の人と結婚しちゃったらどうなるの?の妄想で始まった、ザ・妄想劇場昼ドラ24時なんです。
asuhana.出来上がって、通読するのが目下の楽しみでして。。なんで薫はメッチャいい男にしちゃいました。

あります。ありますよー どんな気持ちになるのか〜? 実は私の好物‥…司の嫉妬心(えへっ)
気になって是非妄想してみて下さい。

2015/12/17 (Thu) 19:36 | EDIT | REPLY |   

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2015/12/17 (Thu) 18:40 | EDIT | REPLY |   

asuhana  

Re: チラリズム

ぐふふっ、楓さんのはスピンオフは難しそうだから、ちょいちょい登場して頂こう。
(1話分埋めれないぃー)
月9凄いんでしょう〜 くくっ

ぐふふっ、いまね、 もう一つの物語 〜神楽悠斗〜 書いてるよぉーーー
ユト君いい奴だよ。本当に。薫、悠斗がいて良かったね。だよ〜

2015/12/14 (Mon) 16:59 | EDIT | REPLY |   

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2015/12/14 (Mon) 15:58 | EDIT | REPLY |   

asuhana  

Re: こんばんは(*´-`*)ノ

yukikoさま
こんにちは♡いつもありがとうございます♪
ひゃーもう一度読み直してくれてるなんて有り難いです。
切ないですよね。別れが決まってるから、2人がラブラブな時も切ないですよね。
だって、あたしも切なくなりますもん(笑)

楽しみに思ってくれて本当に有り難うございます♡ チュッ←いらんがなぁーーーでしょうが、受け取ってね〜(爆)

つくしちゃん、自分で決めた事はやり通そうとする子。それが良い方向にいく事も、裏目に出る事も‥…
じゃないと、昼ドラになりませんしね(笑)

そうそう形は違えど
幸せな瞬間と絶望を感じる瞬間。 
初めて恋をしたあの頃って、そんな気持ちのいったりきたりじゃありませんでした?

2015/12/14 (Mon) 15:45 | EDIT | REPLY |   

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2015/12/14 (Mon) 02:13 | EDIT | REPLY |   

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