明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

baby’s breath 総つく

雑踏の中__全てを忘れて

「好きだーーー行かないでくれ」

ありったけの大きな声で男は叫んでいた。

声の先にいた女の持っていた荷物がバサッと音を立て落ちる。女が振り向き嬉しそうに近づいて来る......男は女に手を伸ばし胸に抱く__愛おしい女を胸に抱く。



「__ズズッ….ッスン….ズズッ……」

泣いてる女ににティッシュを渡せば、真っ赤に充血した瞳で一つ頷いて

「__あぢがとぅ……ズビーッ_チーン」

鼻を噛む。

ドラマの中では、最高潮に美しい愛が奏でられている。
隣りの女は、ズビーッ、チーンと鼻を擤んでいる。

「すんっ__ズズッ__良かった。良かったね。この2人結ばれて良かったよね。ねっ!」

鼻を啜り上げながら一生懸命に俺に話しかけて来る。

「あぁ、良かったよな」

返事をすれば一つ二つ頷いてズズッーと鼻を啜る。目一杯泣いて力一杯鼻を擤むもんだから__目も鼻の頭も真っ赤になってやがる。
マジ、ガキみたいな奴だ。



なのに、なのに___可愛くて堪らねぇ。何をすんのにも一生懸命なのが可愛くて堪らねぇ。
って__俺、大概イカレテルよな?
全くもって色気もくそもねぇつくしに惚れて惚れて惚れ抜いちまってるんだからな。

「あっ、コレ美味しぃー。ねぇねぇ、コレって新発売かな??」

はぁっーー コイツは、そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、今度は盆に盛られた菓子を堪能しだす。

「うーーん美味しい。ホッペが蕩けちゃいそう。流石、多喜さんお菓子の選び方が上手だよねー。うん。凄い、凄い!」

リスみたいに両頬いっぱいに頬張りながらガキみたいにはしゃいでる。

「どれっ」
手を伸ばして一つ摘めばなるほど美味い。

「おっ、美味いな」

「でしょ、でしょ」
まるで自分の立てた手柄のように喜んでいる。

ニッコリ笑ってから立ち上がる。

「次は何見る?」

「なぁ、今日はDVD三昧か?」

「うんっ。ダメ?」

「ダメじゃねぇけど__どっか出掛けたいとかないのか?」

俺の問いかけに
「うーーん」
なんて生返事をしながらDVDを物色してる。

「なぁあ」

「今日は、お家がいいの」
俺に向き直り、キッパリハッキリ返事をしてから

「次は、コレ見ようよ」

カウチに腰掛けた俺に凭れながら再生のボタンを押す。

DVDの中には____真っ白なかすみ草の花冠と幻想的なほどの美しさを身に纏った女がたっている......映像の中の女に俺は見惚れる。

ズキュン
ドキュン

俺の胸は高鳴る。
あの日を思い出して__



つくしは、微笑みながら

「ねぇ、baby’s breath覚えてる?」

「__あぁ、山中湖だろ」


baby’s breath___かすみ草の別名だ。

2人で行った山中湖__
富士山をバックに満開のかすみ草が咲き乱れ......愛しい人の吐息のようにサワサワと風に揺れていた。

一面のかすみ草の中で口づけを交わした。押し殺していた感情を全て解き放った__そこから5年.....つくしを迎え入れるのにかかった年月だ。
今となっちゃぁいい思い出だがこいつには沢山の辛い思いをさせちまった。


なのに......
いつも笑ってくれた。

いつも癒してくれた。

俺を信じ、俺だけを愛してくれた。


つくしが西門に嫁いできてからもう幾つもの季節が過ぎた。嫁いできたころよりも日一日とつくしを慕うもの味方になるものが増えてはいるが......未だに何かとこいつを貶めるように言う輩が多いのも現状だ。

なのに......
いつも笑ってやがる。
ケラケラと__文句の一つも言わずに


なぁ、つくし......
お前が俺に与えてくれるありったけの愛をありったけの思いを......
俺はおまえにきちんと返せてるか?


凭れかかるつくしを抱きしめて……

「つくし、愛してる」

そうささやけば……

「あたしも愛してる」


一つ
 二つ
三つ......

baby’s breathを感じながら幸せな時間に酔いしれる。

一つ
 二つ
三つ......

口づけを交わす。


昨日より、いいや1秒前よりも__深く深くお前を愛してる。







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