baroque 04
愛に
daft
翻弄され
daft
堕ちていく
新しいピアスをプレゼントさせて欲しいと口にすれば__つくしの瞳に翳りが生まれる。素知らぬ振りをして僕は優しく笑うんだ。僕は知っているから__つくしがこの笑顔に逆らえないことを。
自嘲するような薄笑いを浮かべそうになって……仮面を崩してはいけないと心に言い聞かせながらもう一度優しく笑う。つくしの好きな優しい笑顔で。自由にさせてあげたいと思うのに__つまらぬ嫉妬が邪魔をする。
つくしに僕の知らない時間が思いが増える度__つまらぬ嫉妬で身を焦がしている。馬鹿げている__そう思うのにこの感情を止められない。
「どう?」
そうききながら、バロックパールを外させてキラキラと光るダイヤをつける。輝くダイヤに反比例するようにつくしの表情が翳るのに目を瞑むる。
「これ頂いて行くよ。あとは筒井の屋敷の方に届けてくれる?」
「畏まりました。つくし様がお付けになられていたものは如何なさいますか?」
「屋敷の方に一緒にお願いするよ__つくし、それでいいよね?」
「あっ__」
つくしの指先が耳朶に触れる__返事を待たずに
「落とすと困るからそうしてもらうよ」
「あっ、__でも__」
「っん?でも何?」
つくしは言葉を飲み込んで唇を噛む。
本人は気が付いていないけど、小さな頃からのつくしの癖__言葉に出せない不満を溜め込んでいる時との癖。
なのに__
僕はそれを見て見ない振りをする。
* ****
「今日は、僕のマンションでいいんだったよね?__夕飯は新谷にいく?それとも違うところがいい?」
浮かない表情してるつくしに矢継ぎ早に言葉を投げかけた。
「……新谷がいいなぁ」
つくしは、新谷の岩国寿司が大好物なのだ。つくしのお母さんが岩国の出身で……新谷の岩国寿司の味と良く似ているのだ。
「おっ、薫君につくしちゃん」
つくしが実家が恋しがる度にここ新谷に来ていたから、大将とは仲良しだ。
カウンターで大将や女将さんと話しながら酒を呑む。
「薫君が酒呑むようになったんだから驚きだよな」
「大将、それ言われ続けて彼此れ3年になりますよ」
「あははっ そっかそっか。つくしちゃん東京の学校はどうだい?」
懐かしい味と笑顔に応えるように
ニッコリとつくしが笑う。
大将と女将さんに見送られ店を出た。
「あぁーお腹いっぱい。薫ありがとうね。あっ、そうだ忘れる所だった__暁屋さんに寄ってもいい?」
「暁屋?」
「うん。匂い袋が欲しいって頼まれたの」
「あぁ、勿論いいよ」
「ねぇっ、そのあとベルグでケーキ食べたい」
「ぷっ、お腹いっぱい食べたばっかりなのに?」
「うん。別腹。ベルグ腹になってる」
憂いが消えた笑顔でつくしが笑う……
RRRR……. RRR……
スマホのベルが鳴る。ジュエルからの緊急の要件だった。
「つくし__ごめん。社に戻らなくちゃいけなくなった__」
「あっ、うん__じゃぁどうしよう?」
「暁屋で降ろすから買い物して行けばいいよ__」
「うん。マンションに戻ってていいの?」
「あぁ」
「ベルグにも寄って行っていい?」
「あぁ__迎えの車が必要ならいつもの所に電話して」
「うん。ありがとう」
暁屋の前でつくしを降ろした。可愛らしく胸の所で手を振っていた。
笑顔に安堵して僕は、この時重大なミスを犯した。
♪baroque不定期連載です


ありがとうございます♪
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