No.002 いつも通りの朝だった 司つく
朝起きてご飯を食べて__いつも通りガタゴトガタゴト電車に揺られながら出社して。
いつもと変わらぬ一日だった。
いや、いつもよりもタイミングが悪っくて......仕事でミスしたり、社食のスペシャルランチを食べ逃したりとツイテナイ一日だった。
まぁ、こんな日もあるさぁー
ちょっぴり落ち込みながら退社した。
会社の前には人集りだ。
うんっ?うんっ?何かの撮影?
ヒョコヒョコと飛び上がって黒山の先を見た。
見なきゃ良かった__しかも飛び上がってまで。
視線の先に居たのは……見目麗しい道明寺。
外で見る道明寺は、悔しい事に美しさが光ってる。うーん流石F4の一員だ。赤薔薇背負ってる感じよ。感じ
ほら、宝塚の世界とでも言うのかな?豪華絢爛で美しい。
いやいや、そんな事に感心してる場合じゃなかった___
いやぁーーでも感心しちゃうよね。うん。しちゃう。
あぁ、でもそんな場合じゃない。いまやるべき事は……ただ一つ。
クルリと踵を返した瞬間__人集りがスゥーーッと二つに割れて……次の瞬間、宙に浮く。
「キャッ」
ジタバタ暴れて後ろ足で蹴り上げる。
「うぐっ」
低く、くぐもった声がする。
ヨシッとばかりにもう一発!!後ろ足で蹴り上げる。
スカッ
あたしの脚は宙を蹴り上げ……抱き上げられる。荒々しい動作なのに、優しくフワリと抱き上げられる。
「ちょっ、ちょっ降ろしてよ」
恥ずかしくなって慌てて叫べば
「大声出すと余計目立つぞ」
「うぐぐっ」
仕方ないから胸に顔を埋める。
道明寺が、もの凄く満足げにニヤリと笑う。
もぉーーと思うものの……道明寺の胸の中は心地好くてあたしは、幸せな気持ちに包まれちゃって……リムジンに乗り込む頃には文句の一つでも言ってやろうと思ってた気持ちがスゥーーッと凪いでいた。
でもなんか恥ずかしくなちゃって__脇腹をギュギュっと摘んで
「痛っ、なにすんだったく」
「......なんであんなとこに居たの」
「なんで居たって__会いたくなった。会いたくなったら一秒でもオマエのもとに行きたくなった。会社の中入ったら文句言うだろうよ。だから待ってたんだよ。文句あっか?」
一秒でも早く会いたかったなんて言われたら嬉しいけど___恥ずかしくなちゃって
「バカっ」
なんてポッツリと言ってた。
一瞬、道明寺の眉がピクリと上がる。その後にフンッと笑って
「バカでもいいや!思い立ったら直ぐに会える距離にいるんだからよぉ」
思い立ったら直ぐに会える距離__当たり前の事が当たり前じゃなかったあたし達の関係。そっかぁ__これから会いたい時に会えるんだ。ぐふふっと嬉しさがこみ上げる。
「なっ」
大きな手があたしの肩を抱き締める。
優しく優しく抱き締める。
「うん」
素直にあたしが頷けば照れ臭そうに、でも嬉しそうに破顔して__優しいキスが降って来る。
いつもと変わらぬ一日は、
いや、ちょっぴりツイテナイ一日は
目の前の男によって___極上の一日になる。
あなたがいるだけで極上の一日が訪れる


Reverse count 98 Colorful Story 応援してね♪
- 関連記事
-
- No.032 マキちゃん食堂 司つく
- No.027 見つけた 司つく
- No.022 ありったけ 司つく
- No.017 宝物 司つく
- No.012 真夏の夜の夢 司つく
- No.007 縁は異なもの味なもの 司つく
- No.002 いつも通りの朝だった 司つく