No.016 Another Story byロキさま
楽しい思い出と共にちょっぴりほろ苦い思い出が漂って来る
そんな柔らかな時間___
空はスコーンと晴れて、秋晴れの気持ちの良い天気である。さわやかな空気の中、どこからか、何か騒音が聞こえる…。
だからなんでっ
うるさいっつーのっ
はあっ、お前のせいだろうがっ
中庭のあたりから聞こえるわめき声に、総二郎とあきらは、やれやれと首を振りつつ、苦笑した。
「あいつら、またやりあってるぜ」
「よくもまあ、飽きもせず」
「・・・・・」
騒音のもとに近づいた二人、ではなく無言の類を入れた三人は、そこに思い描いた通り、司とつくしの姿を見つけた。何が原因かは知らないが、お互い顔を突き合わせ、響き渡るような大声で怒鳴りあっている。
「楽しそう…」
ボソッと類の声が聞こえ、よくよく見れば二人の頬は紅潮し、目はきらきらと輝いている。喧嘩しているはずなのに、言葉の内容は罵りであっても、生き生きとしたその姿は楽しんでいるように見えなくもない。
口では勝てない司はついに手をあげてつくしを捕まえ、頭を抱えて髪の毛をわしゃわしゃとかき回した。ひょえ~~という女らしさの欠片もない声を発したつくしは、なんとか逃れたものの、金太郎カットの髪は見事に逆立ち、ひどい有様。司は思わず吹き出していた。呆然と司が笑う顔を見ていたつくしは、同じように司の髪の毛を引っ張ろうと猛然ととびかかっていくが、身長差があるので、手が届くはずもなく。
二人の有様に、笑いをこらえることができないF3。
「なあ、あれって、ケンカしてんのか?じゃれあってんのか?」
「なんかなあ…犬がきゃんきゃん吠え合ってるみてえ」
「だな。大型犬と小型犬か」
「んじゃ、司はドーベルマンってとこか。牧野は?」
「…パグ」
またボソッとつぶやいた類。零れ落ちそうな大きな目で、こけたら鼻じゃなくておでこをぶつけそうなところが似ているらしく。
思わず3人とも爆笑してしまい、ひーひー言いながらお互いに懐いて笑い合っていると、その様子を不思議に思ったら司とつくしがやってきて、話を聞いた司はパグの画像を見せられて一緒に爆笑、つくしは真っ赤になって怒ったものの、屈託なく笑うF4を見ていると自分までおかしくなってきて、一緒に笑ってしまったのだった。
***
昔の写真を見ながら思わず含み笑いをもらしたのを聞いて、やってきたつくしはすでに高校生ではなく、見事に花開き美しい女になっている。「何笑ってるの?」と聞くのを引き寄せて腕の中にしまい、耳元でささやいて、二人でくすくすと笑い合った。
あの時、皆で笑い合う珍しい光景を写真にとったのは桜子。写真嫌いの面々が集って映っている唯一の高校時代の写真となった。それぞれつくしのことを想っていた4人。紆余曲折の末、手に入れたのは俺。それぞれの胸に痛みはあるものの、それでも付き合いは続いている。
社会に出て忙しくなっても、たまに集まって話に花を咲かせる。それは、大きな責任を背負い、日々神経をすり減らす中での、かけがえのない時間になっている。そしてほっとできる場所。それがつくしだ。あいつらは、集まるというより、つくしに会いにやってくる。その時だけ、役職も外見も取っ払ったただの友達同士として、笑うことができるから。
つくしが誰か一人のものになっても、一緒に笑いあった記憶はなくならない。あのすさまじくも懐かしい日々は俺たち皆のものだ。ただ、俺じゃないやつをつくしが選んでいたとしたら…。
それはAnother Story。また別の話。別の未来。
声が聞こえる。皆がやってきたようだ。さあ、迎えよう。そして写真を見せて、バカ話をしよう。酔いつぶれるまで飲もう。夜が更けるまで。
FIN
楽しい思い出を肴にして飲み交わすのもこれまた至福のとき


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