No.009 ひょんな出会いで 総つく
バッシーンッ
平手打ちが飛んで来た。
頬はジンジン
頭の中は??????が飛び交って
目を瞬かせれば
「色男気取ってるつもりかもしれないけどさ、きちんと責任くらいとんなよね!」
「はっ?どういうことだ?」
「どういう事もこういうこと、あんた最低って言ってるの。大体さぁ色男気取るんなら……」
ここまで目の前のひょろっこい女が言い放った時……
「つ、つ、つくし……その人じゃない__」
後ろから息せき切って追い掛けてきた女が、ひょろっこい女の腕を掴んで言い出した。
「えっ?」
つくしと呼ばれた女は、女友達の顔と俺の顔と交互に見た後……自分の掌をマジマジと見つめ
「あぁあぁーーーごめんなさぁーーい」
後退りして逃げ出そうとしたから手首を掴んで掴まえた。
「あははっはっ……」
「あははっじゃなねぇよ」
その日から目の前のひょろっこい女は、俺の下僕だ。
「おっ、今日も宜しくな」
「なっ、なんでよ」
「なんでじゃねぇーよ。なんでもやるから許して下さいって言ったのお前だろうよ」
「うっ“」
* ****
「中々様になってきたじゃねぇか」
「もう、からかわないでよねっ!」
女避けのためのパーティーの同伴が牧野つくしの役割だ。
最初はぎこちなかった振る舞いも回を重ねれば美しく熟れて来る。
熟れてくれば牧野本来の物怖じしない性格が出て来て、にこやかに同伴者の義務を果たしている。
いやそれどころか周りの人間を魅了しだしている。
変わり者の但馬会長は、裏表のない牧野をえらく気に入って会う度に自分の会社で働けと口説いた。
「無理です」
「なんの努力もしないで無理の一言か?カッコ悪いのぉー」
「そう言う事ではなく……あたしは正々堂々と入社試験を受けて会社に入りたいんです」
「おぉ、そうかそうか。但馬の入社試験は難関じゃが頑張れよ」
「ですからっ」
会う度にそんなやり取りがあって2枚も3枚も上手の但馬会長に言いくるめられ、いつの間にか但馬で働く事が決まっていた。
「騙されたって感じ?__はぁっ、まんまと乗っちゃうあたしもあたしなんだけどさぁ」
「騙されたって、但馬なら一流どころだから文句ねぇだろうよ」
「……まぁ、確かにそうなんだけど……なんかズルしたみたいでさぁ胸張れない気がしてね」
結果的に__トップクラスで合格していたことが判明し、晴れ晴れとした顔で但馬で働く事を決めていた。
「西門さん、大変大変、茶道と華道と着付け習っとけって」
但馬会長は西門の後援会長でもあるわけで__責任もって西門で面倒を見る事に決まっていた。
テンパリながらも必死になって食らい付いてくる牧野に__いつの間にか心惹かれてた。
俺だけじゃなく牧野の教育を頼まれた家元夫人も牧野に心惹かれ___
邸に戻れば
「あっ、西門さん今晩のお夕飯はお鍋だよー」
どっちが西門の人間かワカラネェくらいに居着くようになっていた。
居着く? 居着くどころか
___いつの間にか一緒に暮らす事になっていた。
「行って来まーす」
ほらっ、今日も元気よく出掛けていきやがる。
「おぉっ、行ってこい」
で、また元気よく帰って来いよ。
小さく心の中で呟く。
おっと、その前に____
「総二郎さん、そろそろご用意をしなさい」
お袋が俺に声をかける
「あぁ」
今日はこれから見合いが待ってる。
相手?
但馬会長の秘蔵っ子と名高い会長秘書だ。
あいつ驚くかな?
驚くよな?
はははっ
平手打ちから始まる恋__そんなんもあっていいよな?
行ってきます。行ってらっしゃい。ただいまって言える幸せ♪


Reverse count 91 Colorful Story 応援してね♪
- 関連記事
-
- No.034 運命のキス 総つく
- No.029 櫂 総つく
- No.023 一直線に 総つく
- No.019 茶ノ木花 総つく
- No.014 天気雨 総つく
- No.009 ひょんな出会いで 総つく
- No.004 恋が生まれる 総つく