baroque 07
あなたと
betrayal
ただ一緒に
betrayal
笑っていたかっただけ
つくしが、ソファーに腰掛けてクスリと笑った瞬間
RRRR……
まるでどこかで見ていたかの様にスマホのベルが鳴った。
「もしもし__」
スマホの向こうから薫の声がして帰宅するのは明朝になると告げて来た。
「あっ、うん。気をつけてね。うん。無理しないようにね」
__不意に出来た一人の時間
鴨川を眺めながら暁屋の紙袋をたぐり寄せ中を覗けば、つくしが買った品物では無く見るからに高級そうな香木が入っている。
「あちゃー 間違えちょる」
つくしは逡巡したあと__スマホをタップする。
RR
「おっ!」
まるで掛けて来るのがわかっていた様な総二郎の声に
「なんで、わかったっちゃ」
「そんな気配がした」
「気配ってなんちゃ」
「気配は気配だよ」
「ぷっ、あんねえ、袋間違えちょったん」
「へっ?間違えた?何を?」
「暁屋さんの袋っちゃ」
ガサガサと音がしたあと
「お前、ドジっ娘か?」
くくくっと笑う声がする。
「ドジっ娘って……なんちゃ。もう」
幾つかの会話がされた後、近くまで取りに行くから会えないかと聞かれて思わずつくしは、コクンと頷いていた。
鏡を覗いて薄紅を差す。ほんのりと頬が上気しているつくしが鏡の中に映っている。コートを羽織り手に紙袋を持ってエレベーターに乗り込んだ。
待ち合わせの場所まで歩くつくしの足取りは、軽やかに地面を蹴りあげ頬には笑みが零れ出していた。辺りをキョロキョロと見回せば
「おぅっ」
総二郎から声がかかる。
「よぉっ」
つくしが声を返せば
「くくくっ、ったくお前ホント色気ねぇなあ」
「ぶち嫌っちゃ」
「ぶち?」
「あっ、ごめん凄くってこと」
「なんで謝るんだよ?ってか、お前この辺の生まれじゃないの?」
「あっ……うん。萩なの」
「へぇ山口なんだ」
他愛もない事を話しながらも二人でブラブラと歩く。あてなどないのに月を見ながら二人で歩く。鴨川を月夜が照らし出している。
「月、綺麗だね」
「月、綺麗だな」
顔を見合わせ笑い合う。二人の黒髪がサラサラと揺れる。
つくしが駆け出し
「飛び石行ってみるっちゃ?」
「飛び石かぁ、懐かしいなぁ。昔、飛び石巡りしたことあんぞ。西賀茂の飛び石は滅多に顔出さねぇで水没してんだよ」
「へぇーー恥ずかしがりやさんの飛び石だね。行ってみたいなぁー」
「明日、行ってみっか?」
「明日かぁーー明日は用事がいーっぱい」
「ぶち忙しいか?」
総二郎の言葉につくしがクシャリと笑って
「そうっちゃね。ぶち忙しいとよ。うんと、総二郎さんは」
「総二郎さんとか似合わないよな。総で良いって」
「じゃぁ、お言葉に甘えて……総は?何しに京都に?」
「あぁっ、うん。叔父貴の家がこっちにあってな」
「へぇー そうなん」
飛び石を二人で渡る。
何でもない事なのにクスクスと笑い合いながら。
「あたしの実家の近くにも河川敷があってね。石投げしたり、虫取りしたりしたっちゃよぉ」
「へぇー 楽しそうだな」
小さな頃の思い出を二人で競い合う様に話し合い笑い合い聞き合う。一体どれくらいの時間二人で話したのだろう
「……ぷぷっ、総って小ちゃい頃可愛かったんだ」
「今も可愛いだろうよ」
「ぷっ、可愛い?今も?あははっ、それ間違ってるよ。今は立派なタラシだもんね」
「タラシって......お前、酷いな って、お前......頬、大丈夫か? ホント、ごめんな」
総二郎の指先がつくしの白い頬に触れた……
優しく触れた


ありがとうございます♪
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