No.004 恋が生まれる 総つく
不埒な男を恋する夢を見た。
キュンッ
胸の鼓動が早くなる。
キュンッとしてドクドクドキドキして__もう一度眠った。
えっ?なんで眠ったかって?
あんまりにも鼓動が早くって__あぁこりゃダメだと思って、もう一度眠ってみた。
ジリジリジリ ジリジリジリ
目覚ましの音が鳴る。
パチンッと止めて伸びをする
「ふぅわぁーー ヨシッ」
しっかり目覚めても___
ドクンッドキドキ
ドクンッドキドキ
沈まれあたし
沈まれハート
ふぅっーーーー ドキドキし過ぎて食欲もなくて
ご飯は普通盛りで我慢した。
えっ?食べたのって?
あははっ そりゃ食べる。
恋をしようが
寝坊をしようが
食べる事は生きる事だから
同等に語るなって?
いやいや食べるのは基本。
* **
夢を見た。
鉄パン女に恋する夢を見た。
ドクドクドクッン
早鐘のように鳴り響く。
十五のガキのように胸が高鳴る。
ドクドクドックン
ドクドックン
目がギンギンに覚めて眠れない。
やっと眠ったのは朝方だった。
「若宗匠、朝でございます」
「あぁ……ふぅわぁーー 眠みぃ」
胸がいっぱいで飯が喉を通らない。ほうじ茶飲んで家を出た。
眠たい瞳をこすりながら____
朝もやの中を散歩する。
太陽が朝もやを掻き消していく
モノクロの街に色がつき始め、今様色の山茶花が目に飛び込んで来る。
芳しい香りが鼻孔を刺激する。
立ち止まり香りを楽しんだ後
「ふわぁ」
欠伸を一つ噛み殺しながら踵を返して今来た道を戻って行く。
* **
「行って来まーす」
コキコキと首を鳴らしながら、一人呟いて部屋を出る。
一気に冷え込んだのだろう___朝もやがゆらゆらと揺らめいている。
陽の光が朝もやを消して行く。
ぼんやりと霞んだ景色が鮮やかに色づいて行く。
今様色の山茶花が目に飛び込んで来る。
鼻を蠢かして香りを吸い込む。
爽やかなのに濃厚な香りが胸いっぱいに広がって行く。
「うーーーん いい香り」
胸いっぱいに香りを抱き締め歩き出す。
真っ直ぐに前を向いて歩き出す。
角を曲がれば……出会いが始まるのに
二人はまだ出会わない。
二人の恋はまだ始まらない。
男の日課と女の日課。
重なり合う。
なのに
まだ出会わない
* ****
スーパームーン!68年ぶりの近さ
こんな見出しを見つけた晩___夜の散歩に繰り出した。
スーパームーン中のスーパームン!
こんな見出しを見かけた晩___
「ここで降ろしてもらえるかな」
車を降りて月を見ながら散歩した。
山茶花の香りが立ち籠める……
いつもなら踵を返す道を
いつもなら真っ直ぐ行く道を
二人揃って角を曲がった……出会い頭にぶつかって
「あっ、悪りぃ」
「あっ、ごめんなさい」
月光の晩___
男と女の時刻が重なり合って恋が生まれる。
ふわりとお月様が笑っていた。
*今様色=ピンク
ピンクの山茶花の花言葉は 永遠の愛
ときが重なり合って日常へと変化する


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