No.014 天気雨 総つく
お狐コンコン鳴いている。
狐の嫁入り隠すため……晴れているのに雨が降る。
コーン コーン
お狐コンコン鳴いている。
嬉し楽しい嫁入りだと鳴いている。
明るい陽射しの中雨が降り空に虹がかかる……
「まっこと、縁起がよいことじゃ」
大老の言葉を合図のように……雅楽の音が鳴り響き
綿帽子の花嫁さんと紋付袴の花婿さんが神主さんと巫女さんに導かれ本殿に向かう。
皆の顔に心からの笑顔が浮かんでいる。
コーン コーン
お狐様も喜んでいらっしゃる。
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決して平坦な恋じゃなかった
何度も、何度もコイツをつくしを自由にしてやりたいと思った事か。
その度に
「総、捨てたら化けて出るから覚悟してね」
笑いながら俺に言って来る。
「俺は化けもんは苦手だ」
そう返せば
「じゃぁ、仕方ないね。総はあたしを嫁にするしかない」
そう言いながらガハガハ笑う。
「ったく、色気ねぇ笑い方してんじゃねぇよ。こんな色気のない奴にこんな惚れてんのは、俺くらいだな」
そう言って額を小突けば、嬉しそうに微笑んで俺に凭れ掛かる。
本当は違うよな。俺じゃ無くたって__お前を愛する男は巨万といる。
ごめんな__
愛しちまって
ごめんな__
離せなくて
ごめんな
幾度も幾度も謝りながらも手放せなかった。
狂おしい程に好きで好きで___
「ねぇねぇ、あんバターホイップ今度来る時買って来てね」
「ったく、食いもんばっかりだな」
「うーん、クリームメロンも欲しいな。ここはいっちょ総に頑張ってもらって両方買って来てもらおう」
「バーカ、頑張んなくてもパンの一つや二つ買えんぞ」
「おぉーおぉー そりゃ幸せもんだ!」
暗い顔すりゃ、戯言言いながら俺の心を解してくれる。
一度だけ全てを捨てて、つくしと二人でどっかに行っちまおうと思った。
思い詰めた形相をしてたんだろう.......あいつは俺に
「あのさぁ、あたしね何も持ってないでしょ?」
「……あぁ」
「だからさぁ、柵とか伝統とか憧れちゃうんだよね……そんな憧れの世界に身を置きたいと思うんだよね。それにさぁー総からお茶を取ったら魅力半減だからね」
しれぇっとした顔して釘を刺し
「あたしを取るか茶道を取るか、突きつけられたらさぁー、貪欲に両方取ってよ。.....でさ、それが無理なら茶道取ってよ」
「なっ、何言ってんだ」
「うんっ? だってさぁ、そうしたらあたしは生涯、総をううん西門総二郎を愛せるからさぁー ねっ 約束だよ」
どこまでもどこまでも澄んだ目で俺を見て言いやがった。
頷くしかなかった。
あの瞬間____覚悟を決めた。
貪欲になろうと。
そしてコイツと幸せになろうと。
全てが整い正式につくしに求婚した日___
総二郎は、初めてつくしの目に光る涙を目にした。
何度も何度も隠れて泣いていただろう涙。
決して、総二郎の前では見せる事のなかった涙を目にした。
美しい美しい涙を……
この先、何があろうとも一人で泣かせはしないと心に誓いながら美しい涙を指で掬った。
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雅楽の音と共に幸せが溢れ出し......
二人を包みこんでいる。
すっかり涙脆くなったつくしの瞳に涙が光る。
幸せの幸せの涙が。
愛する人の前で泣ける幸せ。そんな幸せを手に入れた


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