No.015 コアラって あきつく
充分過ぎる程大人の女なのにも関わらず___大声あげて嬉しそうにはしゃいでる。
「うんっ?」
「空、空、空」
空を見上げれば、オランウータンがスカイウォークをしている。
オランウータンの空中散歩よりも……俺にとってお前を見てる方が楽しいかもしれない。そんな言葉を呑み込んで
「おっ、凄いな」
「ねっ!次は何見る?コアラ見ちゃう?」
顔をクシャクシャに綻ばせて俺の目を覗いてくる。その顔があんまりにも無防備で、そして可愛くて……
「牧野」
思わずそう答えていた。
「なに、なに?何か他のものが見たい?距離的にはコアラが一番良いと思うよ」
「……任せる」
クスクス笑いながら「任せられた!」そう言ってドンッ!と胸を一つ叩いている。その仕草が小学生のガキみたいでおかしくなって笑い出せば
「もぉう、すぐ笑う」
そう言いながら、頬を膨らませる。
いつまで見てても見飽きない。コロコロと良く変わる表情。楽し気に笑いながら驚いたり、感心したりしてる。
「見て見てやっぱりコアラ可愛いねぇ」
「あぁ、可愛いよな。でもさ怒ると案外怖いらしいぞ」
「へぇー 怒る事なんてあるんだ」
「そりゃぁ、自分の大事なもん守るためには怒る事もあるだろうよ」
「そりゃ そっか」
笑い合いのんびりと動物談義に話しを咲かせた先週の日曜日。
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「はぁっーー」
「あらっ、大きな溜め息。今日は、つくしお姉様とお出かけにはなりませんでしたの?」
出かけてたらココにいないし、こんな大きな溜め息ついてないだろうよ。とも言えず……
「あぁ、今日は用事があるんだってさ」
「あらっ、他の方とおデートですかしら?」
「めくるめくる恋かもですね」
「えぇ」
妹二人に揶揄われてるのも発破を掛けられているのも百も承知だ。なのに二人の言葉が抉る様に俺の胸を突き刺して来て__面白くなくて席を立った。
面白くない心を持て余し街に出た。チラホラとイルミネーションが始まっている。美しいと感じる余裕もない程に心が気持ちが荒ぶっている。
ふと顔を上げた瞬間__牧野の後ろ姿が見えた。
見知らぬに男と仲睦まじ気に話しているのが目に入り……後先考えずに声を掛けていた。
「牧野」
ゆっくりと牧野が振り向いた。
牧野の瞳の中に困惑の色が見つけた瞬間___驚く程の嫉妬心が浮かんで来て次の瞬間、手を掴み強引に引き摺っていた。
「み、み、美作さん……ねぇ、ど、ど、どうしたの?」
「つくし?」
「つくしちゃん?」
「ノッコ、和也君、ご、ご、ごめん後で連絡入れる」
牧野の手を掴み車に押し込めて発車した。
「美作さん、どうしたの?」
そう声を掛けられた瞬間……後悔と羞恥が襲って来る。
路肩に停車して___
「ハァッーーーゴメン」
勢いよく謝った。ただただ謝った。どれくらいの時間謝っただろう。
牧野が突然笑い出した
「ぷっ ぷぷっ」
楽しそうに一頻り笑ったあと
「ノッコと一緒に居た人見覚えなかった?」
首を横に振る。
「憶えてないかもしれないけど、英徳で一緒だった和也君、青池和也君だよ」
「えっ?」
「ノッコの彼氏が和也君だって判明してね。で、会ってたの」
「だったら、一言言ってくれれば良かったのに」
「美作さんになんで?」
「な、な、なんで….って」
牧野の大きな瞳がイタズラ気に俺を見つめる。
「ねぇ、なんで?」
「___好きだから」
「もう一回言って……」
破れかぶれになって__何度も好きだからだと告白した。
牧野の細い指先が俺の手に触れて
「……やっと言ってくれたね。コアラくん」
そう言って嬉しそうに微笑んだ。
「それって?牧野もってことか?」
コクンと牧野が頷いた。
耳まで真っ赤になりながら。
荒ぶれてささくれ立った心は、猛烈に幸せな一日になった。
イルミネーションがキラリキラキラ幸せ色に輝いていた。
コアラてだってやるときやるさ!


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