No.017 宝物 司つく
あらあら ははぁっん♪
すっかり母ちゃんって奴になった小っこいのが、杏のオムツを替えながら歌ってやがる。こんなとこまでつくしにそっくりだから笑っちまう。
に、してもだ__あらあら ははぁっん♪は、無いんじゃねぇのか?
あんま、へんな歌ばっか唄ってると桐人に捨てられんぞ。
いやっ、捨てられるのも一計か?
結も杏も二人してココにずっといる。中々いいなぁ
いやっ、良くねぇか。娘の可哀想な顔なんて見たくねぇな。つぅか、一瞬でもこんな想像したなんてつくしにバレたら大目玉だよな?
ブルブルッ
辺りを見回して安堵の溜め息を吐いてから、もう一度結を見れば、杏を水平に抱っこして右の背中を撫でている、ブラッと片方尻が揺れ、反対側の背中を撫でれれば、もう片方の尻が揺れる。
振り子のように尻がピョコピョコと揺れる。
はぁはぁーー 尻フリフリだ。でもって、脚も併せてフリフリだ。
ほぉーーっと感心しながら思いを馳せる。小っこいのを初めてこの腕に抱いた日を。
/-/-/-/-/-/-/-/
オギャー オギャー
誰よりも大きな産声をあげて生まれた小っこいの。燦然と光り輝いていた。つくしに言わせると黄金の光に包まれて見えたらしいぞ。
命に代えてでも守りたいものが一つから二つに増えた日だった。ヤベッ……あの日の事を思い出すと未だに涙が零れそうになる。
そういやぁ、杏が生まれた日……桐人が同じ事言ってたなぁー
「お義父さん、た、た、大変ですよ。杏、杏、光ってます。かぐや姫とかじゃないですかね?」
真面目な顔して言う桐人に
「キィちゃん……人間が生んだんだよ。かぐや姫のワケないからね」
結が冷たく言い放ってたっけ。
「でも__光ってる」
そう言い返した桐人に
「そりゃね。きぃちゃんの子供だもん。光って当たり前だよ。ねぇっ、お母様」
つくしに振り向いてウィンクした。娘の言葉に耳まで真っ赤になってあたふたしてるつくし。
光ってたのは、好きな男の子だからか?
衝撃の新事実だなーーなんて思って恋女房を見つめれば照れてそっぽを向いている。
「なるほど、じゃぁお義父さんも結の事、光って見えたってことですよね」
「うふふっ、おーたんは、私の誕生に感動しすぎて泣いちゃったのよ。うふふっ、さっきのキィちゃんみたいにね♪ うふふっ杏ちゃんの旦那さまは大変でしゅ〜よ」
結が杏の頬をちょんと突っついてから桐人を見れば
「杏ちゃんは、嫁には出さない」
両手を強く握りしめ力強く言い切った。
それを見ていたら__俄然愉快な気持ちになった。
そっか、コイツも__杏が嫁に行く時足掻くんだろうなぁと。
クククッ、孫はいいもんだ。
ただただ、無責任に可愛がって高みの見物が出来るんだからな。
/-/-/-/-/-/-/-/
「バブゥ〜」
杏の可愛い声が聞こえて来る。
手を広げて近づけば、キャハキャハと笑い出す。
くぅーーーー堪らなねぇな。
断腸の念で娘を嫁がせた……褒美って奴だな。
いつか杏が嫁に行く時、桐人に話してあげようやな。
宝物が増えんぞって。
幸せは綿々と続いている


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