No.019 茶ノ木花 総つく
花を愛でればあの日を思い出す。
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「もぉ、やだっ、やだったら やだ!」
「なんで?なんで?なんで?」
「なんでも。やだから嫌なの!」
牧野の前で手を合わせ
「そんなツレナイ事言わずにお願いだ。なっ!もう一回だけでいいから」
「はぁっーーーー前回も同じ事言ってたよね?あのさぁ、もういい加減にしない?」
「これで絶対最後にする。約束する。だから なっ!なっ!なっ」
「チィッ」
でっかい舌打ちが返って来る。
舌打ちなんて気にしちゃいねぇ。
取りあえずもう少し人生謳歌させてもらう為にだな、コイツには力になってもらわなきゃいけねぇ。
「はぁっーーーーー ったく エロ門、バカ門」
「はぁっ?エロ門はいいが、バカ門はねぇだろうよ?」
「はぁっーーー バカ門 バカ門 バカ門 ベェーだ」
すんげぇ勢いでバカ門連発だ。
ったく、ったく、ったく コイツばっかりは……頭にくるが、背に腹は代えられない。
「つくし様、牧野様__どうかどうかお願い致します。なっ!盟友を助けると思ってな」
「チィッ 報酬は?」
チィッ チィッ って舌打ちばっかり態々つけんなよな
「お前んとこの雑誌の取材っつぅーのはどうだ?」
「おぉ~特集とかもOK?」
「特集?なんのだよ?」
「モテ男大解剖!」
モテ男大解剖!ってなんだよそれっ。って思うが……
ここまで持ってくれば万事OKだ。
ほらっ、もう浮き足立ってやがる。本当に単純っつぅか、何つぅかだよな。まぁ有り難いんだけどな
「勿論だ。なんなら私服大公開とかもすっか?」
目がキラキラと輝いて
「じゃぁ、行こっか」
「ワリィな。恩に着るよ」
いつも通り__俺のマンションで
うぅーーーー あっ…… うぅっ
牧野が声を出す___
中、変わり帯を締めあげる。髪を整え、紅を指して出来上がりだ。
牧野は、姿見を見てポンッと帯を一つ叩きながら
「うんっ、良い女」
そう言って頷いている。
全てが整ったこの瞬間__そう、この一瞬だけ……俺は牧野に見惚れる。
「さて、行きましょうか」
和服姿で街を歩けば嫌でも目立つ……牧野は、俺の一歩後ろを楚々としながらついて来る。
普段の牧野は仕事人間ですっかり女を捨ててるが__こうやって装えば見違える程に美しくなる。出会った頃の金太郎牧野とはまるで別人のようだ。いや__元々美しく気高い花だったのかも知れねぇ。ただ開花してなかっただけだ。
すれ違う男達が牧野の色香につられて振り返る。自分の事には無頓着な牧野は
「流石、エロ門__皆が振り返るね」
小ちゃな声で感心したように俺に話しかけて来る。
ったくな__
「おおー待っとった、待っとった」
「おぉ、つくしちゃん つくしちゃん」
大老初め皆が牧野を嬉し気に迎え入れる。
「お久しゅうございます。皆様お変わりなくお過ごしでいらっしゃいましたか?」
はんなりとした笑みを浮かべながら完璧に挨拶を交わしている。チィッと舌打ち打ってた女とは思えないほどの淑やかぶりだ。
牧野見せときゃ半年ぐれぇは、見合いの話し持って来ないだろう……そう踏んで時折、彼女役をお願いしてる。一通りの挨拶が済めば、待ってましたとばかりに、奥方さん方が牧野を取り囲み話を咲かせはじめる。
大老が笑い顔でそれをみたあとに
「若宗匠は、いつつくしちゃんとのお目出度い話を聞かせてくれはるんかいな?」
こんな質問には少し困惑顔で目を細めながら牧野の方に顔を向け
「はぁっ、つくしは庶子の出ですので.......」
言葉を濁す。
「左様か......中々もって難しいと言うわけじゃなぁ」
「あっ、すみません......どうかお気になすらずに」
俯き加減に微笑んで一丁上がりの筈だった。
迂闊だった……菊子夫人に聞かれていたのだ。その後は、全てがあっという間に整い___
まぁ結果的に……断れない羽目に陥って俺等は祝言をあげた。
祝言の日___誰に憚ることなく美しく装った牧野に見惚れた。
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もともと愛してたんだろうって?
どうだったんだろうな?
愛してたのかも知れねぇし、そうじゃ無かったのかも知れねぇな。
ただ、アイツが、俺が、
特定の相手を作らずに喧嘩しいしい年がら年中一緒に居たのには____
ワケがあったんじゃぁねぇかと思ってる。
芳しい香りを放ち___茶ノ木花が揺れている。
隣を見れば……目元に皺を刻ませた愛しい女が柔らかに笑ってる。全てを包みこむように笑ってる。
11月29日誕生日花
茶ノ木花 花言葉は、追憶 純愛
気が付けば愛していた......多分最初から愛してた


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