No.046 つくしの定位置 by haruwoさま
幸せの青い鳥は___気が付けば隣りで囀っていた
気が付けば___人生が明るく輝いていた
高等部の頃、牧野の定位置は司の隣だった。
漫才のようにポンポン言い合いをしながら、2人して真っ赤になったり真っ青になったり……俺は中学生どころか小学生みてぇな2人を揶揄って遊んでいた。
少しだけ憧れを抱きながら………
少しだけ胸の痛みを感じながら………
☆
大学に入って、牧野の定位置は類の隣になった。
牧野と司は結局、距離に負けた。
十代の2人にはハードルの高い恋愛だった。
そんな中、類は高等部の頃と変わらず、どんな時も牧野に寄り添い続けた。
牧野と類の間に流れる独特の雰囲気に入って行ける奴はいねぇ。
司と別れたんなら、牧野と類には何の障害もねぇしな……牧野は『類の彼女』というポジションにつき、その後は『類の妻』というポジションにつくのが順当だと思っていた。
ところが、牧野のポジションは『類のソウルメイト』のままだった。
俺は何故か安心した………
俺は何故か落ち着かなくなった………
☆
大学を卒業後、牧野が就職したのは美作商事だった。
あきらの両親が熱望したからだと聞いた。
もちろん、そこにはあきらの想いも含まれてたんだろうな。
お膳立ては完璧だった。
今度こそ牧野は『あきらの彼女』そして『あきらの妻』というポジションにつくと思われた。
牧野の定位置はあきらの隣か……あきらなら幸せにしてくれんだろうな。
今まで感じたことのない胸の痛みを感じつつも、この後に及んでも俺は、自分の気持ちに気づかない振りを続けた。
でも、牧野が選んだポジションは『俺の彼女』だった。
☆
「牧野、ホントに総二郎でいいの?
今からでも遅くないからさ、俺にしない?」
____冗談でもやめてくれ、類。
いや、多分冗談じゃねぇな。
「そうだぞ、牧野。
美作は一家揃って大歓迎なんだ。
わざわざ魑魅魍魎蠢く西門に行かなくてもいいのに………」
____あきら、目がマジだな。
確かに魑魅魍魎蠢いてるけどよ、そんなあからさまに言わなくてもよくね?
「総二郎の悪い病気が始まったらすぐに俺に言ってね?
総二郎を再起不能にさせてあげるから。
どんな手を使ってでもね……クスッ。」
____どんな手なんだよ、類!
最後の笑いが怖ぇぇぇ………
「それにしてもな……何で牧野が告ってんだよ?
総二郎、お前は『平成の光源氏』じゃなかったのかよ?
情けないな、全く………」
____ご尤も過ぎて返す言葉が見つからねぇよ、あきら。
「あたしにだってよくわからないよ………
でも仕方ないじゃない!
す、好きなんだから………//////」
最後の方は聞こえないくらい小さな声で、類とあきらに反論した牧野は真っ赤な顔でチラリと俺を見た。
俺はその顔を一生忘れねぇだろう。
その顔は超絶可愛かった。
☆
そう、告ってきたのは牧野の方。
俺にとっては青天の霹靂だった。
はっ?
マジ?
何で俺?
よくよく話を聞いてみりゃ、大学の頃から牧野は俺を好きだったらしい。
だから類とは『ソウルメイト』のままだったのかと妙に納得した。
何で美作商事に就職したのかと聞けば、あきらのプロポーズを断る条件だったらしい。
あきら、お前陰でコソコソと何してやがるんだ?
牧野も牧野だ!早く言ってくれりゃいいのによ……いや、違うな。
俺がちゃんと自分の気持ちに向き合えばよかったんだよな。
情けねぇよ、ホントに。
牧野にも類にもあきらにも頭が上がらねぇな。
☆
呼び方が『牧野』から『つくし』に変わる頃、つくしの定位置は俺の膝の間になった。
ある日突然転がり込んできた俺の幸せ。
つくしを後ろから抱きしめるこのひと時が、俺の至福の時間だ。
首筋に顔を埋め、つくしの甘い匂いを堪能するもよし、服の中に手を忍ばせ、軽く悪戯するもよし。
付き合ってから随分経つのに、いつでも真っ赤になる初心なつくしが可愛くて愛おしくて仕方ねぇ。
つくし。
お前の定位置は、一生俺の膝の間だ。
絶対に離さねぇからな?
そう想いを込めて、つくしを後ろからギュッと強く強く抱きしめる。
「総二郎?どうしたの?」
つくしが小首を傾げて俺の方を振り向く。
「何か嫌なことでもあった?」
俺の方に向き直って、心配そうに俺の顔を覗き込み、そしてやんわりと俺を抱きしめた。
嫌なことなんて何一つねぇが、せっかくだから俺はつくしに甘えることにした。
つくしが俺の頭を撫でる。
ちょっとボリュームは足りねぇが、つくしの胸は妙に落ち着く。
つくしの鼓動が聞こえて安心する。
俺はガキか?
くっくっく……本当に愛おしい女ができちまえば『平成の光源氏』がこのザマだ。
あぁ、そうか。
俺の定位置はつくしの胸なのかもしれねぇな?
悪くねぇ……ってか、最高じゃね?
俺は幸せを噛み締めてニヤニヤしながら、つくしの胸で甘え続けた。
~fin~
あなたの定位置はどこですか?それはきっと愛し愛される場所


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