baroque 15
あなたといると
candidly
あたしは
candidly
あたしでいられた
「人に見られるとヤバいのか?家が厳しいんだっけ?」
「あっ__うん」
「じゃぁさぁ、俺んち来ねぇ?」
「総のお家?」
「あぁ、俺ん所なら人目も気にならネェだろ?」
「__うん。でも......」
「何もしねぇよ」
「そうじゃなくて__こんなに遅くにお邪魔して迷惑じゃない?」
「ったぁ、俺が誘ってんの。迷惑だったら誘わねぇよ」
「じゃぁ、ちょっとだけお邪魔させてもらってもいい?」
「あぁ」
総二郎のペントハウスで夜景を眺めながらグラスを傾け他愛も無い話しをする。それはつくしの小さな頃の話しだったり、総二郎の小さな頃の話しだったり、文学の話しだったり......色んな色んな話しを二人でする。
「ぷっ、なんで 灯籠に権蔵っちゃ?」
「なんでだったかなぁ?うーん あっ、思い出した!庭師の爺さんが権蔵で自分が辞める代わりに置いてってくれたんだよ」
「ぶち愛されちょったんね」
「___なのか?」
「そうちゃっ」
話しても話しても話したりなくて瞬く間に時間が流れて行く。
微笑みを交わし合い、時折大きく笑い合いながら二人は話す。
ボーン ボーン
柱時計が0時を告げる。つくしは慌てて立ち上がり
「__こんなに遅くまでごめんね。あたし帰るね」
「おぅ、また来いよ」
総二郎の言葉につくしの口元が嬉しそうに弧を描く。
玄関口までつくしを見送ったあと
「0時でご帰還……マジにシンデレラってやつか」
その夜からつくしの日課の中にプール通いが加わった。
夜8時決まったようにプールに行って一泳ぎする。
総二郎が来る日は、帰りに部屋に寄って0時の鐘を合図に部屋に戻る。
話しをしたり__二人並んでDVDを見たりボードゲームをしたり。
二人で過ごす時間はとても幸せで
__総二郎の心の中にもっともっと一緒に過ごしたいと言う欲が出る。
「なぁ、お前ん家ってそんな厳しいの?」
ソファーに凭れ掛かりながら映画を見ているつくしに問えば
「厳しいって言うか__マンションと大学以外はSPを付ける決まりだから……面倒っていうか」
「別に付けとけばよくねぇ?」
「うん。そうなんだけど……誰とどこに行ったとかも報告されるから……」
「俺とじゃヤバいか?」
つくしが困った顔をしながら曖昧な顔で微笑む。
「___マンションの中は絶対に付いてないんだよな?」
総二郎の言葉にコクンと頷く。
「じゃぁ、地下車庫から直接外に出るのならどうだ?」
「そんな事出来るの?」
あぁ。と総二郎は頷きながらショッパーをつくしに手渡してくる。
中を見れば、
オフホワイトのビックニットとレザーのショートパンツが入っている。
「これって?」
「うんっ?あっちで着替えてきな」
総二郎に促され普段着た事の無い服に着替える。
「おっ、似合うじゃん。あとちょっと来てみな」
つくしを自分の膝元に呼び寄せてボブのウィッグをつけて、メイクを施した。
鏡の中には別人のようなつくしが映っている。
「これ__あたし?」
「っぷっ お前以外誰がいる」
「だよね」
顔を見合わせ笑い合い手を繋ぎ合って……エレベーターに飛び乗った。


ありがとうございます
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