No.023 一直線に 総つく
Happy Birth Day to you
Happy Birth Day to you
Happy Birth Day dear Soujiro
Happy Birth Day to you
♪♬♬♬♪♪♬
軽快に誕生日の唄が流れ出しお祝いの拍手を貰いながら思わず笑みが零れ出す。
自分の誕生日を再び嬉しいと思ったのはいつからだろうか?
隣りを見ればにこやかに晴れやかに笑ってる女が一人。全てコイツのお陰なんだよな。
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「西門さんは逃げてるんだと思うよ」
「逃げてるって……なんだよ」
真っ直ぐな瞳で牧野が言い放ったその言葉に上手く言い返せなかった。
そんな俺を抉る様に
「全てを冗談めかして……何にも立ち向かおうとしてない。そう言ってるの」
凛とした顔をして真っ直ぐに俺を見つめてそう言った。
「……お前に何がわかんだよ」
思わずついて出た本音の言葉に
「うんっ?わかんないよ。西門さんの悩みなんてコレぽっちもわかんないよ」
「だったら放っておけよ」
「それは無理!」
「なんでだよ?」
「そんな辛気くさい顔見てたくないから……かな?」
辛気くさいって__こんでも俺、平成のドンファンだぞ!
ったくもっと言い様があるだろよと呆気にとられて……言い返すのも忘れてた。
次の日から特訓だと言って___
太陽が昇ると共にトレーニングウェア姿で牧野が邸の前に現れる様になった。
「なっ、なんだ」
「健康な精神は健康な肉体からって言うでしょ?」
ニカッと笑って言い放つ。その日から朝のマラソンが俺の日課に加わった。
夜遊び? ぅんなのしてる暇はねぇ__
マラソン終わったら何故か牧野も一緒に飯を食いそのまんまの勢いで大学に連れてかれる。一限目から授業なるものに出てる始末だ。
牧野の姿勢にえらく感動した家元が弟の家庭教師なるものを頼みやがって……
いつの間にか夕方もあいつは家に居る。
「つくしーー 飯食って行けよ」
「功ちゃん、つくしって呼び捨てすんな。つくし先生でしょうが」
牧野と功三郎の間でそんな会話が繰り返されて……
いつの間にか夕飯まで食って行く様になった。
いつの間にか寂しい食卓が賑やかになっていた。
「ふぅわぁーー」
あいつを送って帰ってくれば自然と眠気が襲ってきて就寝する。
なんともまぁ、健康的な一日なるものを過ごす様になってた。
法科大学院に進もうかどうしようか逡巡する牧野の背中を押したのは家元夫人のお袋だった。
「功三郎の家庭教師を続けてくれるなら学費その他諸々は全て私の方で出しますからそのまま通いなさい」
「そんなご迷惑かけれません」
そう言って断ろうとする牧野に
「牧野さん、逃げちゃだめなんでしょ?」
逃げるなの言葉で止めを刺され法科大学院に進み弁護士になったんだよな。
俺等の関係が変わったのは、牧野も交えて行われた俺の誕生日祝いの席だった。
飯を食い終わって三人で酒を酌み交わしていた時に功三郎が放った言葉が切っ掛けだった。
「なぁ、つくし、この前の返事そろそろ聞かせてくんねぇ?」
「この前の返事って?」
「俺と付き合ってってやつだよ」
「功ちゃん__もう直ぐからかわないの」
「揶揄ってなんていねぇぞ。前にも言ったけど、兄貴じゃなくて俺を選べば全部手に入るぞ。家柄も職業の自由も。なっ、てな訳でつくし俺と付き合えよ」
「功ちゃん、な、な、何言ってんの? 西門さんとあたしは、そ、そ、そんな関係じゃないよ」
「へぇーー つくし、逃げてる暇があったら闘えって言うワリに自分は逃げるよな?」
「に、逃げてない」
「だったら、俺と付き合って俺の嫁になんなよ。ホラッ俺は家元なんちゅー面倒なもの継がなくていいからさ」
「功ちゃん」
「功三郎」
「ハァッ、こんな時まで二人同時かよ。はいはい。だったら二人とも自分の気持ちから逃げずに素直になって俺をトコトン振ってくれよ。トコトン振ってくれたらつくし義姉さんってつくしの事呼んでやるからよ」
功三郎の本気の言葉に__俺等は素直になって自分達の心に従った。
逃げずに一直線に二人で闘って幸せを手に入れようと決意した。
弁護士としての肩書きも輝かしい未来も自由も全て捨て俺について来るとつくしが決意してくれたのは……翌年の俺の誕生日の事だったよな。
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沢山の沢山のロウソクを吹き消しながら……恋女房と過ごした人生の日々を思い出し、そしてこれからも続く日常の幸せに思いを馳せて俺は幸せを噛み締める。
「爺ちゃん、誕生日おめでとう」
「ジィジ、バァバ、ケッコン おめでと」
可愛い可愛い孫達に見守られてな。
Happy Birth Day 総ちゃん♡


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