No.027 見つけた 司つく
ずっとずっと夢の中に出て来たあの人の後ろ姿をあたしは見つけた。
大きな道路を挟んだ反対側に彼を見つけたあたしは
自転車に跨がり全力疾走で追い掛けた。
追い掛けて死に物狂いで追い掛けて__グルッと回って彼の前に立った瞬間
彼が嬉しそうに片手を上げた。
やっぱり!彼はあたしの運命の人
嬉しくなって 満面の笑みで手を振リ返した
嬉し涙で顔が良く見えないけど__あのクルンとした髪の毛、モデルのようなあの身体付き
なによりも__あたしを知っているんだもん彼に間違いない。
彼は、あたしの横を通り過ぎ……綺麗な女性と二人手を繋ぎながら消えて行った。
あたしの恋は花と散った。
ヒラヒラヒラヒラ花と散った。
バカみたいに空が真っ青だった。
バカみたいに雲一つなかった。
どこまでもどこまでも晴天の空で___
あたしの心だけが土砂降り雨だった。
帰り道___自転車を押して歩いた。
「ヒック…ヒック……ヒック…ヒック」
泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて___目が腫れ上がるくらいに泣いた。
涙が枯れ果てた時、あたしは決めた。
牧野つくし……バリバリ働く女になりますって。
恋なんて不確かな事は、ポイっだ。
恋なん紙に書かれた道徳よりも薄っぺらい。
猛烈に勉強したら見る見る内に成績が上がって__
いま、目の前に2通の合格通知が並んでる。
まぁ所謂人生の岐路に立たされてる状態だ! 一通は両親__いいやママのたっての希望の英徳の合格通知。もう一通は、国立高校の合格通知。
なんで二通かって?
うふふっ、先に合格発表が行われた英徳の合格通知は机の底に隠しておいたのだ。
バカなママは、英徳の合格通知なんて見たら直ぐさまにでも入学金を払いにいって【目指せ!玉の輿】なんて言い出すから。
「冗談じゃない。こんなお坊ちゃんお嬢ちゃん学校。ポイっだ」
だってそうでしょ? 玉の輿を夢見るよりも自分が稼げる女になる方が良いでしょ。
で、普通にポイしたらバレるから__国立高校の合格通知が来た時点でシュレッダーにかけて、しかも火に焼べた。
晴れてあたしは、国立高校のピカピカな一年生になったんだ。まぁその後の人生だって順調に進んで最高峰に位置するって言われてる国立大学に進み優秀な成績なあたしは、新入社員並びに社員の平均年収が高く、加えて福利厚生に優れた道明寺HDに狙いを定めたのだ。
で、本日___出世の階段昇る入社式だ。
晴天、晴天、天晴れ晴天だ。
ぐふっ、ぐふふっ ココ 道明寺HDで異例中の異例___新入社員謝辞の挨拶に女性が選ばれたのだ。そりゃそうだ。あたしが名実共にトップ合格なんだから。自分で言うのもなんだけど__謝辞はバッチリ上手くいった。
壇上を降りる時__
ヒソヒソと話す声が聞こえる。
羨む声だと思ったら___はははっ あたしの着てるスーツの事だったのだ。
そりゃ
「なんか、あのスーツってペラペラじゃない?」
「やっ、あんなのでココの社員として挨拶交わすの?」
「いやっ、恥ずかしい」
恥ずかしいのは、そのへんてこなメイクじゃないのか?
喉元まで出かかったけど__真っ直ぐに彼女達を見据えてニッコリと笑顔を振りまいた。腐ってる女子3人組はギョッとした顔して押し黙った。
ケッ ざまぁみろだ。
と思ったのに、どうやらあたしの事はもう既に眼中ないようで......視線はあたしの後方にある。
クルッと振り向いた瞬間___
バフッ
後ろから来た男の胸の中に収まってしまった。
キャッーーと上がる黄色い悲鳴。
掻き消されて良く聞こえなかった男の声。
「見つけた……」
大、大、大失態の相手が___
愛も恋も信じてないあたしに盛んにモーションを掛けて来る
「牧野、今日は定時に上がってデートだ」
「却下です」
そう返せば
「藤田社長と会食だ。牧野も付き合え」
なんて断れない仕事を入れて来る。
間違いなく落としたい交渉相手で__くぅっーー毎回毎回付き合わされている。
バカ専務のお陰であたしには、恋はおろか___合コンのお誘いすら来やしない。そりゃ、あたしの第一目的はエリートコースに乗るコトだ。
でもでもこのままじゃ__あたし莟のまま枯れちゃわない?
そう口に出せば
「じゃぁ、恋の相手してやるよ」
そんな風に毎日毎日囁かれて……
あははっ、恋が愛が始まってた。
流されて流されて__明日は結婚式だって。
あははっ 良いのかあたし?
なんて思っていたら、目の前を道明寺が歩いていて__
その後ろ姿が夢の中のあの人と一緒で……
「見つけた」
あたしが呟けば
「今頃か?」
笑ってコッチを振り向いた。
そうか、ココに繋がってたんだ


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