イノセント 21 司つく
午後迄の間にやった事と言えば__コーヒーを淹れた事と昼食のお供。視察だと言っていたが……つくしの業務には何の関係もない仕事だ。気が狂いそうな程の退屈な時間が流れる。
白く美しい裸体を小さく漏れた吐息を思い浮かべるながらつくしを見つめる。自分の為に作られたような完璧な玩具__暫く飽きずにすみそうだとほくそ笑む。
コチコチコチッ 時計の秒針の音が聞こえる程の静けさの中、色々な思いを渦巻かせながらゆっくりと時間が過ぎて行く。
司が会議室に消えた後、つくしは意を決して大迫に声を掛けた。
「大迫さん、ちょっと宜しいでしょうか?」
「なんでしょうか?」
柔らかい物腰でつくしの顔を見る。
「あの__本来の部署に戻して頂きたいのですが」
「本来の部署?」
眉根を寄せながらつくしに問うて来る。
「えぇ、都市開発部とお伺いしているのですが__」
「あぁ、その事ですか」
そんな言葉を放った後に__都市開発部は司が直接指揮をとる部署であるから今のままの状態でいいのだと説明を受ける。つくしは驚きと共に大迫の顔を見た。
「あの……明日からもこの調子が続くのでしょうか?」
「はい。そうなりますね」
目眩がしそうな絶望感がつくしを襲う。立川程にワーカーホリックだとは思っていないが__元来貧乏性な性格の彼女にとって仕事もせずに過ごすのは苦痛で仕方がないのだ。
「あの__それは決定なのでしょうか?」
「えぇ、道明寺社長がそれを望んでいらっしゃいますから」
まるで機会仕掛けの人形のような端正な微笑みが返される。
「あの……今朝こちらのワンピースを秘書課の方か着替える様に渡されたのですが__これも道明寺社長のご意向ですか?」
「あぁ、そちらは道明寺社長の意向と言うよりも道明寺HDとしての意向でございます」
「会社のですか?」
「えぇ__社長秘書としてとのと申しましょうか」
大迫の言葉につくしは慌てて首を振る。
「あの、私__秘書として契約した覚えはないのですが」
「えぇ、ただ周りの者は、社長秘書だと認識しますので…..それに相応しい格好をして頂きませんと」
大迫の口角が決まった角度に持ち上げられる。
「……はぁ」
「ご心配には及びません。明日からの衣服の方は牧野さんのご自宅の方に届けさせて頂きますので」
「__あの、これからもこのような形で着くのであれば何か仕事を回して頂きたいのですが……」
「仕事を?ですか?」
つくしの要望に対し大迫はしばし逡巡した後、司に伺いを立てる旨を約束した。
それと共に幾つかの資料が渡され纏めるように指示が出された。
「お解りになられない点がございましたら私の方に聞いて下さい」
お陰でその後の時間はあっという間に過ぎた。纏めた資料を大迫に渡せば、司がチェックをし始めた。
司が満足げな笑みを浮かべながら幾つかのクエスチョンと共に纏めた書類をつくしに返して来る。
「大迫、明日から一週間程杉下を牧野につけろ」
翌日から、秘書室長の杉下がつくしの教育係としてつく事になった。
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