baroque 17
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いつからだったのだろう
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本当の気持ちを
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見せないようになったのは
RRRRRR……
スマホの音で目が覚める。
寝ぼけ眼で画面をタップすればスマホから優しい声が流れ出す。
「おはよう」
「あれ?薫?おはよう」
「ごめん。起こしちゃったかな?」
「あっ、ううん。今起きる所だったから。それよりどうしたの?」
「東京支店に顔を出すことが決まったから__いい機会だから帰りつくしのマンションに寄ろうかなぁと思って」
「__あたしのマンションに?」
「新しいマンションまだ見てないからさ。迷惑だった?」
薫にはつくしの表情など見えないと言うのに__つくしは慌てて首を振りながら
「ううん。迷惑なんて……あるわけないよ。ここの所、レポート提出とかでバタついてたから掃除しなきゃって思っただけだよ」
「あははっ ごめん、ごめん。冗談だよ冗談。じゃぁまたあとで連絡するね」
電話を切り終えた後、整頓された綺麗な部屋を見回してベッドから降りてカーテンを開ける。柔らかな朝陽が部屋の中に射し込む。
人は疾しさを感じる時、くだらない嘘を吐く。
くだらない嘘の辻褄を合わせる為に嘘を上塗りしていく。
*/*/*/*/*/*/*/*
いつも通り講義を受け友人とラウンジで食事を取りながら当たり障りのない会話をする。ラウンジの扉が開いた瞬間__視線が一ヶ所に注がれる。
「うわっ、めっちゃラッキー」
「ホント、ホント」
小さな声であちらこちらから小さな声でそんな声が囁かれてる。
「本当に素敵よねぇー」
「あっ、今日は花沢様もご一緒よ」
「もうウットリよねぇー」
香り立つような麗しい男二人の姿にあちらこちらから溜め息が漏れる。
「ねぇ、つくしちゃんはどっちが好みのタイプ?」
「えっ、ど、ど、どっちって?」
「西門様と花沢様___私は西門様かなぁーあの切れ長の瞳にサラサラの黒髪__キュンときちゃう」
「あぁ……どっちかなぁーー」
「ルリちゃん、西門様派?私は断然花沢様派だわ」
「琴美ちゃん、花沢様派なんだー」
つくしの答えなどどっちでも構わないとばかりに話しが進んで行く。
「ふぅわぁっーー 総二郎、このところ随分とご機嫌だね」
「べ、別に普段と変わらないぜ」
少し慌てた様子で総二郎が言い返す。
「ふぅん。まぁ別にどっちでも構わないけどさぁ___あっ、でも、あきらと司がこの頃総二郎の付き合いが悪いってボヤいてたよ」
さして興味もなさそうに言葉を放った後にニッコリと笑った。
類の顔に微笑みが浮かんだ瞬間__階下から黄色い声が上がる。
つくしは、皆の視線に紛れ込ませる様にチラッと階上を見上げ総二郎を盗み見る。
黒髪が陽射しを浴びてサラサラと揺れる姿が目に飛び込んで来る。
ドクッ
ドクッ
ドクドクドク
つくしの胸が高鳴った。
刹那__
総二郎とつくし二人の視線が絡み合って……避ける様に目を伏せた。
「つくしちゃん、つくしちゃん 午後の講義始まるよ」
つくしはルリに声を掛けられて慌てて荷物を纏めサロンを飛び出した。
集中出来ない気持ちの中__授業が終わりを告げる。


ありがとうございます
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