baroque 20
憧れが恋になった
coupable
その瞬間から
coupable
抱えて来た
身体中を蕩かされて白い世界を漂っていたつくしの意識が徐々に戻って来る。
薫の美しい瞳と目が合う。
「ギュッてして」
「今日は甘えたいモード?」
薫の問いかけに
「だめ?」
つくしが可愛らしく答える。
「大歓迎だよ」
ギュウっと抱き締めながら口づけを落とす。
二人でブランケットに包まりながら他愛もない事を話す。
つくしは、何も考えずに薫だけを見つめ薫だけの声を聞く…この瞬間がつくしは溜らなく好きだ。
薫の全てがつくしにとって憧れだった。
光の国の王子様……幼いつくしがこっそりと薫に付けた渾名だ。
王子様に相応しいお姫様になりたいと夢見た。
白泉に通いたいと心から願ったのも__
「私も亜矢ちゃんも私の娘も白泉女学園に通っていたのよ。だから、薫のお嫁さんもね白泉出身の子だったらいいなぁと思っているのよ」
昔のアルバムを見ながら、ふと雪乃が洩らした言葉を聞いていたからだ。
憧れの王子様は、心の支えになり、そして__優しい恋人になってくれた。
でも、もしも__そこまで考えて、つくしは慌てて首を振る。
「うんっ?どうした?」
「シャワー浴びて来るね」
スルリとベッドから抜け出しバスルームに消えていく。
つくしの後ろ姿を目で追いながら__
つくしが自分の元から消えてしまったら___僕はきっと狂ってしまうのだろう。
だから、つくしが僕の元を逃げ出さない様に優しく寛容な振りをしてつくしの憧れの王子様を演じ続けているんだ。そんな思いが薫の胸を過った。
「薫、乾かして」
いつもの様に__つくしが手にドライヤーをもって出て来る。
ギュッとつくしを抱き締める。
「ふふっ、今度は薫が甘えん坊さんですか?」
つくしが戯けながら聞いて来る。
「うん。だめだった?」
「うふっ 大歓迎です」
つくしが薫がクスクスと笑い合う。
幸せを失いたくなくて__ほんの少しずつ己に嘘を吐く。
夜中につくしは目を覚ます。月の光に照らされた薫の美しい顔を見つめながら
「世界中に......あたしと薫だけだったらいいのにね」
小さく小さく呟いて、もう一度目を閉じた。
薫が身支度を整えながら
「冬休みはいつ帰って来るんだっけ?」
「あっ、あのね__集中講義が24日にあるの。その後にって考えてるんだけど」
「24日?そっか何時頃までかかるの?」
「5時過ぎちゃう___かな」
「じゃぁ、その日はそのままこっちに居てくれるかな?」
「あ、うん。わかった」
「25日の東雲会長のパーティーに顔見せとこうかと思って__つくし、一緒に行ってくれる?」
「あっ、うん。って?東雲会長のパーティーって都内のだよね?」
「うん。ほらっ、この前の件でジュエルの仕事に駆り出されて前日迄NYなんだよ。つくしが京都に帰ってるんだったらそのまま京都に帰ろうかと思ってたんだけど、こっちにいるんだったら東雲会長のパーティーに顔出しといた方が良いかなって思ってさ」
「あっ、うん。あたしは構わないけど__雪乃さん大丈夫かな?」
「ステファンが来るみたいだから、僕として京都に戻って欲しくないかな。あいつも態々僕が居ない時に来ようとするんだから質が悪いよね」
「ふふっ、仲良しなのに?」
「仲良し?あぁ、確かにね。でも今回あいつがこっちに来るのはつくしにアタックしに来るんだよ」
「そんなワケないよ。薫、ステファンがからかってるだけだよ」
「いや、お婆様達も同意見で僕と一緒に京都には帰って来いってさ。つくしに連絡もしないでいいって伝えてくれって言ってたくらいだからね。まぁそれは僕も大袈裟だと思うけどね__」
身支度を終えた薫がつくしを抱き締めておでこにキスを落としながら
「まぁ、っていうわけで、24日はノンビリしてて下さい」
ニッコリ微笑んでそう言った。
「はい。わかりました」
つくしが笑いながら答える。
「じゃぁ行って来るね」
手を振る薫をつくしは見送った。


ありがとうございます♪
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