イノセント 24 司つく
平日の朝同様__カフェに行き食事をとる。
和食と洋食の二種類だが凄いのはメニューが毎日違う事だ。お陰で飽きる事なく食事を楽しむ事が出来る。
「こんなに豪華で528カロリーなんですね」
顔見知りになった店の者と話しながら食事をとる。
食事を終えたつくしがお茶を啜りながら中庭を眺めれば陽の光を受けた笹がそよそよと揺れている。ここが大都会の中だと忘れそうになるほどに美しく幻想的だ。しばらく魅入った後に、ご馳走様と手を合わせて店を出た。
部屋には戻らずにそのままマンションの外に出る。手入れの行き届いた街路樹に陽射しが降り注いでいる。東京には星が無いと人は言う__緑は思いのほかに多い。
休日の11時になると仲通りは歩行者天国になり、車道の真ん中を堂々と歩く事が出来る。
ぶらぶらと歩きながらホワイトツリーを見に行ってみようと思い立った。
雪が降り積もったような真っ白なツリーに上から吊るされたボールチェーンが星が降り注ぐようでとても素敵で___夜のイルミネーションを思って空を仰いだ。
この建物は一部分を保存活用したビルだ。外から見ると保存部分の独立性が際立っている。昔の建物が近代的な高層ビルを包み込んでいるような印象すら与える。昔と今が見事な程に調和しているのだ。
ビルを眺めながら、これから始まる道明寺HDの新事業に思いを馳せた。5年後__この世の中に立川の作品が誕生する。自然との共存をテーマにデザインされた作品だ。つくしは昂揚感に包まれながら自分がその一員として加われる事に感謝した。たとえそれが不本意な出来事を伴っていたとしても……
プルプルとスマホが震えた。画面を見れば立川からの着信で思わず笑みが零れた。
「立川先生どうされたんですか?」
「今日は久しぶりに仕事が早く終わりそうだから……食事でもどうかな?と思って」
今一番会いたいと思っていた立川からの電話にウキウキしながら通話を終えた。
デパートで鍋の材料を買い込み帰路に着いた。
「牧野—」
立川が誰がこの量を飲むのか?と言う程の酒類を抱えつくつくしの部屋にやってくる。
「先生___買い過ぎです」
「あっ、あのね__事後報告で申し訳ないんだけど……もう一人連れて来たんだ」
立川の後ろを覗けばオフホワイトのニットワンピースを着た可愛いらしい女の子が立っている。
「蒔田千里ちゃん__牧野の手掛けた小さい家シリーズのファンらしくてね__連れて来ちゃった」
「えっ、照れるなぁ。って、どうぞ、どうぞ」
千里は可愛らしい外見とは似合わずにかなりの酒豪でグイグイと酒瓶を空にしていく。一緒のペースで飲んでいた立川はソファーに横たわりながら眠りに入ってしまった。
つくしは、立ち上がり立川にそっとカシミアのブランケットを掛けた。
「千里ちゃんも泊まっていくでしょ?」
つくしが千里に振り向き声を掛ければ
「いえっ、今日は帰らせて頂きます」
「あっ、じゃタクシー呼ぼうか?」
「いえっ、迎えの車が参りますので」
つくしは目をパチクリさせながら千里を見れば
「つくしさん__つくしさんが今まで得たものを私にくださいません?」
「えっ?」
千里は優美に微笑んでから
「では、大変お邪魔致しました」
そう言い残し
呆気にとられたままのつくしを置いて部屋を出て行った。
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