イノセント 27 司つく
程なくして大迫から連絡が入り
「明日から__牧野さんのマンションの前に迎えの車が参りますのでそちらに乗って下さい」
「あの__一人で行けますが」
「社長命令ですので」
有無を言わせない言い方で電話が切られた。
「はぁっーー」
つくしは、大きな大きな溜め息を吐いてごろりとソファーに横になった。三十分程ソファーに横になったあと鬱屈した気分を一新するかのように勢い良くソファーから立ち上がり紙袋に入った荷物の整理をしだした。
とは言え、身に付けていたものは車道に転がった勢いで破れたらしく処理をしたと告げられていたので、鞄に入っていたスケージュル帳や財布、その他の細々としたものだけの整理だった。
コートもワンピースも靴も鞄も高級品で一つ一つの品が有につくしの月収を超えてしまうような値段なのに惜しげも無く処分をしたと言われかなり驚いたつくしだったが
「とは言え、あたしのじゃないから文句の付けようもないしね……はぁっー」
沢山の衣類や靴や鞄が送られて来た翌日、大迫にあんなに大量に置く送りつけられても困ると言えば__制服といっしょで貸与品だと説明を受けたのだ。
「......全て借り物ってワケよね。まぁ、貰ってもこまるけどね。ハハッ」
渇いた笑いを浮かべた後、つくしが必死になって作り上げて来たもの達が掌の隙間からサラサラと零れていく様な錯覚に囚われて首を振った。
「うーーん 五年間、五年間の辛抱だ。そうよそう。出向手当てやら休日出勤手当やら入ってて尚かつ貸与のお陰で無駄使いしないんだからさぁ、五年後はマンションの頭金とか貯まっちゃう勢いじゃない? うんうん。古いマンション買ってリノベーションとかもいいよね」
今暫くの現実逃避なのかも知れなかったが沢山の夢を詰めこみながらスケッチブックを手に取り、一心不乱にデザイン画を描いていく。
気が付いた時には、すっかりと日が暮れていて__窓の外にイルミネーションの灯りが見えた。
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翌朝から大迫に伝えられた通りマンションのエントランスに車が迎えに来ていた。
大迫がひょっこりと顔を出し
「これから、社長のマンションに寄りますので」
そう伝えられた。
いの一番に送られていて二人の住居を知らなかった事に気が付いた。
「社長のお住まいもお近くなんですか?」
「えぇ、平日はメープルにご帰宅になることが多いですので」
大迫の答えを聞きやはりつくしの住んでいるマンションのペントハウスは資産運営のものだと納得した。
「大迫さんもですか?」
つくしの質問に大迫は
「このマンションの別棟になります」
「えっ?そうだったんですか」
「えぇ」
パサリッ
大迫は返事をしながらも世間話は終わりだとばかりにアタッシュケースから書類を出しスッとつくしに手渡してくる。
「そちらが来週開かれるパーティーの出席者名簿と資料ですのできちんと把握なさって下さい」
「パーティーですか?」
つくしの問いに
「えぇ、社長が出席されるパーティーには、全て同行するようにとの指示ですので。勿論特別手当もパーティーで身に着けて頂くドレスなども支給させて頂きますので」
反論したい事も聞きたい事も多々あったがそれが受けいられる雰囲気でもなく仕方なしにつくしは、コクンと頷いた。
ほどなくして車はメープルのエントランスに着く。
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