baroque 22
愛してるという言葉は
Coucou
君を縛り付ける
Coucou
一番の鎖なんだ
ドクドク……ドクッ
「落ち着け、落ち着けあたし! はっ、はっ、はっ」
ドクッ ドクッ ドクドクドク
落ち着けと思えば思う程、まるで早鐘を打つ様に胸の鼓動が速くなる。
部屋に戻っても暫くドキドキが収まらなくて椅子に座ってぼんやりとする。
呼び鈴の音がして、はっと我に返ったつくしが慌てて玄関まで薫を迎えに出た。
「ただいま」
薫の優しい笑顔がそこにある。
「お帰りなさい。お腹空いた?いますぐご飯にするね」
「急がなくていいよ。それより」
薫がつくしを後ろから優しく抱き締めキスをする。
「あれっつくし、今日ってお茶のお稽古だったの?」
「ううん違うけど、どうして?」
「うん?お香の香りを感じたから」
「…………あっ、それならさっき煉香をいじってたからかも」
慌てたように小さな嘘を重ねる。
小さな嘘は川の流れの様に、少しずつ少しずつ大きくなっていく。
その夜、薫は執拗につくしを求めた後
「ねぇつくし、何かあった?」
「えっ?なんで」
「っん?なんとなく……かな。あっ、そう言えば夕方どこか行ってた?」
つくしの髪を優しく撫でながら薫がつくしに問うて来る。口調は穏やかに優しいのにも関わらず__どこか刺を含んだ言葉に聞こえるのは、つくしの中にある疾しさからなのだろうか
「夕方?」
「うん。6時半頃かな?悠斗がつくしに何度か電話したらしいんだけど__繋がらないって電話があったから」
「あっ、上の階にプールとジムがあってそれに時たま通ってるんだ__その時間……かな? それより悠斗君が何で家に電話したの?」
「東雲会長から電話がかかって来て25日の事を確認したかっただけみたいだよ。僕も片倉も会議中で席を外してたからね」
ゾワリとした何かがつくしの背中を駆け抜けていく。
「そう言えば、悠斗とカオちゃんこの前大喧嘩したらしいけど聞いた?」
「うん。先週だったよね?」
「その理由も聞いた?」
「うん。カオちゃんが一人暮らししたいって言ったら悠斗君がカオちゃんの浮気を疑ったって」
「そうそうそれ。何故か矛先を僕に向けて来てエライ剣幕で怒って来てさ」
「使用人を一人も付けない一人暮らしを何故許したかってでしょ」
「あぁ参ったよ。筒井も宝珠もイカレテルってさ」
薫が優しく優しくつくしの髪を撫でながら肩を震わせ笑ってる。
「でも、結局許したんだよね……カオちゃんにそう聞いてるけど?」
「あぁ、取りあえずはね」
「取りあえずって?」
「悠斗がカオちゃんの所に転がり込む計画を立ててるらしいよ」
「えぇ?あははっホント?それって」
「あぁ、カオちゃんの怒った顔が目に浮かぶだろう?」
コクンコクンとつくしが頷けば
「で、僕は甘いからもっとしっかりしろって説教までされたよ。だからさあんまり疑ってると捨てられるかもよって言ってみたんだ」
薫がつくしの身体の向きくるりと変え自分の膝に座らせてから
「そしたらアイツなんて言ったと思う?」
つくしが首を傾げれば
「そんなに悠長にしてたら引っ攫われるぞなんて言って来るんだよ……悠斗、意地が悪いよね?」
つくしの両頬に触れながらニッコリ笑う。
ゴクリッ
つくしの喉が小さく上下する。


ありがとうございます
- 関連記事
-
- baroque 25R
- baroque 24
- baroque 23
- baroque 22
- baroque 21
- baroque 20
- baroque 19R