No.034 運命のキス 総つく
「運命の......キス?」
聞けば運命のキスって言うのは、
神様が決めた運命の相手とのキスの事らしくって、
それは、
どこか懐かしくって
どこかエロティックで
ビックリする程に蕩けるキスなんだってと教えてくれた。
「でね、でね、そんな相手とは、どんな反対があっても一緒になれるんだって」
そんな事を教えてくれた。
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ガチガチッ ガチガチ
悪寒で身体が震えて目を覚ます。
熱が出るのかな?寒さでガタガタと身体が震える。布団をもう一枚出して掛けたいのに、余りの寒さに布団から出れずにガタガタと震える。
頭迄目一杯に布団を被って__ガタガタ、ガタガタと震える。足を擦り合わせ、なるたけ小さく小さく丸まって身体を温める。ほんの少し温もりを取り戻した手先だけお布団の外に出しスマホを掴む。
RRRRR……ベルが鳴る。
「おーーい、つくしちゃん 起きてっか?元気か?いつものように飲み行くぞー」
スマホの向こうからは、少し酔っ払った陽気な西門さんの声がする。
声を出そうとするのにガチガチと震えて声が出ない。ようやっと声が出せたのは
「ぅぅぅ“ 寒い__だめ__寒い」
それだけだった。話し込むのも辛くって
「じゃぁ」
そう言ってスマホを切った。
頭までスッポリ布団を被ったのが良かったのか悪寒が少し和らいだ瞬間這う這うの体ながらも押し入れからもう一枚布団を出して包まった。ようやく身体が温まってあたしは眠りについた。
夢と現の間を彷徨う。
熱が上がって来たのか__身体中が燃えるように熱くって呼吸があがる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
息苦しくって身体中熱くって、夢の中で水を飲みたいと思った時だった。
ピトッ
おでこに心地よい冷たさを感じて薄らと目を開ければ
「にし…かどさん?」
居る筈のはない西門さんが居て__あぁ、夢かぁ…そんな風に思った。
夢の中の西門さんは随分と熱心にあたしの世話をする。
呼吸が上がって上手に薬を飲めないあたしを抱きかかえながら薬を飲ませてくれようとしてる。いつも横柄な西門さんがこんなに優しくしてくれるわけないよなぁー
うーーん、やっぱり夢か。
「あははっ」
ご都合主義の夢に思わず笑いが出れば
夢の中の西門さんは、流石エロ門であたしの髪をスゥーーッとひと撫でしながら
「ガキじゃないんだから笑ってないでちゃんと水飲め」
そんな事を言う。なんだか眠くなちゃって目を瞑れば__
「おいっ、寝る前にちゃんと薬飲めって」
とかなんとか怒ってる。
夢の中で飲んだ所で効くわけもないだから。嫌だペッペッで
「ぅへっ やら」
そう呟いて目を閉じる。深く深く目を閉じる。
クチュリッ
西門さんの唇が合わさり
ゴクリッ
あたしの喉元を薬と水が降りていく。
あぁ、西門__夢の中でもやっぱりエロ門なんだ。そんな事を考えたらお腹の底から笑いが出て来た
「あはっはぁはっ」
夢の中とは言えエロ門とキスしちゃったなぁー。あたしって実は欲求不満なんて考えたら、またまた可笑しくなって笑ちゃった。
「笑ってないで目閉じて寝ろ」
エロ門何故かちょっぴり尖った口調で言って来る。うーーんエロ門やっぱり横柄じゃんなんてムッとしたら
「ったく」
なんて言いながら優しく髪を撫でる。
何だかそれがとっても落ち着いて
何だかそれが心地よくて
目を閉じてあたしは、泥の様に眠った。
次に目覚めた時、まだ気怠さは残るものの節々の痛みは無くなり、熱も下がってた。
ピンポーン
ベルが鳴りドアスコープを覗いてみれば___西門家のお手伝いさんが立っていて
「大丈夫でいらっしゃいますか?」
なんて言いながら西門さんに頼まれたと言いながら食べ物やら薬やらを置いていってくれた。
「うんっ?なんで」
あたしは首を傾げてから考えた。
あぁーー そう言えば朦朧とした意識の中で電話貰ったなぁーなんて思い至った。
そっか、それで夢に西門さんが出て来たんだと納得した。
全快して久方ぶりに西門さんに会った瞬間
キュンッ
あたしの胸が勝手に音を鳴った。
「えっ?なんで?だめだめ。あの男、エロ門」
そう思うのに__
キュンッてなちゃっう心は止められず
いつしか西門さんに惚れていて……
ちょっぴりだけ大人の恋も知ってるあたしは、こんなに惚れてるなら一度だけ抱かれてみるのも悪くないなんて思っちゃったんだ。
あろう事か血迷ったあたしは
「西門さん好き」
なんて迫っていた。
西門さんのキスが降って来て__そのキスは、何故かとっても懐かしくって甘美であたしを蕩けさせた。
そっかそっか
西門さんが、この人があたしの運命の人だったんだって気が付いた。
反対?
そりゃぁ、いっぱいあった。
なんせ、あたしは庶民の出で、片や次期家元候補だもん……その度にあたしは総と共に戦った。
戦って戦って戦い抜いて___一昨年ようやっと花嫁衣装を着る事が出来たんだ。未だに色んな柵とやらと戦ってるけど__惚れ抜いてる男が横に居るから案外ヘッチャラだ。
そんなあたしが久しぶりに大熱を出した。授乳中の風邪薬を拒んでいたら
「先生が飲んでも害がないって言ってたろう?」
「やだ__飲まない」
押し問答した後
クチュリッ
舌であたしの唇をこじ開けながら薬と水を飲ませてくる。
ゴクリッと嚥下する。
「お前にこうやって薬飲ますの2度目だな」
その言葉を聞いた瞬間___
あの日の出来事は淫夢なんかじゃなくて全部本当にあったことなんだって分かった。
そりゃ、初めてだと思ってしたキスは
なんか懐かしいやなっ
「あははっ、あははっ」
キョトンとしてる総の横であたしはお腹を抱えて笑った。
神様が決めた運命の人。
なーんて盛り上がってた自分を思い出して大笑いした。
「ったく、笑ってないで目閉じて寝ろ」
あの日のように総が言う。
総が神様が決めた運命の相手でも相手じゃなくても
あたしは、目一杯幸せだ。
運命でも運命じゃなくてもあなたを愛してる事には変わりない


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