baroque 23
愛する人の全てを
esclavage
この手の中に閉じ込めてしまいたいと
bonheur
願うのは罪なのだろうか?
両頬に触れた指先がつくしの喉を這う。
「……そんな事になったら取り返すって決まりきってるのに本当に意地が悪いよね」
美しく微笑みながらつくしを見つめる。
「薫….あたし、どこにも行かないよ」
「勿論しってるよ。もしもの話しに答えただけだから」
愛してるのに寂しくて
愛されているのに切ない。
暗闇の中を二人の心が漂っている。
-*-*-*-*-*-*
「つくしーー 薫さん 聞いてよぉ」
そんな言葉と共に鴨川のマンションにかカオと悠斗がやって来たのは、つくしが京都に戻った日の夜だった。
「もうさ、ユト君ってどんだけ私を信用してないのか?って話しでしょ」
「それだけ、カオちゃんを愛してるってことじゃないの? 」
「愛してるんだったら、薫さんみたいに信じろだよね」
カオがジロリと悠斗を睨めば
「はぁっーーーー ったく、つくしのせいだぞ」
「えっ?あたしのせいって?」
「ユト君!つくしのせいじゃないでしょ」
「そうだな。格好つけてる薫のせいだな」
「ユト君!」
「だってよぉー、つくしが一人暮らししたからカオもしようって思ったんだろうよ」
「違います。元々一人で暮らすつもりだったって何度も言ってるでしょ」
「そもそもそれだそれ。それが変なんだよ。なんで実家が近くにあんのに一人で暮らすんだっ!しかもだ、メイドや婆やをなんで付けないんだって話しだ」
「はぁっーーー、あのさぁ、つけたら意味ないでしょ。ったく、ユト君のお嫁さんになる前に自分のことくらい自分で出来るようになりたいのに」
「カオ……嫁さんって」
カオが耳迄真っ赤に染め上げながら恥ずかしそうに下を向く。
「くくっ、悠斗良かったな。さっ、あとのラブシーンの続きは二人でやって貰おうかなぁ。ねっ、つくし」
「うふふっ、悠斗君、顔がデレデレになってるよ」
「ったく、薫とつくしは正式に婚約が済んでるから余裕かもしれないが__俺とカオはまだなんだから仕方ねぇだろうよ」
つくしは、聞こえなかった振りをしながら
「山芋頂いたから〝とろろ鍋〟にしようかと思って材料買ってきたんだけど……お夕飯食べて行くよね?カオちゃんも手伝ってくれる?」
カオに声をかけ、二人でキッチンに立つ。
男二人は、幸せそうな顔で鍋の用意をする愛する人を見つめる。
グラスを傾けながら、申し訳なそうな表情を浮かべた悠斗が小声で
「もう一個報告と、謝罪だ」
「うんっ?」
「つくしに月曜から今日の帰り迄探偵つけた」
「悠斗!いらないって言ったよね?」
「あぁ、疑うような真似しちまって本当に悪かったと思ってる。つくしが言う通り工藤教授の手伝いの他は、マンションに戻ったらプールとジムに通ってるだけだったよ。男の影は全くなかった。出掛けること自体、松岡家の優紀ちゃんだっけ?あの子に会ったのくらいかな。この辺りは報告入ってるんだよな。怪しいどころか今時の小学生よりも品行方正だったよ……マジ悪かった」
「もう二度とやるなよっ」
「あぁ、やんねぇよ。こんなんバレたらカオにもつくしにも大目玉だ。大目玉ですめばいいけど__下手したら口も聞いて貰えなくなっちゃうよな……まぁでもよぉ、つくしには薫だけってワケだからバカな妬きもちなんてやくなよ。って......俺と違ってバカな妬きもちなんてしてねぇか」
「__悠斗、お前は分かってないなぁー。あのさ、……嫉妬なら死ぬ程してるよ」
「ぇっ?薫も嫉妬なんてすんのか?」
悠斗の言葉に薫は優しく目を細めながら
「それはそうだよ__多分、僕は悠斗よりも嫉妬深いよ」
言葉を返す。


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