No.044 神様の仕掛けた運命 総つく
「うぃ~ヒック、ヒック、ったくさぁ、バカ野郎ってぇのよね」
「ワカッタ!ワカッタ!」
「うぃ、ヒック、西門、エロかどーーー」
「エロエロ言ってんじゃねぇよ。背負われてる時くらい静かにおぶされてろ。ほらっ、着いたぞ」
牧野の家の鍵を取り出して……なんで俺が持ってるかって? 俺等は飲み仲間。アイツが酔っ払った時は、こうやって送って来るのが慣例化している。
まぁ、なんだ唯一女として意識しなくてもいい存在っつぅのか?何でも話せる飲み仲間って奴だ。
「オイッ、お前、服が皺になんぞ」
酔っ払いながらコート次いでセーターを脱ぐ。ストッキングを脱ごうとした所で手を一旦止めさせて、タンスからパジャマを出して牧野の前に置けば、台所から水を持って来る間にパジャマに着替えてる。
「ホラッ、水」
ペットボトルの蓋を開け手渡せばグビグビ飲み干して
「はいっ。ご馳走様」
手をヒラヒラさせてパタンと眠りに入った。
頭を二つ叩いて
「じゃぁ、帰るからな」
そう声を掛けてドアを閉めた。
「アイツ、毎回毎回よく酔っ払うよな……」
火照った身体に夜風が心地よく吹いて行く。
口笛を吹きながら家路についた。
*-*-*-*-*-*
RRRRR……いつものように電話をかける
「おーーい、つくしちゃん 起きてっか?元気か?いつものように飲み行くぞー」
ほろ酔い気分でスマホの向こうにいる牧野を誘う。
えぇ、今から?もう仕方ないなぁーなんていつもの様に出てくんだろうなんて思いは裏切られ
「ぅぅぅ“ 寒い__だめ__寒い……じゃぁ」
そんな言葉だけ残して電話が切られた。
折り返し電話を掛けても繋がらないで___慌てて店を飛び出してタクシーに乗り込んだ。
ガチャガチャガチャ
いつもの様に鍵を開けて
「おーい、牧野——」
声を掛けても返事はなくていつもの通りズカズカと部屋に入って行った。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
牧野の息が上がっている。額に手を当てれば驚くほどに熱い
「にし…かどさん?」
目を虚ろにさせながら俺の名を呼んだ。
タオルで身体を拭き上げて汗だくになったパジャマを着替えさせる。身体を抱き上げ薬を飲ませようとすれば
寝惚けているのか?突如「あははっ」と笑い出す。その様がガキみたいで髪の毛をひと撫でした。
「ガキじゃないんだから笑ってないでちゃんと水飲め」
そう声を掛けても目を瞑ろうとしやがる。
「おいっ、寝る前にちゃんと薬飲めって」
怒って言っても
「嫌だ。ペッペ」
と薬を吐き出そうとしやがる。
身体はバカみたいに熱くって__
はぁっーーーしゃあねぇ
クチュリッ
牧野に口移しで薬を飲ませた。
ゴクリッ
音を立てて嚥下するのを確認して安堵する。
「あはっはぁはっ」
と笑ってやがる。ムッとしながら
「笑ってないで目閉じて寝ろ」
そう言えばムスッとした顔をする。
その顔が可笑しくて髪を撫でれば安心した顔をして眠り出す。
安らかに眠った顔を見れば心の中に温かなものが溢れた。
帰り道
「ヤバい__ヤバい__」
ブツブツと呟いていた。
久方ぶりに牧野に会った瞬間……
ドキンッ
胸が高鳴った。
「ダメダ。あいつは牧野だ__ダメダ。ダメダ」
そう思う心とは裏腹に心が牧野を求めた。
抱き締めたいと衝動を理性で必死に押さえつける。
なのに、なのに
「西門さんが好き」
抱きつかれた瞬間に全てがすっ飛んで貪るように口づけをしていた。
牧野の柔らかい唇は、俺の心を震えさせた。
震える心は、どうしても牧野が欲しいと訴えた。
求めて求めて求めた。
魑魅魍魎の世界に牧野を引き込むのが怖かった。愛だ恋だと言っても所詮一時のものだ。
それに甘えて牧野を自分の世界に引きずり込んでいいものかどうか__何度も悩んだ。
疲れたと言い残し__牧野が俺の前から居なくなるのが怖かった。
悩んで悩んで死ぬほどに悩んでる俺の横で満面な笑顔を浮かべて一緒に戦ってくれた。
戦って戦って戦い抜いて花嫁衣装を着せる事が出来た。
未だに嫌味を言うやつがいるが
愛も恋も一瞬なんて儚いものじゃなく......日々進化してパワーアップしてやがる。二人の心が一つなら何も怖くねぇことに気が付いた。家族も増えなんつぅか幸せのまっただ中だ。
育児疲れからか久しぶりにつくしが熱を出した。
「先生が飲んでも害がないって言ってたろう?」
「やだ__飲まない」
押し問答した後
クチュリッ
舌でつくしの唇をこじ開けながら薬と水を飲ませた。
ゴクリッと嚥下するつくしを見た瞬間、あの日の事を思い出して柔らかい気持ちが沸き起こった。
「お前にこうやって薬飲ますの2度目だな」
あの日の様に
「あははっ、あははっ」
と笑い出す。ったく、せん妄か?
「ったく、笑ってないで目閉じて寝ろ」
つくしは、クスクスと笑いながら目を瞑る。
そんなつくしが愛おしくて愛おしくて抱き締める。
運命の赤い糸が見えるとしたら......きっとこの指の先にはお前がいる。
なんて俺が言ったらお前真っ赤になって余計熱上がっちまうか?
愛おしい愛おしいお前の全てが愛おしい


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