No.048 幼馴染みのつくしちゃん 司つく
俺様がパチンと指を弾けば、大概直ぐに手に入る。
そんな俺様の弱点は__
「司君、起きろー」
なんて言いながらドスンッとベッドにダイブしてくる__コイツだ。
俺の気持ちを楽しくさせんのツマンナクさせんのもコイツだ。
気怠気にゆっくりと目を開ければ
「ぅわっ、起きたぁーー」
無邪気に笑いながらベッドの上をピョンピョンと飛び跳ねてやがる。
嫌になるぐらいガキだ。
なのに__毎朝 ドキンッとなっちまう。
ったく、しまんねぇよな。全くもってしまんねぇよな。
でも、好きだ。
堪らなく惚れてる。
「ぅわっ、起きたって……俺は、ゾンビか!」
「ぁはっ、司君がゾンビだったら面白いね。えばりん坊ゾンビだね」
「なんだ、そのえばりん坊ゾンビって」
「ぐふっ ぐふふっ」
ずっと笑ってやがる。
ったく、俺様に向ってこんなん言うのもお前ぐらいだぞ?
つくしの髪をクシャリと撫でる。
「あっ、また!もぉーセットが崩れちゃうって」
文句を言いながらベッドから飛び降りて髪の毛を直してる。
って、何だその格好は
「つくし! スカート短過ぎだ」
「ブブッーーー 残念でしたぁ~ これスカパンだよ。ホラッ」
「関係ねぇよ。そんなのは却下、却下だ」
唇を尖らせながら
「却下じゃないもんだー。楓おばちゃまが買ってくれたんだよ」
「ババァが?」
「うん。ご褒美だって。可愛いでしょ?このブーツも、おばちゃまが買ってくれたんだよ」
クルリと回る。
あのババァ余計な事をしやがる。こんな短いのをつくしに買うなんてもってのほかだ。
「誰が買おうが関係ねぇ。何しろ短過ぎだ。つくしの親父さんも怒んぞ」
「パパ、可愛いって言ってたもん」
あぁ、確かに可愛い。だから問題なんだ。バカ!
「ダメなもんは、ダメだ。第一そんな格好してどこ行くんだ?」
「学校に決まってるじゃん」
「学校は勉強しに行く所だろうよ?」
「プッ、司君がそれ言う?」
マジこいつばっかりは、あぁ言えばこう言う。黙って言う事聞けってんだ。
「何はともあれ、それで外出るのはダメだ。姉貴がお前に買った服がどっかにあったろ。そっち着てけ」
「えぇーー これくらい皆着てるよ」
「お前の皆は、どの皆だ」
「滋ちゃんとか、桜子ちゃんとか、優紀ちゃんとか」
「あっ“ そりゃ皆じゃねぇだろうよ。3人だろうよ」
「その他にも女子大の子、みんなお洒落してくるもん」
「お洒落は、そんな短けぇの履かなくても出来んだろうが。つべこべ言わずに着替えてこい。じゃねぇと、うさぎ屋付き合わねぇぞ」
「……分かった。約束だからね。司君が、ご飯食べてる間に着替えてくる。着替えれば文句ないでしょ」
「おぉっ」
バタンッ
勢い良くドアを閉めて部屋を出ていきやがる。
ったく、お前が悪りぃんだろうよ……
シャワーを浴びた後、朝食を食べながらつくしを待つ。
待っても、待っても、アイツは来やしない。
「タマ、つくしは?」
「何を今更……つくしならとっくに学校に行きましたよ」
「はぁぁっ“——?あのバカっ__で、車か?」
「坊ちゃんの赦しが無かったんでね。車じゃないとダメだと言ったらちゃんと車には乗って行きましたよ」
「そっか。で、あの短いスカートは着替えたんだろうな?」
「スカートではなく、スカパンというらしいですがねぇ」
「そんなんはどっちでもいいんだよ。着替えたのか?着替えてねぇのかだよ」
「ちゃんと着替えていかれましたよ」
「……うんっ、ならいい」
「坊ちゃん今日のご予定は?」
「今日は社の方だ」
「さいですか。じゃぁ、つくしのお迎えには行かないんでいいのですよね?」
「あぁ。つくしも知ってんぞ」
「そのようでございますね」
だったら何故聞く?
タマを見れば__
クスリと……? 笑ってやがる。
行ってらっしゃいませと送られたが、タマの笑い顔が会議中も昼の会食中も気になっちまった。
ブラインドの隙間から外を見ながらタマとの朝のやり取りを思い出していた。
うーーーん、
やっぱり気になんなぁ。
「西田、ちょっと悪りぃがつくしを迎え行っていいか?」
「つくし様をでございますか?」
「あぁ、なんか気になんだよな」
西田がチラリと俺を見てから
「夕方からの会食はつくし様もご一緒にで宜しいでしょうか?」
「誰とだっけ?」
「鴨志田様と北條様でございます」
「はぁっーー、鴨志田のジジィと北條のジジィかぁ、うーーん。アイツらつくしのコトやけに気に入ってやがるんだよなぁ」
「宜しゅうございましょうか?」
「あんまり宜しくねぇけど……まぁ、仕方ねぇか」
西田が軽く頷いて
「それでございましたらようございます」
つくしが出て来る時間に合わせて大学の前で待つ。英徳じゃないのはこう言うとき面倒なんだよなぁ。なんて思いつつ車の中で待ってれば__つくしと滋と三条、松岡の四人で出て来る
「っん?なんだありゃ」
ドアを勢いよく開け外に出る。
「つくしっ!!」
俺の声を聞いたつくしは、ギグッとした顔をして後退りする。
ガシッと腕を掴めば___
「キャッ」
「キャッじゃねぇよ……なんだその格好は」
「えへへっ、スカパン」
「履くなって言ったよな?」
車の中につくしを押し込める。すかさず西田がドアを閉める。
「それなんだ?」
「だから、スカパン」
「着替えろって言ったよな?」
「だから、着替えたって。ほら見て、ここレースがついてるでしょ。ねっ」
「で?」
「……椿お姉ちゃまがくれた服に着替えろって司君言ったよ…ねっ?」
「つくしっ!」
「……だって、着ていきたかったんだもん」
大きな瞳でウルウルと俺を見上げる。
「チッ、あぁ……もぅ、わかった。わかったが……もう一人で着てくな。俺と居る時にだけにしろ。解ったか?でもって、今晩は鴨志田と北條の親父とで会食だから。親父さんに連絡しとけ」
「うんっ? おじちゃま達とだよね?楓おばちゃまから聞いてるよ。だからご褒美にって買って貰ったんだもん」
「はっ?」
そう……俺は、ババァにすっかり騙されたんだ。
普通にじゃ俺がOKしねぇもんだから、俺の嫉妬心を煽ったってわけだ。
あぁ、その夜の会食は、つくしのお陰で上手くいったよ。
ったくやってられねぇよな。
恋心上手く操りゃ利があるよ


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