No.049 陰の黒幕楓さん 司つく
「楓様、随分とご機嫌でいらっしゃいますね」
「うふふっ、わかる?」
「いよいよでございますね」
「えぇ、長かったわよね。あの二人案外臆病なのよね」
「然様でございましたね」
待って待って待ちくたびれた。
うふふっ うふふっ
ついつい笑みが溢れる。
つくしちゃんを見つけたのは、23年前だ。
主人が過労で倒れ病院に運ばれた時にたまたま出会った少女。
あの時、あの子はまだ2つだった。進君が産まれるのに付き添って牧野さんと一緒に来てたのよね。
真っ青な空だった。看病疲れと道明寺HDの未来への不安でいっぱいになって屋上に佇んでいた。無意識に引かれるように手摺に手をかけていた
「おばたぁん、どうちぃたの?」
空と同じ色のワンピースを着た小さな女の子が私のスカートを掴んだ。
「マーね、ポンポンおっきぃの あーたん なの」
「あーたん?」
「うん。とーと」
「そう、弟くんが産まれたの」
「あーい」
小ちゃな女の子は沢山私に話しかけてきてニッコリと笑った。
その笑顔を見た瞬間……椿を司を思い出した。私には守らなきゃいけないものがある。
「あっ、パパだーー おばたん、あいがとー バイバイね」
有り難うは私なのに女の子は、有り難うを言って戻っていった。
我に返った私は、〝ありがとう〟の気持ちと共に先ず一つずつ目の前の事をこなしていこうと誓った。
周りを見回して心を許してみれば差し出してくれる手が沢山あった。
私は、女の子を探した。中々出会えなかったのに__灯台下暗しとはよく言ったものだ。道明寺邸とメープルホテルに花を届けてくれる花屋さんのお嬢ちゃんだったのだ。
女の子の名前は、つくしちゃんと言って邸のごくごく近くに住んでいた。気難しい司ともいつの間にか仲良くなっていて、つかしゃくん つかしゃくん と後を追って遊んでいたのには驚きだった。
つくしちゃんに会った日は、穏やかな心になれて交渉ごとも上手くいく。調べてみれば……商売の神様に気に入られた様な子でつくしちゃんが産まれてから牧野フラワーは飛躍的に業績を伸ばしていたのだ。
私は確信した。この子は道明寺HDにとっても大切な子だと。
仲の良い幼馴染みとして二人は育った。つくしちゃんの言う事は、よく聞く司だったから千恵子さんにお願いして中等部からは、英徳に通ってもらうようにしたのよね。
寝起きの悪い司を起こすのがいつの間にかつくしちゃんの仕事になっていて、女嫌いの司のパーティーの同伴者もいつの間にかつくしちゃんになっていた。
ここまでは、良かった。
でも……その後が中々進まない。
何度二人のお尻を後ろから蹴りたくなった事だろう。
絶対に司は、つくしちゃんを好きだし、つくしちゃんも司を好きな筈なのに__奥手のあの子達は、見てる方が苛々するほどに進まない。
学生結婚でもいいのよ。何なら出来婚でもいいのよ。
何度喉元まで出かかった事か。
でも、ホラッ
もうじき二人がここにやって来る。
ホラッ
トントン
と幸せを叩くノックの音がする。
ドアを開ければ
照れ隠しで仏頂面した司と、ハニカムつくしちゃんがいるだろう。
さぁ、これから忙しくなるわよ。
先ずは、心からのおめでとうを二人に送ろう
二人で来るのを待ってたわ


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