baroque 27
女の一番の武器は
larme
たった一粒の
larme
涙なのかもしれない
女の舌は嘘を吐く。何食わぬ顔して嘘を吐く。
嘘で嘘を塗り固め何時しかそれが本当のことのようになっていくのだ。
つくしを抱く度に総二郎は、つくしに溺れ理性を狂わせている。この上ない極上の幸せと相反するような狂おしいまでの嫉妬心に心の中がいつしか染め上げられているのだ。
初めてつくしを抱いた日に項についていたキスマークは、新しいものだった。まだその男とは切れてないのか?全てを問いただしたい……そう思うのに一度決壊すれば歯止めが利かなくなるのが解っているから、総二郎は何も聞かずにつくしの身体の全てを隈無く確かめる。気が付かれない様に舌を這わせ指先を這わせ愛を囁きながら他の男の痕跡がない事を確かめ安堵しているのだ。
初心なのに妖婦……男を楽しませるために神が作らせた女なのではないのかと錯覚するほどに、つくしの身体はいやらしく淫らに花を咲かせる。
他の男への免疫の無さから言ったら……つくしの身体を味わったことのある男は、ごく少ない筈だと総二郎は踏んでいる。いや、もしかしたらたった一人の男しか知らなかったんじゃないかとさえ思っている。
「俺で二人目か__」
思わず小さく呟いてた言葉
「っん?なんか言った?」
総二郎のシャツを羽織ったつくしが冷蔵庫から出したペリエを渡しながら聞いて来る。
「あぁ、その格好そそるなって思ってな」
総二郎がそう言葉を返せばつくしは、薄桃色に頬を染め上げる。総二郎は、つくしの腕を掴み首筋にキスをして鎖骨を指でなぞる。
「ぁっ、総、あたしもう帰らないと行けないの」
「帰したくない__」と総二郎が言えば、つくしは哀しそうな目をしながら総二郎を見る。
二人で飾ったツリーのライトが瞬き、つくしの哀しそうな瞳を映し出している。
「ワリィ……困らせたよ…な」
「…………」
つくしは、何も言わずに儚気に微笑する。
この微笑みがどれだけ総二郎の心を掻き乱すのかわかっているかのように微笑する。
「なぁつくし、俺と…」
総二郎の言葉を遮るようにつくしの口が開き拒絶の言葉が放たれる。
「総、お願い……それ以上言わないで」
つくしは、下唇を噛みながら総二郎にの手を振りほどこうとする。その表情を見た瞬間__これ以上言葉を繋げばつくしを失ってしまうと理解した。
総二郎は、つくしを失いたくなくて腕を掴んでいた手をゆっくりと放し静かに微笑む。
「……ごめんね。ご…んね。総…ごめ…ね」
つくしは、途切れ途切れの〝ごめんね〟を繰り返しながら一粒涙を零した。
総二郎は、全てを呑み込みつくしを抱きしめる。
ツリーのライトだけが幸せそうに瞬いている。


ありがとうございます♪
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